2023年10月31日
事業再生を考えられている中小企業の経営者様の多くは融資やリスケなどについて情報収集をして検討をされているかと思います。確かに事業再生を行う上では資金繰りを解決する、あるいは資金を調達するのは非常に重要ではありますが、それだけではありません。融資やリスケに対して完全に正確でない情報も多く、誤った認識のまま事業再生を進めてしまえば、かえって失敗してしまうリスクが高くなってしまいます。
そこで、今回は事業再生コンサルタントとして活躍している清水に、現場のリアルな情報をインタビューしました。一般論ではなく「現実」に焦点を当てて、融資やリスケ、その他の資金調達手段の実情や、さらにその先にある「V字回復」を実現するために大切なことを語ってくれました。
清水は元銀行員として10年以上のキャリアがあり、財務やお金周りの悩み事の解決からの事業再生というアプローチを得意としております。また、彼女自身も中小企業経営者の家庭で育ったというバックボーンもあり、会社経営を幼い頃から今日まで間近で見て・感じてきた上で培われたリアルな知見やマインドは、きっと皆様にとって有益な情報になるはずです。
「これから本気で会社を立て直したい」「従業員や家族を守りたい」という想いがあって事業再生に取り組もうと考えられている経営者様必見です。
事業再生でも融資が通るケースはある。
そして実は昨今リスケが難しくなっている。
まずは事業再生の時に多くの方が考える
「融資」について、実情を教えてください。
事業再生を行う際に金融機関から融資が受けられる可能性はないことはありません。特に2代目、3代目という歴史がある会社は審査に通りやすい傾向があります。ただし、それも稀なケースで、借り入れできる会社はだいたい2割程度にとどまります。
資産、特に固定資産とみなされる純資産があること、これまでの実績があること、長く働いている従業員がいることなどが評価され、さらに「融資することでちゃんと経営状態が回復する見込みがある」と判断された場合にのみ融資が受けられます。
逆にいえば、これに該当しない企業は事業再生のために融資を利用しようと思ってもできない可能性が高いのです。
企業再建資金という日本政策金融公庫の制度を聞きました。
審査の難易度や実態を教えてください。
利用するのは全然ありだと思います。金融機関と比較すると審査も簡単で、実際に弊社のお客様でも95%の方は通過しているという印象です。
ただし、誰でも貸してくれるというわけではありません。だいたい審査落ちする場合、会社に何か問題があるというよりは、連帯保証人である社長もしくは株主の個人的な事故、たとえば税金の未納やクレジットカードの支払い延滞などが原因になっていることが多いです。また、借り入れできる額は1,000万円~1,500万円と、金融機関の融資と比べるとどうしても低めになってしまいます。
資金調達が難しい場合は
「リスケ」がよいと思うのですが、いかがでしょうか?
安易な気持ちで「リスケしよう」と思わないほうがいいです。「リスケすればいいや!」と簡単に考えられているご相談者様もいらっしゃいますが、実際にはなかなかうまくいきません。確かにコロナ禍では金融機関も比較的リスケに応じてくれやすい状況だったのですが、最近では厳しくなっています。
また、そもそも金融機関側はなんでもかんでもリスケに応じてくれるわけではなく、応じる場合は「保証料」を請求されます。リスケする金額や延長期間などにもよって変わってくるため具体的な保証料の金額は言えませんが、少なくとも100万円以上になるケースが多いですね。
余談にはなりますが、企業価値が高いと認められる会社であれば、リスケ以外にもM&Aや出資を受けるという再建方法もあります。
お金周りが一段落してからが
事業再生のスタートということを忘れないで。
お金周りの問題を一時解決した後に
事業再生に失敗というケースは多いと聞きました。
はい。自分たちで事業を再生しようと決意したのにも関わらず、結局また資金繰りが厳しくなって我々に頼ってこられる経営者様が非常に多いですね。自社だけで再生を目指した企業のだいたい70~80%は失敗するか横ばいという印象があります。ちなみに「横ばい」とは現状がなにも変わっていないということなので、決して安心できる状況ではありません。債務超過に陥るのは時間の問題というギリギリの状態です。
事業再生でまず皆さんが苦労されるのはお金周りの問題です。それが一段落つけばホッとしがちなのですが、実際はここからが本当の事業再生のはじまりということを絶対に忘れないようにしてください!
