2024年11月06日
会社が債務超過に陥ると経営にさまざまな弊害が生じはじめ、やがて資金ショートや倒産といった深刻な事態にも陥りかねません。とはいえ、どのように対処していいのか悩まれている経営者の方も多いかと思います。
この記事では債務超過の危険性や現状診断のしかた、債務超過から脱却する方法について事業再生のプロがわかりやすく解説します。ぜひ一度自社の状況を改めて見直してみて、今後の手立てを考えてみましょう。
債務超過とは
そもそも債務超過とはどのような状態のことを指すのでしょうか?「借金を抱えすぎている」「倒産寸前」というような、ぼんやりとしたイメージはあるかもしれません。まずは債務超過の意味について考えてみましょう。
債務超過は危険なのか?
債務超過とは会社が抱える負債額が資産の総額を超えている状態のことを指します。会社の内部留保を使い、さらに不動産や設備などの資産をぜんぶ売却しても借金を返しきれないような状態にある場合、債務超過に陥っているといえます。
危険な状態ではありますが、債務超過状態であっても直ちに倒産するということはありません。債務のなかには支払期限に余裕があるものや、利益余剰金で賄える債務などもあるからです。また、一時的に債務超過状態になっているといったケースもよくあります。
中小企業では3割の会社が債務超過状態にあるといわれていますが、そのなかでも問題なく経営を続けられている会社も多いです。
債務超過と赤字・資金ショートは何が違うのか
債務超過に似たような言葉として赤字や資金ショートがあります。債務超過は前述のとおり会社の負債額が資産の総額を上回っている状態を指します。赤字は収入が支出を下回っている状態、資金ショートは手元資金が不足していて必要な支払いができない状態のことを指します。
債務超過に陥る主な原因は営業損失の発生、事業用資産の価値下落、設備投資による借入金増加などが挙げられます。赤字の原因としては売上の大幅な減少や利益率の低下、資金ショートは売掛金の回収遅れ、過剰在庫、その他突発的な支出の増加など、それぞれ原因も異なります。
なお、危険度は債務超過、赤字、資金ショートの順に高くなっていきます。前述のとおり債務超過は危険な状態ではあるものの、直ちに倒産するというような状況とは必ずしもいえません。一方、資金ショートした場合は倒産の危機が目前に迫っている状態であるため、直ちに対応する必要があります。
債務超過、赤字、資金ショートそれぞれの違いを下表にまとめました。
比較項目 | 債務超過 | 赤字 | 資金ショート |
---|---|---|---|
状態 | 負債総額が資産総額を上回っている状態 | 収入が支出を下回っている状態 | 必要な支払いに対して、手元資金が不足している状態 |
時間軸 | ある時点での財務状態 | 一定期間(月次・年次)の収支状況 | 直近の資金繰りの状況 |
主な原因 | ・営業損失の累積 ・事業用資産の価値下落 ・過剰な設備投資による借入金増加 |
・売上高の大幅な減少 ・原価や経費の増加・価格競争による利益率低下 |
・売掛金の回収遅れ ・在庫の過剰保有 ・突発的な支出の発生 |
経営への影響 | 非常に深刻 ・信用力の著しい低下 ・金融機関の取引停止のリスク |
重大 ・自己資本の減少 ・投資余力の低下 |
緊急 ・支払遅延のリスク ・取引先との関係悪化 |
主な対策 | ・増資による資本増強 ・債務整理、再生手続き ・事業再生計画の策定 |
・経費削減、原価低減 ・不採算事業からの撤退 ・売上増加施策の実施 |
・運転資金の借入 ・資産の現金化 ・支払条件の見直し交渉 |
確認方法 | 貸借対照表で純資産がマイナス | 損益計算書で当期純損失を計上 | キャッシュフロー計算書と資金繰り表をチェック |
対応の緊急度 | 中長期的 | 四半期~年度 | 即時 |
債務超過に陥る典型的な原因
企業が債務超過に陥る原因としてまず挙げられるのは赤字です。経費が売上を上回ると赤字になってしまいます。それを補おうと借金を繰り返すことで、債務超過状態に陥ってしまうのです。
過剰な投資も債務超過に陥る典型的な原因といえます。もちろん、売上をあげるためには設備投資や人材への投資は必要です。それで会社の業績が上がれば問題ありません。しかし、投資をしても効果がなければ、借金だけが残って債務超過に陥ってしまいます。
また、資産の評価損も要因として挙げられます。保有する不動産、動産、金融資産の価値が購入時よりも下落することで、評価損が発生します。これによって会社の純利益額が低下し、債務超過状態になることがあります。
