5分でわかる事業再生スキーム!特徴や選定方法、スキーム以上に大事なことを解説

2023年07月21日

5分でわかる事業再生スキーム!特徴や選定方法、スキーム以上に大事なことを解説

「事業再生を考えているけど具体的には何をするの?」「事業再生にはどんな方法があるか知りたい」……そんなお悩みありませんか?事業再生にはさまざまなスキームがあります。この記事では事業再生のスキームごとに、その特徴やメリット、注意点について学んでいきましょう。5分でわかるようまとめましたので、少しだけお時間ください

また、これまで数々の事業再生に携わったコンサルタントの立場から、事業再生を検討されている経営者の方に必ず知っておいていただきたいポイントについてもお伝えします。ぜひ最後までお読みください。

本記事で解説する事業再生スキームの一覧

事業再生と一口に言っても、その方法はさまざまです。主にリスケジュール、M&Aスキーム、第二会社方式、DDS、DES、債権放棄という6つのスキームがあります。

自社の状況に応じて適切なものを選ぶ必要がありますが、そのためにはそれぞれのスキームの特徴やメリット・デメリット(懸念点)を把握しておくことが大切です。以下で詳しくご説明します。

リスケジュールの特徴を解説

リスケジュールとは「計画を変更する」という意味です。「リスケ」とも呼ばれます。返済計画を見直し、金融機関などの債権者と交渉をして毎月の返済額の軽減や返済期限の延長、返済猶予や返済条件の変更などに応じてもらい、事業を立て直します

債権者としては毎月しっかりと返済をしてくれるのが一番ですが、それよりも怖いのは貸し倒れになることです。現状のままでは債務を履行できないけどリスケジュールを行うことで債務を履行できるようになる見込みがあるという状況であれば、債権者が交渉に応じてくれる可能性も高くなります。

【 リスケジュール 】

リスケジュールの特徴とメリット

リスケジュールを行って毎月の返済を待ってもらう、あるいは返済の負担を軽減してもらうことで、キャッシュフローが改善され返済に充てていた資金を事業の立て直しに使えます。債務者が事業を立て直すことができれば債務を履行してもらえるようになるため、返済計画を提示して債務履行の目処を伝えることでリスケジュールに応じてくれる債権者も少なくありません。

リスケジュールの懸念点やデメリット

リスケジュールは債務者に返済を待ってもらう、条件を変更してもらうようお願いすることであり、債務者がそれに応じる必要があります。そのため、必ずしも成功するわけではないことには注意が必要です

また、リスケジュールに成功したとしても借金から開放されるわけではありません。返済額が軽減されたり返済期間が延長されたりすることで月々の負担は軽減されますが、債務を履行する必要があります。実際にリスケジュールだけで事業を立て直すのは非常に困難です。

M&Aスキームの特徴を解説

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、2つ以上の企業が1つの企業になる合併買収のことを指します。株式譲渡や第三者割当増資によってスポンサー企業の傘下に入り、事業の立て直しを図ります。また、事業譲渡や会社分割によって業績が悪い事業のみを第三者に譲渡することも可能です。

【 M&A 】

M&Aスキームの特徴とメリット

M&Aを行い資本力があるスポンサー企業のグループ会社や一事業部となることで、事業を存続させることができ、従業員の雇用を守ることも可能です

また、事業譲渡や会社分割によって不採算部門のみを切り離すことで、採算事業に集中できて自社の業績を回復させることができます。事業を譲渡して得た対価を会社の運転資金に回すことも可能です

スポンサー企業も設備や人材を獲得できる、事業を拡大できるなどのメリットが得られます。

M&Aスキームの懸念点やデメリット

M&Aで会社あるいは事業を譲渡するためにはスポンサー企業を見つける必要がありますが、スポンサーとしても収益が出にくい事業を引き受けるのはリスクが高いです。不採算事業を引き受けてくれて、かつ資本力が高い会社を見つけるのは容易なことではありません。

また、M&Aを行う際には高い交渉力が必要となり、手続きも煩雑となるため、専門的な知識が求められ、時間と手間もかかります。仲介会社を通じて進めるのが一般的ですが、その場合は手数料を支払わなければなりません。