事業再生を成功させるために大事なことはなんですか?
身近にちゃんと会社のことを考えて伴走してくれる人を配置するか、信用できるコンサルタントなど外部の力を借りることですね。実際に2代目、3代目が会社を潰すというケースは非常に多いです。事業再生は経営状態を回復させ、右肩上がりに成長させる必要があり、経営者自身にその力があれば問題はありませんが、ない場合はまた同じように資金ショートに陥る可能性があります。故に、ブレーンは非常に大切なのです。
実際に金融機関では本気で事業再生をさせたい会社には人を送り込みます。魅力的な事業、価値の高い事業を行っている会社の業績が悪化した場合、経営手腕に問題があると考えられます。経営陣をそのまま残すなら、銀行側はブレーンを入れるしかありません。
たとえば警察OBを企業に迎えるケースもありますよね。それは警察官の経験や知識、人脈がその企業に必要だからにほかなりません。同じように、お金周りの悩みやキャッシュフローの改善のプロである銀行員が企業に入ることで、事業再生が実現できる可能性が高くなります。それだけ「誰と進めていくか?」は大事なことなのです。
どういう人をブレーンにしたら良いですか?
資金繰りコンサルタントや士業の方でしょうか? いい質問ですね。一般的な資金繰りコンサルタントは資金面の相談の対応や金融機関への打診をするというのが主な仕事です。事業再生をするにあたっては特別な場合でない限り特に依頼する必要はありません。
繰り返しになりますが、事業再生で必要なブレーンは、「会社の将来を本気で考えてくれて、事業再生をサポートする能力があって、かつ伴走してくれる人」のことです。そこまでやってくれる資金繰りコンサルタントであれば依頼してもいいかもしれません。ただ、「金融機関出身です」と謳っていても、やっていることが相談に乗るレベルの人だったらやめておいたほうがいいです。あと、保険会社出身でコンサルをしている人も多いのですが、彼らはあくまで保険のプロであって、資金繰りに詳しい人はなかなかいません。
会社のことを考えているようで、実はあまり考えていない人をブレーンにしているケースもよくあります。典型的なのが税理士や会計士、社労士などの士業です。基本的に彼らは自分の専門分野には詳しいのですが、経営全体、特に事業再生という課題を解決できるだけのノウハウは十分でないことがほとんどです。
前提として、事業再生を成功させるためには現場と経営者をつなぎ、現場レベルの改善と経営レベルの財務状況の改善、事業戦略全体の立て直しをしていく必要があるんですね。一般的な経営コンサルタントと呼ばれる人も、基本的には経営者や上層部と話しをするだけというサービスになりがちです。実際のオペレーションや品質管理、営業など会社の業績に直結する部分や生産性といった面は現場の人たちのほうがわかっていることが多いので、現場まで見てくれる人を選びましょう。
事業再生に失敗するよくあるパターンや原因をおしえてください。
不要なコストを流し続けることです。事業再生が必要な状況では1円でも無駄にできないはず。経費を使うのであれば、「本当に投資効果があるかどうか?」をしっかり見極めなければなりません。士業などの顧問契約はいらないとまでは言いませんが、再生を果たすまでは単発依頼でもいいと思います。
同時に、会社の体質改善やキャッシュフローの見直し、社員の意識改革、生産性の向上など、やるべきことはたくさんありますので、繰り返しになりますが経営陣と現場を繋いで陣頭指揮がとれる人材を確保することが大切です。経営者や上層部がその役割を担うのが一番ですが、いないなら外部から人材を入れるしかありません。
あと、会社のお金を自分のために使ってしまう経営者はだいたい失敗していますね。会社のお金と個人のお金はきっちり分ける、使い方を徹底して考えるということが事業再生の第一歩だと思います。
事業再生支援への熱量の根源は
生い立ちにあった
同じ事業再生でも銀行員時代と現在で違いはありますか?
