2020年12月28日
とあるお客さまからのご相談:
オフィスビルやマンションの建設会社を営んでいます。
ここ数年は、新規の受注が伸び悩んでおり、経営的に苦しい状況が続いていました。
さらに、新型コロナウイルスの影響により、見込んでいた新規の契約がすべて白紙になりました。
現状、「従業員の給与」や「建材費」の支払いで精いっぱいな状況です。
ほとんど、手元に残るお金はありません。
しかし、運転資金がないことには、現在請け負っている工事を進められないため、銀行に相談にいき「融資」の申し込みをしました。
幸いなことに、なんとか審査が通ってお金を借りることができました。
しかし、コロナの影響で、着工したビルの完成予定日が大幅に遅れています。
その一方で、建材費や人件費はどんどん出ていくため、期日までに銀行から借りた借金が返済できないかもしれないと焦っています。
八方塞がりな状態で、正直、途方に暮れています……。
同業者の知り合いからは、「新型コロナ特例リスケジュール」がいいのでは?というアドバイスをもらいました。でも、どういうものか、よく知りません。
今、私にできることは何でしょうか。アドバイスをください。 (建設業の経営者さま より)
これは、当社に寄せられた相談の実例である。
数年来、資金繰りが苦しかったが、新型コロナの影響で状況が悪化し、銀行融資を申し込んだ。しかし、状況は変わらず苦しいため、返済が厳しいといった状況である。
シリーズ連載企画の第2回目は、「銀行融資を返済できない悩み」に焦点を当てる。
「銀行融資を返せないかもしれない」という方は、ぜひ目を通していただきたい。
- 銀行からの借金が返済できないときの「対処法」が知りたい
- 「新型コロナ特例リスケジュール」について知りたい
新型コロナ特例リスケジュールは実際のところどうなの?
銀行融資を受けられたが、返せないかもしれない―そのような悩みを抱えている経営者さんは少なくない。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、資金繰りに苦しむ経営者さんからの問い合わせは、当社においても急増している。「事の深刻さ」を日々、肌で感じる毎日である。
しかし、政府も指をくわえて待っているわけではない。
「コロナ特別貸付」や「持続化給付金」「雇用調整助成金」など、さまざまな支援を実施してきた。
そのようななか、資金繰りに苦しんでいる経営者さんから注目を集めている支援制度の一つに「新型コロナ特例リスケジュール」がある。
これは、経営の専門家が、資金繰りに苦しんでいる経営者に代わって、借り入れ先に対して、借金の「返済期間の延長(=リスケジュール)」の申請代行を行う制度なのだ。
この制度のポイントは以下の通りである。
新型コロナ特例リスケジュールとは?
- 融資の借り入れ先に「返済期間の延長(リスケジュール)」の申請を代行する
- 返済猶予を1年間延長できる
- 専門家が計画的な「返済プラン」の策定をサポートしてくれる
- 特例リスケジュールが成立したあとも、専門家が継続的に「資金繰り」のチェックを行ってくれる
- サポートしてくれる専門家は、金融機関経験者・公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士など
なんといっても、魅力的なのは「借り入れ先へのリスケジュール要請」から「リスケジュール計画の作成」まで、専門家の全面的なサポートが受けられて「完全無料」であるという点だ。
金融機関への交渉に「ニガテ意識」があったとしても、専門家が力強くサポートしてくれるため、たいへん心強いのだ。
「中小企業再生支援協議会」は国の公的機関であり、全国47都道府県に設置されているため、相談しやすい点も魅力的である。
さらに嬉しいことに、同協会のサポートによって、「リスケの成功率」が格段に上がるようである(東京都の中小企業再生支援協議会に電話で問い合わせてみた)。 これはかなり嬉しいポイントではないだろうか。
資金繰りに苦しんでいる場合、ひとまず「新型コロナ特例リスケジュール」を利用してみるのがベストだ。
「新型コロナ特例リスケジュール」を利用するうえでの3つの注意点
「コロナ特例リスケ」は嬉しいメリットが豊富な制度だが、気を付けるべきことがある。それは、以下の3点だ。
- リスケ期間終了後は「通常返済」に戻る
- リスケ期間中の追加融資はほぼ受けられない
- リスケはあくまで「緊急措置」。抜本的な経営体質の改善を!