第二会社方式の特徴を解説

第二会社方式は事業譲渡と破産を組み合わせたスキームです。事業を分けて採算がとれる事業のみをスポンサー企業に譲渡し、不採算事業は自社に残して破産手続きを行い清算します。事業を譲渡する会社は上記のM&Aと同様に事業を引き受けてくれるスポンサー企業を探すほか、スポンサー企業もしくは自分たちで会社を新設してそこに事業を移すという方法もあります。

【 第二会社方式 】

第二会社方式の特徴とメリット

第二会社方式を選択することで、採算がとれている事業のみを存続させることが可能です。不採算事業は清算することができ、破産手続きが完了すれば債務からも開放されます。一方、事業譲渡で得られた対価は受け取ることが可能です。

また、第二会社方式で事業を譲渡する場合、「中小企業承継事業再生計画」の認可を得ることができます。許認可の引き継ぎや税金の面で優遇措置を受けることが可能です

スポンサーにとっては収益が出る事業を得られるため、企業規模の拡大や業績改善につながります。

第二会社方式の懸念点やデメリット

M&Aと同様、事業を引き受けてくれるスポンサー企業を探す必要があり、時間と手間、仲介会社を利用する場合には費用がかかります。また、事業譲渡や会社分割を行う場合は、債権者からの同意を得る必要があり、首を縦に振ってくれない限り進めることができないのもデメリットです

DDSの特徴を解説

DDS(Debt Debt Swap)とは、今ある借入金を劣後ローンとして借り換えるスキームです。債務(Dept)同士を交換(Swap)することから、DDSと呼ばれています。

劣後ローンとは一般的な債務よりも弁済順位が低いローンのことです。弁済順位が低くなるということは、他の債権の返済が終わった後に弁済すればいいということになります。また、DDSによって返済の猶予や返済期間の延長といった優遇措置を受けることが可能です。

【 DDS(Debt Debt Swap) 】

DDSの特徴とメリット

劣後ローンとして借り換えを行うことで、返済期間の猶予や利息の減額などが受けられるため、資金繰りが安定し、事業の立て直しがしやすくなる可能性があります。また、劣後ローンは自己資本とみなされるため財務状況が良くなり、新たな借入れがしやすくなるというのもメリットです。

債権者にとってもDDSによって債務者の負担が軽減することで事業を立て直すことができれば、貸し倒れのリスクが低くなります。

DDSの懸念点やデメリット

DDSによって借入条件が良くなり返済の負担が軽減できますが、債務自体がなくなることはありません。たとえ劣後ローンに借り換えたとしても、事業がうまくいかなければ再度債務超過に陥ってしまうかもしれません。また、一定の債務状態を維持しなければ優遇措置を受けられなくなってしまう可能性があります

DESの特徴を解説

DES(Debt Equity Swap)とは債務を株式に交換するスキームであり、借入金を返済する代わりに債権者に株式を譲渡します。前述のDDSは中小企業に、DESは株式の発行数が多い中堅・大企業に適用されるケースが多いです。

【 DES(Debt Equity Swap) 】

DESの特徴とメリット

借入金の代わりに債権者に株式を譲渡すれば返済元金や利息を少なくすることができ、キャッシュフローや資金繰りが改善できます。自己資本比率が上がり、有利子負債を削減することができるため、財務状況も良くなります

また、債権者にとっては株式の譲渡を受けることで経営にタッチできるようになるため、貸し倒れしないようコントロールしやすくなります。

DESの懸念点やデメリット

会社の自己資本比率が上昇することで財務状況が良くなる一方、法人住民税の負担が重くなる、中小企業として受けられていた税制特例が受けられなくなってしまうといったデメリットが発生する可能性があります。さらには借入金を減らしたことが債務消滅益とみなされて課税される可能性もあるため、事前に税理士などに確認しておきましょう。

