2024年08月25日
中小企業のなかでも従業員が5人以下、資本金が1,000万円以下の企業のことを零細企業といいます。零細企業は売上の規模も小さい傾向があるため、ちょっとした要因で業績が悪化しやすく、立て直しも難しい傾向があります。
この記事では零細企業を事業再生するための基本戦略や方法、相談先についてご説明し、事業再生のプロである私たちだからこそ知るリアルな実態についてもご紹介します。
零細企業を事業再生するための基本戦略
零細企業を立て直すためには主に以下の3つの施策を同時並行で進めて行く必要があります。
- 金融機関との交渉
- 資金調達の準備と管理
- 事業構造の見直しと立て直し計画の立案
いずれかが欠けていても、事業再生はなかなかうまくいきません。それぞれどのようなことなのか、詳しく見ていきましょう。
金融機関との交渉
銀行などの金融機関から融資を受けている場合は、まずはそれが返済できるかどうかを確認しましょう。ただ、事業再生が必要なレベルにまで業績が悪化している場合、返済も厳しくなっているケースがほとんどです。
借り入れの状況を把握したら借入条件を変更する「リスケジュール(リスケ)」を行う必要があります。金融機関に交渉し、借入期間の延長や毎月の返済額の軽減、返済の猶予などに応じてもらいましょう。ただし、リスケジュールを依頼したからといって必ず応じてもらえるわけではないことには注意が必要です。しっかりと資金繰りの見通しを立て、説得力がある返済計画を提示しましょう。
リスケジュールが失敗する要因や対策については以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
資金調達の準備と管理
資金繰りが悪化する要因は利益が出ておらず、会社に現金がないからにほかなりません。売上が上がる、あるいは売掛金が入る見込みがあるのであればいいのですが、ないのであれば融資を受けるなどして当面の運転資金を確保するほかありません。
中小企業の活性化を目的に地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携して提供し、比較的審査のハードルが低い制度融資、日本政策金融公庫が実施している社会的・経済的環境の変化などで経営が困難になった企業を救済するためのセーフティネット貸付、同じく日本政策金融公庫が実施していて事業再生の支援を受けている中小企業を対象にしている企業再建資金などの制度の活用を検討してみましょう。
融資をはじめ資金繰りが苦しいときの対処法についてはこちらの記事でご紹介しています。
【過去記事】
事業構造の見直しと立て直し計画の立案
事業再生を行うにあたってはしっかりと事業の現状を見直し、立て直し計画を練りましょう。これはリスケを交渉する際、融資を受ける際にも必要となります。
概ね3~5年程度で黒字に転換できるように計画を立てることと、どのような事態が起きても対応できるような計画を立てましょう。特に状況が悪いと楽観的に考えたくなりがちですが、常に最悪のことも想定しておくことが大切です。
事業再生の手順と計画を立てるコツについては以下の記事で詳しくご紹介しています。
【過去記事】
倒産を回避するための手段
業績が悪化しているのにも関わらずそのまま手をこまねいて見ているだけでは、遅かれ早かれ会社は倒産という結末を迎えます。ここからは倒産の危機が迫っている零細企業が行うべきことと自己破産をしたときにどうなるかについて見ていきましょう。
対策を打つのが早ければ早いほど、倒産を免れられる可能性も高くなりますので、今すぐにアクションを起こしましょう。
事業再生の方法と種類
事業再生には大きく分けて裁判所が介入して債務の整理や事業の再生を図る「法的再生」と、債権者と話し合って債務を調整するなどして立て直しを図る「私的再生」の2種類があります。
零細企業の場合は経営者個人がもつノウハウや人脈によって経営が成り立っている側面も強いです。また、支援スポンサーがつきにくい傾向もあります。そのため、経営者が退くことを求められる会社更生や他企業の傘下に入るM&Aは選択できないケースも多いです。