1つずつ、説明しよう。
リスケ期間終了後は「通常返済」に戻る
コロナ特例リスケの場合、元金の返済猶予は「1年間」である。
当然のことではあるが、期限終了後は、通常通りの支払いスケジュールに戻る。
コロナ特例リスケは、あくまで「急場をしのぐ緊急措置」であり、1年間の猶予が与えられているに過ぎないことを念頭に置いておこう。
リスケ期間中の追加融資はほぼ受けられない
これは、意外と知られていない事実なのだが、リスケ期間中は「追加の融資」は、ほぼ受けられないことがわかっている。
「先行投資」的に資金を借りられなくなるし、今以上に資金繰りが苦しくなったとしても、資金ショートを補てんする融資が受けられない可能性が高い。
この点については「コロナ特例リスケ」の弱点といえる。ぜひ頭に入れておこう。
リスケはあくまで「緊急措置」。抜本的な経営体質の改善を!
先述の通り、コロナ特例リスケは「急場をしのぐ緊急措置」である。
そのため、1年間の猶予が与えられている間に、何らかの対策を取らなければ、倒産の時期を先延ばししているに過ぎないのだと考えよう。
1年後にコロナ問題がどういった局面を迎えているのかは、誰にもわからない。
そのため、先手を打って赤字状態から「V字回復」するための対策を積極的に仕掛けていこう。
「抜本的に経営状況を改善するには何をするべきか?」考えていくことが大切なのだ。
もし「いいアイデアが浮かばない」という場合には、当社に相談してほしい。
力になれる自信がある。
上記3点を踏まえたうえで、コロナ特例リスケを「利用するべきか」慎重に判断しよう。
【以下の記事もチェック!】
「コロナ特例リスケ」でリスケに失敗した!そんなときはどうしたらいい?
中小企業再生支援協議会の窓口によれば「コロナ特例リスケ」が失敗に終わることもあるらしい。
「融資を受けたばかり」で、いきなりコロナ特例リスケの申請をすると、金融機関側がリスケを通してくれないことが多いのだそうだ。
コロナ特例リスケの制度を使うと「リスケが通りやすい」のは事実だが「必ず通るわけではない」という点については、認識しておこう。
さて、コロナ特例リスケが失敗に終わった場合、経営者さんはどうすればいいのだろうか。 その場合の対策としては、以下の3点が挙げられる。ぜひ覚えておいてほしい。
- 他社への借り換え
- 資産を売却して返済に充てる
- 出資してくれる会社を探す
1つずつ、解説したい。
他社への借り換え
リスケが失敗した場合、ほかの金融機関への「借り換え」を検討しよう。
借り換えをすることで「返済条件が良くなる可能性がある」からだ。
「改善される可能性のある返済条件」は以下の2点だ。
- 返済スケジュール(より緩やかな返済スケジュールへの変更)
- 金利(金利が低くなり総返済額が減る)
緩やかな返済スケジュールになり、金利も低くなれば、危機的状況を回避できる可能性が上がるだろう。
1つの金融機関から借りている場合は「借り換え」を、複数社から借りている場合には「おまとめローン」を利用するのも一つの方法だ。
借り換えをする際には、返済スケジュールと金利の条件を比較検討して「より好条件の金融機関」と取引してほしい。
資産を売却して返済に充てる
リスケが失敗した際は「会社の資産」に目を向けてみよう。
借金の返済に充当できるようなものがあれば、資産を売却して現金化するのも倒産回避の手法の一つだ。会社の資産としては、以下のようなものが挙げられる。
【会社が保有する資産の例】
- 有価証券
- 土地
- 建物
- 別荘
- 機械
- 器具
- 車両
- 営業権
- 商標権
- 借地権
これらの資産のうち「会社の売上に貢献するもの」と「そうでないもの」をカテゴリー分けしよう。そのうち、今後も会社の売上に貢献するものについては、売却を控えよう。