債権放棄の特徴を解説

債権放棄とは債権者に債権を放棄してもらうことです。債務者が債権者と交渉し、借入金の返済の一部もしくは全部を放棄してもらいます。

【 債権放棄 】

債権放棄の特徴とメリット

借入金の一部もしくは全額が消滅するため返済の負担が軽減できます。そのため、事業に資金を多く使うことができるようになり、事業の立て直しがしやすくなります

債権者としても回収できる見込みがない債権を抱えていると、それを資産として計上しなければならないため、課税対象になる、株価が高くなってしまうなどのデメリットが生じます。債権放棄をすれば回収できなかった債権は損金として計上できるため、税負担を軽減することが可能です

債権放棄の懸念点やデメリット

債権放棄を受ける場合、経営者は退任する、保有している株式を手放すなどの責任を取らなければなりません。また、債務放棄で債務消滅益を得た場合、課税される可能性があることにも注意が必要です

債権者としては債権放棄をした場合、それを撤回できないことがデメリットとなります。たとえば債権放棄をした後に債務者の会社の業績が回復したとしても、一度放棄した債務の履行を求めることはできません。

事業再生スキーム選びはどうしたらよい?

事業再生ではデューデリジェンス(企業や事業の価値を評価すること)を行い、事業の状況や課題、将来性などを正しく把握した上で、スキームを選び戦略を立てる必要があります。

事業再生は会社の未来を左右する重要な節目です。再生を決意するにせよ、諦めるにせよ、債権者や従業員、取引先などの関係者に多大な影響を与えます。もちろんスキーム選びや再生までの計画が重要なのはいうまでもありません。しかし、それ以上に大切なのは経営者自身の「覚悟」です。しっかりと将来を見据え、明確なビジョンをもち、関係者とも綿密なコミュニケーションをとり理解を得て判断する必要があります

私たちもこれまで多くの企業様の再生に携わってきました。事業再生は「事業を立て直すんだ!」「事業をなんとかして残したい!」という感情が大きく動く場面であり、熱意の有無が成否を分けるのです。スキーム選びや戦略立案はプロに頼ることができます。しかし、事業を立て直すのは経営者自身です。最後は思い切って決断しましょう。

事業再生スキームの手続き方法

まずは会社の財務状況や事業がどういう状況になっているのか?実態を調査します。その上でこれまでご紹介してきたスキームのどれを選択して事業再生を目指すのか?を判断しましょう

債務を調整するにせよ、第三者に事業を譲渡するにせよ、債権者やスポンサーに会社の状況や今後の見通しを説明する必要があります。事業計画や経営改善計画を作成しましょう。

事業を立て直すためには資金が必要です。キャッシュフローを改善し、運転資金を確保しましょう。そしていよいよ本格的な事業の立て直しに入ります。

1事業の実態調査
2スキームを決定
3事業計画・経営改善計画を作成
4資金調達・キャッシュフロー改善実施
5事業再生を開始

事業再生スキームの先にあるV字回復こそ最重要

V字回復事業再生を検討されている中小企業の経営者の方に私たちがもっとも伝えたいのは、V字回復が果たせなければ本当の意味で事業を再生したとはいえないということです。目先のキャッシュフローが改善しても、立派な経営改善計画ができたとしても、根本である採算や組織の問題が解決できなければ意味がありません。これらを突破する覚悟が経営者には求められているのです。

経営改善計画は会計士、法的手続きは弁護士など、相談先はいくつかあります。しかし、これらの士業はその先に関してはノータッチです。収益力や組織力の改善などの実行までをアシストし、V字回復まで導いてくれるパートナーを選びましょう

東京事業再生コンサルティングセンターなら、目先の危機回避はもちろん、V字回復まで見通した事業再生をお手伝いします。融資について知り尽くした元銀行員が在籍し、資金調達の独自のルートもあるため、資金面でのお悩みもご相談いただけます。私たちの想いについては「経営者の皆さまへ」で詳細にまとめましたので、ぜひこちらもお読みください。

初回相談は無料です。事業再生をご検討されている方、業績悪化で悩まれている方は、「お問い合わせ」よりお気軽にご相談ください。

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本コラムの監修者

事業再生コンサルタント
清水 麻衣子

元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。

通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。