2023年08月29日
業績が悪化する典型的な要因は資金不足です。いくら良い事業、儲かる事業をしていたとしても運転資金がショートしてしまっては利益が出る前に破綻してしまいます。そこで有効なのがスポンサー型事業再生です。経営がうまくいっている会社から資金面やノウハウ面で支援を受けることで、資金不足を改善でき、事業を立て直せる可能性が高まります。
今回はスポンサー型事業再生の種類やメリット、スポンサーの探し方や注意点などを解説。5分でスポンサー型事業再生の基本がすべてわかるようになっています。
スポンサー型事業再生とは
スポンサー型事業再生とは、その名のとおりスポンサー企業から資金面や経営面の支援を受けながら事業の立て直しを図ることを指します。スポンサーになってくれるのは同業他社、金融機関、投資ファンドなど多種多様です。
裁判所を通じて債権者と債務を調整する法的整理や債権者と話し合いを行いながら債務を調整する私的整理を行いつつ、株式譲渡や事業譲渡、会社分割といった手段でスポンサーに事業を託して再生を目指します。
本来であれば収益が出るような事業でも、運転資金が不足したり経営ノウハウがなかったりすることで赤字になってしまうケースも多いです。資金力やノウハウが豊富なスポンサーの力を借りることで、事業の立て直しや存続できる可能性が高まります。
スポンサー型事業再生の最大の利点は「資金拠出」
スポンサー型事業再生の最大のメリットは資金援助が受けられる点です。事業再生が必要なレベルにまで業績が悪化しているのであれば、資金は枯渇し多重債務となっており、新たに金融機関から融資を受けるのも困難な状況に陥っているはずです。
スポンサーから出資や融資、事業譲渡対価を受けることで資金を調達でき、資金繰りの改善や事業の立て直しに向けた新たな投資ができるようになります。また、資金力が潤沢なスポンサーがついていることで金融機関や取引先からの信用も高まり、債務の整理もしやすくなるという側面があります。
スポンサー型事業再生はメリットが多い
他にもスポンサー型事業再生のメリットはさまざまあります。資金的な援助はもちろん、経営面での援助を受けることも可能です。スポンサーの経営資源やノウハウ、販路などを使うことで、売上や利益を改善できる可能性が高まります。また、特にスポンサーが同業他社や事業会社の場合、スポンサーの既存事業とのシナジー効果も期待できます。
株式譲渡や事業譲渡、会社分割によって事業を引き継ぎ、スポンサーに経営を託せるのもメリットです。後継者がいない会社でスポンサー型事業再生が採用されるケースもあります。
スポンサー型事業再生3つのメリット |
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経営権はスポンサーに渡る
スポンサー型事業再生を選択した場合、潤沢な資金や経営資源、ノウハウを使う代償として、事業をスポンサーに明け渡さなければなりません。社長は経営権を失い、スポンサーが今後事業を運営していくことになります。社長が再度取締役に就任する、従業員として雇用されるというケースもありますが、それほど多くはありません。
事業を残すことはできますが、社長が経営に関与できなくなり、事業が社長の意図したものとは別の方向に進んでいくこともあり得ます。
できるなら自力再建が基本
スポンサー型事業再生にはさまざまなメリットがありますが、社長が経営から退かなければならないのが大きなデメリットとなります。やはり事業を先代から受け継いだ、あるいはご自身で起業した社長が一番事業に対する理解や想いが強いはずです。せっかくスポンサーに事業を引き継いで継続させたとしても、従業員や取引先への対応が変わる、将来的には事業が打ち切られてしまうということも考えられます。
スポンサー型事業再生もひとつの手段ではありますが、まずはその前に自力再建を目指してみましょう。これまで経営権を手放さずに事業再生を果たし、業績がV字回復して優良黒字企業に生まれ変わったという事例も多数あります。
スポンサー型を選ばざる得ない状況とは
自力再建ができるのが一番ですが、スポンサー型事業再生を選択したほうがいいケースもあります。まずは金融機関や取引先などからの信頼が完全に失われている場合です。リスケ(返済の期限を延長する、減額するなど返済条件を変更すること)に応じてくれない場合、債務超過が著しく自力での再建が困難とみなされる場合、スポンサーに事業を譲渡して自社を清算せざるを得ません。
また、後継者がいない場合もスポンサーに経営を託すほかありません。確かに社長は経営権を失い、事業の見通しが不明瞭になってしまいますが、そのまま廃業するよりは資金力やノウハウがあるスポンサーに経営を任せたほうが、従業員や取引先へ与える影響を最小限に抑えることができます。
スポンサーにも大別して2種類ある
事業再生を引き受けてくれるスポンサーには大きく分けて「事業スポンサー」と「ファイナンシャルスポンサー」の2種類があります。それぞれスポンサーになる目的や事業にもたらす影響、経営への関与度が異なりますので、それらを踏まえながら自社の状況や社長の意向など、総合的に判断することが大切です。