例えば、事業に使用している機械や器具、営業権、商標権などは「慎重な判断」が必要である。なぜならば、使いようによっては、売上向上に貢献する可能性がある資産だからだ。
一方、購入したものの固定資産税を払い続けているだけの土地は「遊休地」であると考え、すぐにでも、現金化するのがいいだろう。
出資してくれる会社や事業パートナーを探す
リスケが失敗に終わった場合、事業への出資をサポートしてくれるパートナーを探すのも有効な手段の一つだ。
出資は借金と違い「返済の義務」がないのが、最大のメリットである。
出資の場合、事業が軌道に乗ったタイミングで、売上金の一部から還元するようなかたちを想定していることが多いため、倒産回避の手法としてはもっとも安心できるだろう。
出資パートナーが経営に強い場合、ビジネス上の有益なアドバイスも期待できる。
当社は、最大3000万円の出資と経営コンサルティングを行っており、30年間で50社以上の会社の事業再生に携わってきた。パートナー探しがうまくいかない場合には、いつでも当社に相談してほしい。
以上3つが、リスケに失敗したときの対処法である。
銀行がリスケに応じてくれない場合、上記いずれかの手段で危機的状況を回避しよう。
「銀行融資」の返済に行き詰まった相談者の話
冒頭では、建設業の経営者さんから寄せられた相談の実例を紹介した。
実は、この事例については、当社が「事業再生」に関わった成功事例でもあるのだ。
このお客さまは、コロナの影響で大打撃を受けて、銀行融資を受けたが「返せる見込み」がないといった状況であった。
経営者さんの話をヒアリングするなかで「倒産寸前」であるのは目に見えており、非常に厳しい状況であると、私たちもすぐに理解した。
何度かミーティングを重ねるなかで、経営者さんの「再起への情熱」がとても高いことを感じ取った。
立て直せる可能性はそう高くなかったが、私たちとしても「ぜひ力になりたい」と考え、事業再生をお手伝いさせていただいたのである。
当社が実行したのは、以下の5点だ。
【事業再生で手がけた5つのサポート】
コロナ特例リスケを申請して、銀行融資の返済猶予を1年間延長する
返済なしの出資金として500万円を用意
融資だけでなく、各種支払い先に対しても「支払い期限の延長」を依頼する
売上をあげるための「事業計画書」をイチから作成し直す
経営者さんには営業活動に専念してもらう一方、当社は「キャッシュフローの改善」や「経営・財務状況の一元管理」により、経営状況の改善に努める
このような対策を講じた結果、倒産寸前の危機的状況を脱することができた。
経営者さんは笑顔を取り戻し、再起に向けた第一歩を踏み出せるまでに回復した。
「優良黒字企業」への道のりはまだ先であるが、経営者さんの取り組みや情熱次第で「V字回復」は実現可能だと私たちは考えている。
【次回のコラムの予告】
いかがでしたか。
シリーズ連載企画の第2回目は「銀行融資が返せない悩み」に焦点を当てました。
銀行融資を返せなくなった場合には、第一に「コロナ特例リスケ」の利用を検討してみましょう。
ただし、以下の3点を頭に入れたうえで「利用すべきか」検討しましょう。
- あくまでも応急措置である
- 追加の融資は受けられない
- いずれにせよ「抜本的な経営改善」が必要である
さて、第3回目となる次回は「消費者金融の借金を返せない悩み」にフォーカスします。
新型コロナウイルスの影響により、倒産寸前になったある経営者さんは「消費者金融」からお金を借りました。しかし、返せるアテがなく「絶体絶命のピンチ」という状況でした。
「消費者金融から大きな借り入れをして返せなくなった場合、どう対処するべきかのか?」について、詳しく解説します。
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