当事者同士が話し合う私的再生、経営者が会社に残り債権者と話し合って再建を目指す民事再生、簡易裁判所を介して弁済方法を協議する特定調停といった方法がよくとられます。
零細企業に適している事業再生の方法については以下の記事もご覧ください。
自己破産をするとどうなるのか
資金繰りが立ち行かなくなり債務が返済不能な状態になってしまった場合、裁判所に破産手続きを申し立てます。会社の資産は裁判所が管理することになり、そこから債権者に対して分配されます。また、経営者は従業員の解雇や退職金の支払い、取引先との契約解除などの手続きを行わなければなりません。
自己破産をした場合、職業が制限されるため、士業や生命保険・有価証券投資顧問業者・質屋など第三者の金銭を取り扱う職業などに就くことができなくなります。
旅行や出張など長期で外出する場合、転居する場合は裁判所に許可を申請しなければならないため、これまでのように自由に行動しづらくなります。
また、郵便物は管財人にすべて転送されるため、プライバシーに関しても制約が加わります。
ただし、これらの制限が加えられるのは一時的な期間のみです。
自己破産手続きをした後に生じる会社経営や生活面への影響については、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
零細企業の課題と対策のリアル
零細企業で業績が悪化するとさまざまな問題が発生します。ここからは事業再生時に経営者の方がよく直面しがちな課題とその対策について考えていきましょう。
ケース① 従業員の給与が払えない
会社の支出のなかでも大きな割合を占めるのが人件費です。従業員の給料が支払えない、人件費を抑えたいと考えられている経営者の方もいらっしゃるかと思います。しかし、給料の未払いが発生すると従業員のモチベーション低下や離職につながる、悪評が立ち人材採用や顧客との取引が不利になるなど、さまざまな弊害が発生しかねません。
また、労働基準法第24条には賃金を「通貨で支払うこと」「直接従業員に支払うこと」「全額従業員に支払うこと」「毎月1回以上定期的に支払うこと」という4つの原則が定められています。業績が悪いからといって給料の支払いを遅延させたり減額したりする行為は法律違反に該当するおそれがあります。
万が一給料の支払いが厳しいと感じた場合、まずは役員報酬を減額する、経営者の個人資産を会社に貸し付けるなどして、経営者が身を切りましょう。また、取引先への支払いを猶予してもらう、融資やローンを利用するといった方法もあります。
こうして原資を捻出する努力をしてもなお給料の支払いが厳しい場合は、従業員に謝罪をして誠心誠意会社の状況や支払予定日を説明した上で、給料の支払いを待ってもらうよう交渉しましょう。
また、業務委託やアルバイトなど、雇用形態を変更するという方法に関しても検討してみましょう。従業員にとっては不安定な働き方となりますが、雇用を維持できて人件費が抑制できるといったメリットもあります。
ケース② 会社の組織体制を強化したい
事業再生をするうえでは組織改革も非常に重要となってきます。たとえば採算が取れていない部門や売上に直結しにくい間接部門の人員を採算部門に配置する、人材のスキルや知識を見極めて適性がある業務を任せるといった方法があります。
特に後者は非常に重要です。適材適所に人員を配置することで生産性が向上する、従業員のモチベーションがアップするなどのさまざまな効果が期待でき、業績の回復につながる可能性があります。
ケース③ 売上を上げたい
事業再生を目指すなら、コストダウンや効率化といった会社の立て直しと同時に売上をしっかりと伸ばしていくことも大切です。もともと売上が立っていた事業が悪化した場合、競合の台頭や品質の低下、市場の変化など、なんらかのきっかけがあるはずです。商品やサービスに魅力があって売れていたわけなので、要因をしっかりと分析して対策すれば、再度売上が上がる可能性は十分にあります。