もし思い当たる節がある場合は、一度債務超過診断を行って自社の状況を確認してみましょう。詳しい診断方法は後ほどご紹介します。
債務超過となった場合の影響
債務超過に陥った場合、まずは金融機関からの融資が受けにくくなるという弊害が生じるおそれがあります。融資を受ける際には審査があります。すでに借り入れが多数あると金融機関にとっては貸し倒れのリスクが高くなるため、どうしても審査に通りにくくなってしまうのです。
取引先との関係も悪化しかねません。債務超過に陥ると「倒産するのではないか」「会社や経営者に問題があるのではないか」という不安を与え、取引を避けられる可能性もあります。
そして何よりも大きな弊害は倒産のリスクが高まるという点です。債務超過状態が続くと返済に追われ会社が赤字続きとなり、さらに支払いのために借金を繰り返せばやがて資金繰りがショートし、最悪の場合倒産につながります。
【実態を把握しよう】バランスシートを活用した債務超過診断
債務超過に陥っている場合、あるいは債務超過に陥っている心配がある場合、まずは実態を把握しましょう。現状を把握するためにはバランスシート(貸借対照表)を活用するのがおすすめです。
見るべきポイントは非常にシンプルです。まずは貸借対照表で売上・売掛金などの「資産合計」を見ましょう。その次に借入金・買掛金などの「負債合計」をチェックしましょう。その後、資産合計から負債合計を差し引きます。
前述のとおり、債務超過とは負債額が資産額を上回る状態を指します。たとえば負債額と資産額がともに1,000万円であれば問題はありません。しかし、資産額が1,000万円、負債額が1,200万円の場合、200万円負債が超過しているということになります。
バランスシート(貸借対照表)※資産=負債+純資産 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
会社保有の財産 | 資産 | 金額 | 負債 | 金額 | 他人資本 | 財源元の調達方法 |
a.流動資産合計 | c.流動負債合計 | |||||
現金・預金 | 買掛金 | |||||
売掛金 | 短期借入金 | |||||
有価証券 | 支払い手形 | |||||
商品 | d.流動負債合計 | |||||
受取手形 | 長期借入金 | |||||
貸倒引当金 | ②負債合計 | |||||
その他 | 純資産 | 金額 | 自己資本 | |||
b.固定資産合計 | 資本金 | |||||
土地 | 利益過剰金 | |||||
建物 | その他 | |||||
その他 | ③純資産合計 | |||||
①資産合計(①=a+b) | ④負債・純資産合計(②+③) | 合計 |
【事業再生のプロ監修】債務超過から脱却する術
もし自社が債務超過状態にある場合、早めに手を打つ必要があります。そのまま放置しておくと、倒産という結末にもつながりかねません。ここからは債務超過を解消する方法をご紹介します。
事業の利益を上げる
まずは会社の利益を上げることを考えましょう。資産額が負債額を上回れば状況を改善することができます。利益を上げる方法は収入である売上を上げるか、支出である経費を抑えるかのいずれかになります。
まず手っ取り早くできるのは経費を下げることです。たとえば遊休不動産や設備があれば売却することで固定資産税を軽減でき、売却益を得ることもできます。他にもオンライン化で無駄な出張を減らす、電気や会社用の携帯料金プランを見直すなど、できることはさまざまあるはずです。
債務免除を検討する
債務免除とは債権者に債権を放棄してもらうことです。債務免除してもらう方法としては債権者に交渉するというものが挙げられます。債務免除をしてもらえば債権者は借金を返済する必要はなくなります。しかし、債権者の立場としては貸し倒れということになるため、なかなか応じてもらうのは難しいです。
たとえば債権を持ち続けて倒産させるよりも一旦債務免除をして経営を続けたほうが債務を回収できる見込みが高まる、債務放棄によって不良債権を抱えるリスクが軽減できるなど、債権者が債務免除をするメリット、あるいは債務免除を認めないデメリットを提示して交渉することがポイントです。また、破産手続きを行うことで債務が免除されます。
M&Aで事業売却をする
債務超過で特定の事業の運営や継続が厳しくなった場合は、その事業をM&Aによって売却するという手段もあります。不採算事業を会社から切り離せば、業績の改善につながります。自社では利益が出せなかった事業でも、他社の傘下に入れば十分利益が出る可能性もあります。