銀行員時代は平和でしたね。そもそも銀行がお付き合いするのはある程度規模が大きい会社で、経営者の方のやる気も高かったです。今は銀行のフィルターを通していない分、私たちにとっては当たり前と思っていることをやっていないという会社が多い印象があります。たとえば先ほどの話のように、会社のお金と経営者個人のお金を混同している経営者の方も多いです。今はこうしたところから改善していくパターンも少なくありません。
また、営業にも現場にも行かず、出勤が遅くて夜も早く帰り、何もせずただ「お金がない」と悩んでいる経営者の方も多いですね。実はお金の話というのは意外となんとかなるものです。それよりも重要なのは、「現場でどんな問題が起きているのか?」を把握することなのですが、現場に対しても社員に対しても無関心な方が多いと感じますね。
1年無料コンサルをやるという真意はなんですか?
これまでもお話ししてきたとおり、事業再生のスタート時期は本当にお金もない中で、覚悟を決めてV字回復に突き進まなければならない時期です。お金は会社の体力。瀕死の状態で私たちが体力を奪えば、再生の可能性の芽を潰してしまうかもしれません。「まずは再生をしていただいて、その後に報酬をいただきます」という考え方が根底にあるのです。
だからこそ、弊社では本気で事業再生に向き合います。無駄なコストは徹底的に省き、現場に入り込んで課題をあぶり出して改善し、生産性も高める。売上を戻すだけではなく、右肩上がりで伸ばすことがゴールです。厳しい道程に思われるかもしれませんが、V字回復を果たせた経営者様は自信に満ちた表情を取り戻されています。
インタビューの中で清水様からは事業再生への強い想いを感じます。
原動力はなんですか?
私の親も中小企業の経営者であり、子どもの頃から事業の話を聞いて育ってきました。父も母も、利益にならないものには一切お金を使わない。会社のお金は設備投資に使い、家のお金は私たちの教育に使う。借金も一切しない。特に父は365日事業のことを考えていて、シビアな面も多々見てきました。一方で、父の知り合いの経営者の中には会社のお金でブランド物を買って、旅行に行って、浪費した挙げ句倒産してしまった方もいらっしゃいます。最近でもそういう方を幾度となく見てきました。
ちゃんとお金の使い方を考えさえすれば黒字になるんだよ。事業にちゃんと向き合えさえすれば倒産することはないんだよ。そういうことを皆様に伝えたいというのが原動力なのかもしれませんね。
現在まさに経営難で困っている経営者、経営層の方へ向けて
メッセージをお願いします。
諦めることはありません!どんな事態になったとしても、必ず解決方法はあると私は考えています。経営のお悩みはお金のことだけではありません。目先の資金繰りだけではなく、事業の根本からの見直しが必要になる場合もあります。事業再生が必要だと思ったら、お気軽に相談していただきたいと思っています。事業の悩みでも、お金のお悩みでも、人材のお悩みでも、結構です。
ブレーンとして本気でお客様の会社の将来を考え、現場レベルでも細かく落とし込んで、本気で事業再生を目指していきます!
最後に|東京事業再生コンサルティングセンターより
経営状態が悪化していても歴史がある会社であれば実績と資産、将来性が評価されて融資が下りる可能性もありますが、通常はあまり期待できません。「とりあえずリスケしよう」と考えられる経営者の方も多いのですが、実際のところはそれほど簡単に金融機関がリスケを認めてくれるわけではなく、保証金も必要です。日本政策金融公庫の企業再建資金はひとつの対処策にはなるかもしれません。
ただ、事業再生において本当に重要なのは資金繰りではなく、その後です。しっかりと売上と利益が確保できる体質に改善しなければなりません。そのためには資金調達や事業計画の作成はもちろん、経営者と現場の橋渡し役になれる人材が陣頭指揮をとり、全社的に生まれ変わる必要があります。
ご自身だけでは立ち行かない、人材がいないとお悩みであれば、東京事業再生コンサルティングセンターにご相談ください。ブレーンとして資金の問題の解決から事業の根本的な改善、そして優良黒字企業へのV字回復まで、本気でサポートいたします。
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。