以下でそれぞれのスポンサーについて詳しく解説します。
比較項目 | 事業スポンサー | ファイナンシャルスポンサー |
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スポンサーになる目的 | 事業規模拡大・新規領域進出等 | 投資対象 |
特筆すべき影響・効果 | シナジー効果が大きい | 集中して事業再生が可能 |
経営への関与 | 大きい | 助言・指導有り |
事業スポンサー
事業スポンサーとは主に事業面で再生支援をするスポンサーのことを指します。スポンサー企業としては同業他社や近しい事業を行っている会社、商品を取り扱っている商社や小売など、さまざま想定されます。
事業スポンサーが事業を引き受ける目的としては事業規模の拡大や新規領域への進出などが挙げられます。すでに設備や人材、取引先が揃っていて、うまく立て直せば黒字に転換できる可能性を秘めている事業の再建はスポンサーにとっても魅力的な案件です。既存の事業とのシナジー効果も期待できます。
スポンサー企業でも現に同業あるいは近しい事業を行っているケースが多いため、経営への関与度も高めです。
ファイナンシャルスポンサー
ファイナンシャルスポンサーとは主に資金面での支援を行うスポンサーのことを指します。金融機関や投資ファンドがファイナンシャルスポンサーに名乗り出るケースが多いです。
スポンサーになる目的は投資です。企業に出資や融資、資金援助を行って事業の価値が高まることで、スポンサーの利益にもつながります。社長は支援を受けて資金面での問題を解決できるため、事業の立て直しに集中できるようになります。
ファイナンシャルスポンサーは資金面での支援が主となるため、経営的な助言や指導を受けらますが、社長が主体的に再建を進めていくことが求められます。
命運はスポンサーになってくれる企業次第
スポンサー型事業再生を選択した場合、事業の命運はスポンサー企業が握ります。しっかりと社長の想いを受け継いで事業を継続してくれるのであれば問題ありません。しかし、「利益が出ないから」「事業を立て直すのは割に合わないから」と将来的に事業が打ち切られてしまう可能性も考えられます。また、特に事業部がスポンサー企業と合併した場合、従業員の労働環境が変わったり取引先や顧客が不利益を被ったりするリスクもあります。
また、そもそもスポンサー企業の経営が安定していなければ、やはり将来的には共倒れということにもなりかねません。
一般的なスポンサーの探し方
スポンサー企業を探す方法としては、知人の会社や同業他社などにスポンサーになってもらうよう個別に交渉するという方法があります。信頼できる経営者に経営を託すことができるというメリットがありますが、どうしてもご自身の人脈だけでは限界があり候補先が限られてしまうのがデメリットです。
もう一つの手段として入札があります。M&A仲介会社などに依頼してスポンサー企業を募ります。候補先が多い、条件が良いスポンサーを選べるのがメリットですが、スポンサーを公募することが世間に知れ渡ることで会社の信用力が低下するリスクを伴うのがデメリットです。
スポンサー型事業再生4つの方法
4つのスポンサー型事業再生手法 | |
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企業再生 | 第二会社方式 |
事業譲渡 | 会社分割 |
スポンサー型事業再生には「企業再生」「事業譲渡」「第二会社方式」「会社分割」という4つの方法があります。
企業再生はスポンサーの子会社となって収益性が高い事業を中心に再建を目指していくという方法で、会社はそのまま存続させられるというメリットがあります。
事業譲渡とは採算がとれる事業をスポンサーに売却譲渡し、スポンサー企業の一事業部として事業を存続させる方法で、不採算事業や負債は清算します。簿外負債の影響を受けない、早期再生がしやすいのがメリットです。
第二会社方式とはスポンサーが新しく設立した会社に事業を移して自社は清算するという方法です。債権者の同意がない状態でもスポンサー企業に事業を移すことができるのがメリットです。
会社分割とは会社から存続させたい事業を分割してスポンサー企業に吸収させるという方法で、やはり自社は清算します。従業員や取引先に対して影響を低く抑えられることと、税制上の優遇措置が受けられるのがメリットです。
まとめ
スポンサー型事業再生によって事業を存続させることはできるでしょう。スポンサーの資金やノウハウを使えば、事業を立て直せる可能性も高くなります。しかし、社長は経営から退かなければなりません。先行きも不透明です。まずは自力での再建を模索してみて、最終手段としてスポンサー型事業再生を検討してみましょう。
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まずは経営のお悩みを私たちにお聞かせください。
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。