新規に立ち上げた事業の場合は需要と供給がマッチしていない可能性もあります。またゼロベースで事業を見直して改善していきましょう。商品を少し改良するだけで、あるいはマーケティング戦略を工夫するだけでも、売上が上がる可能性もあります。一方で、どう努力しても採算が合わない、そもそも市場で需要がないと判断されたら、早めに損切りをすることも重要な経営判断です。
零細企業の事業再生を実現するために
第三者の力を借りるのも事業を立て直すうえでは非常に重要です。専門家のアドバイスや手助けを得ることで、事業再生の成功率が大幅にアップする可能性があります。最後に事業再生の際に頼れる相談先について見ていきましょう。
【法律のプロ】弁護士に相談する
まず事業再生の相談先として挙げられるのが弁護士です。実際に事業再生を得意分野として掲げている法律事務所も多く見かけます。やはり弁護士は法律の専門家であるため、法律目線で事業の立て直しをアドバイスしてくれる点、法的手続きを代行してくれる点、債権者との交渉を代行してくれる点で強みがあります。特に裁判所が介在する法的再生では弁護士の助けが必要不可欠です。
一方で法律の専門家ではありますが経営の専門家ではないため事業の効率化や組織改革、売上アップといった事業改善については的確なサポートを得ることが難しい、報酬が高額で相談の敷居が高いといった点がデメリットといえます。
事業再生を弁護士に相談するメリット・デメリットについては、以下の記事でさらに詳しくご説明しています。
【国家資格所有】中小企業診断士に相談する
中小企業診断士とは中小企業に対して経営に関するアドバイスや施策の実行を支援する専門家です。中小企業診断士は国家資格であり、経営の診断や経営に関する助言ができると国がお墨付きを与えた人材であるため安心して相談できる点、公的支援や助成金、補助金制度に熟知している点が相談するメリットといえます。
一方で弁護士と同じ士業ではありますが独占業務がないため手続きの代行はできない点、必ずしも全員が事業再生に特化しているわけではない点には留意して相談しましょう。
中小企業診断士に事業再生を相談するメリット・デメリットについては以下の記事をご覧ください。
【事業再生の専門家】事業再生コンサルタントに相談する
事業再生は経験が豊富で実績が豊富な事業再生のスペシャリストに相談するのが一番です。事業再生コンサルタントであれば過去のさまざまな事例や、それに裏打ちされたノウハウでしっかりとサポートしてくれるはずです。単にアドバイスするだけでなく、経営の効率化や組織再編、売上の改善まで、施策の実行に関しても強力にアシストしてくれます。
東京事業再生コンサルティングセンターでも経営者さまと二人三脚で、優良黒字企業へのV字回復までともに歩みます。
事業立て直しでお悩みの零細企業経営者様へ
よく「経営者は孤独である」と言われます。特に業績が悪化している状況ではデリケートな問題も多く、ご家族や従業員、ブレーンの方にも相談できない事柄も多々あるかと思います。しかし、一人で抱え込んでしまっても良い方法が見つかるとは限りません。精神的にも追い詰められて正常な判断ができなくなってしまう可能性もあります。
そこで、一度事業再生のプロに相談してみましょう。第三者だからこそ、ご自身や自社の状況をざっくばらんに打ち明けることができます。ご相談いただくことで良い方策が見つかり、頭の中が整理でき、前向きに事業再生に向き合えるという効果も得られるはずです。
零細企業の業再生のご相談は東京事業再生コンサルティングセンターへ
東京事業再生コンサルティングセンターは創業30年で50社以上の企業様の事業再生に携わってきました。豊富なノウハウと専門知識を有するスタッフが貴社に合った事業再生の方向性や施策をご提案し、実行を強力にサポートいたします。自己資金も豊富であるため、資金面での支援も可能です。
一番大切な時期に出費を増やしたくない、弊社も本気で向き合いたいという想いから、1年間は無料でコンサルティングサービスをご提供します(条件あり)。
業績の悪化でお悩みなら、事業再生をお考えなら、一人で抱え込まず、まずは私たちにご相談ください。
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。