また、事業を売却することで売却益が得られる、従業員の雇用を守ることができるといったメリットも得られます。
M&Aで事業を売却する方法や流れは以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
事業再生を進める
どうしても事業が立ち行かなくなったら事業再生をするという方法もあります。事業再生には大きく裁判所に管理してもらって債務を整理しながら会社の立て直しを図る法的再生、債権者と話し合いをしながら債務を整理して再生を図る私的再生、事業部あるいは会社が他社の傘下に入る再生型M&Aという3種類があります。
法的再生は裁判所が介入し、判決というかたちで債権者に命令が下るため、債務の整理がしやすいですが、業績が悪化していることが世間に知られてしまう可能性があるという側面もあります。私的再生は秘密が守られやすいですが、債権者との地道な交渉が必要になるなど、それぞれメリット・デメリットがあり、方法を慎重に検討する必要があります。
事業再生の具体的な手法については以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
中小企業再生支援協議会を活用する
中小企業再生支援協議会とは全国の商工会議所などが運営している公的機関です。弁護士や公認会計士、税理士、金融機関、支援機関と連携しながら、中小企業の再生を支援しています。
相談は無料で、収益力の強化や経営改善計画の策定、財務強化、金融支援を含めた再生サポートを行ってくれます。
債務超過の解消ができたからといってそこで終了ではない
債務超過が解消できたとしても、油断は禁物です。根本的な経営改善を図らなければ、再度債務超過に陥ってしまうおそれがあります。以下のような施策を行い、再度経営が悪化しないよう努めましょう。
適切な財務管理体制をつくる
債務超過に陥った場合、会社の財務管理体制に問題があるケースが多いです。「だいたい経費はこれくらいかかるだろう」「だいたい売上はこれくらいあればいい」というどんぶり勘定ではまたすぐに債務超過に陥ってしまうでしょう。
毎月しっかりと財務状況を確認し、無駄な経費がかかっていないか、売上が低下していないかをチェックし、財務上の問題が発生した際にすぐに対応できる体制を整えることが大切です。
再発防止策と持続可能な成長過程を必ず考える
これまで解説したように債務超過に陥ってしまった原因は必ずあります。売上が低下している、経費を使いすぎている、無駄な投資をしてしまった、資産価値が低下したなど、会社によってさまざまです。
まずはしっかりと原因を突き止め、再発防止策を考えましょう。特に重要なのは会社の売上を上げることです。しっかりと業績が伸び続けるような成長戦略を考えましょう。
定期的なモニタリングを行う
構築した財務体制が機能するよう、あるいは再発防止策がしっかりと実行されるよう、定期的にモニタリングすることが大切です。社内で行うのもいいですが、第三者がチェックことで、より強固な管理体制が築けます。
特に事業再生の専門家に依頼すれば、進捗状況に応じて適切な改善提案もしてくれるでしょう。継続は力なり。しっかりと状況を確認しながら進めていきましょう。
債務超過のお悩みは東京事業再生コンサルティングセンターへ
現在債務超過状態でお悩みの方、あるいは業績の悪化で債務超過に陥らないか心配になられている方は、東京事業再生コンサルティングセンターにご相談ください。私たちは30年間で50社以上の再生に携わってきた事業再生のプロです。
再生案の提案はもちろん、モニタリングや改善案のご提案もさせていただき、優良黒字企業へのV字回復を目指します。初回1年間は無料でコンサルティングをさせていただきます。
画像経営者様の債務超過のお悩みをお聞かせください!
経営者の方は孤独です。特に借金や業績悪化に関する話は、ご家族や従業員に悩みを打ち明けにくいかと思います。第三者だからこそ本音を話しやすい場合もあります。
悩みを吐き出すだけでも、気持ちがスッキリして、頭の中が整理できて、良いアイディアが思い浮かぶようになるかもしれません。そこからともに今後のことを考えていければと思います。
お一人で抱え込まず、まずは私たちにお話をお聞かせください。
«前へ「保証協会から融資を断られたら?審査通過のための攻略法」 |
本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。