事業再生で会計士を選ぶべきか?守備範囲や依頼時の判断ポイントを解説

2023年10月30日

事業再生で会計士を選ぶべきか?守備範囲や依頼時の判断ポイントを解説

「業績が悪化したから・事業再生が必要になったから、一度会計士の先生に相談してみよう」とお考えではありませんか?しかし、そもそも事業再生の相談は本当に会計士にすべきなのでしょうか?他に相談先はないのでしょうか?

今回は事業再生で会計士ができること・できないことと、会計士に事業再生のサポートを依頼する際のポイントについて解説します。業績が悪化しているけど誰に相談していいかわからない、事業再生について会計士に相談してみようと思われている中小企業の経営者の方必見です。

事業再生で会計士が候補に上がる理由

会計士は数字のプロです。会社の財務状況をしっかりと分析してアドバイスをくれることを期待して事業再生の相談をするという経営者の方が多いという印象です。特に普段会計士と付き合いがある方は、「とりあえず会計士の先生に相談してみよう」と考えるかと思います。

また、経営状況が悪化している際に融資を受けている金融機関から会計士を紹介されて「とりあえず話を聞いてみよう」ということで相談される方も多いようです。

事業再生で会計士がやってくれることとは?

会計士とは企業監査・会計の専門家です。企業の財務状況を分析し、財務諸表が正しいことを証明するのが会計士の仕事といえます。会計士にはどんな知識やスキルがあるのかは公認会計士試験の科目を見ればわかります。公認会計士試験の短答式試験では財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目、論文式試験は会計学、監査論、租税法、企業法及び選択科目(経営学、経済学、民法、統計学)の5科目となっています。つまり、公認会計士の有資格者は財務や会計の専門知識、経済や経営の基本的な知識を身につけているのです。

これらの知識を活かして実際の業務では財務デューデリジェンス(企業の財務状況やリスク、課題を調査・分析すること)の実施、収益の分析、企業の会計上の弱点の洗い出しなどを行います。また、企業の財務状況を把握しながら、経営者が作成した経営改善計画書のとりまとめ業務も行ってくれます。

会計士がやってくれること
財務デューデリジェンス 収益分析(管理会計を基本とする)
監査論から会社内の弱点の指摘 経営改善計画書の取りまとめ

事業再生で会計士に期待できないこととは?

上記のとおり、会計士は会社の財務状況を分析して弱点を指摘してくれたり改善のアドバイスをくれたりします。しかし、具体的に「どう再生していくか?」という面では弱いと言わざるを得ません

事業再生で重要になるのは黒字化すること。そのためにはマーケティングの専門的な知識やスキルが必要となります。むしろ黒字にV字回復しないと事業再生は永遠に不可能です。

確かに会計士は数字のプロではありますが、会社の経営者ではありません。数字を分析して課題点を見つけ出すまではできるのですが、その先の売上アップ・利益アップのノウハウをもつ会計士、マーケティングの専門知識やスキルをもつ会計士はほとんどいないのが実情です。その点を理解した上で相談する必要があります。

会計士と税理士の違いとは?

会計士と似たような職業として税理士が挙げられます。同じ数字を扱う士業なのですが、会計士との大きな違いとしては「税金」に特化しているということです。会計士の業務が財務分析や企業監査などであるのにに対し、税理士の主な仕事は記帳代行や税務申告手続きの代行、節税アドバイスなどです。そのため、会計士とは税理士はまったく領域が異なります。

ただ、やはり税理士に関しても経営の専門家ではありません。経営状況が悪化した際に税負担をなるべく抑える方法や税制特例措置に関する助言はできますが、マーケティングのアドバイスをできる税理士はほとんどいないでしょう。中には経営サポートやアドバイスを売りにした税理士事務所もありますが、あくまで税務がベースとなっているケースも多いです。

依頼の費用相場はどのくらいになるのか?

見積書事業再生を行う際にまず必須となるのは自社の財務状況を正しく把握し、企業としての価値を分析することです。会計士に財務デューデリジェンスを依頼した場合、年商5億程度の企業であれば500万円程度、10億くらいの企業であれば800万円程度の報酬が目安となります。また、コンサルを依頼した場合、1回につき10万円ほどの報酬が必要です。

業績が悪化している企業にとってはかなり大きな負担となるのは間違いありません。また、繰り返しになりますが、財務デューデリジェンスを実施したとしても、その後の立て直し(売上アップ)ができないことには、事業再生にはなかなかつながりません。

賢く会計士に事業再生を依頼する方法

会計士に事業再生のサポートを依頼する際には、

  • ① 会計士にすべてを任せる
  • ② 会計士の特性が活かせる部分のみを依頼する

のいずれかになります。企業再生のサポートはクライアントである経営者の将来はもちろん、その家族や従業員、取引先の将来も担う責任重大な仕事です。会計士に事業再生に関する専門知識や経験があり、かつ責任をすべて負ってくれる気概があれば、①でも問題ありません

会計士に依頼するなら②の方法がおすすめです。財務分析や弱点の洗い出しなどを専門家である会計士に依頼して、その後の業績アップの戦略やマーケティングは、その分野の専門家に別途相談することで、より強固な体制で事業再生に臨めます

事業再生の本質を理解して依頼先は考えよう

成立前章のとおり、会計士に事業再生を依頼するのもありですが、重要なのは「自社の事業再生の本質を掴んで改善に導いてくれるか?」ということです。自社の状況が分析できても、その先ができなければ意味がありません。

業績が悪化している中小企業の多くは資金繰りが難航して事業再生に迫られているわけですが、実はキャッシュフローの改善だけで再生できるケースはほとんどありません。同時に売上や利益を伸ばしていかなければ、本当の意味での事業再生は不可能です。

そのためにはマーケティングや営業、戦略的な組織再編、従業員マネジメントなど、解決すべき課題はさまざまあります。目先のキャッシュフローが改善できたとしても、根本的な課題を解決しなければ、またすぐに資金繰りが悪化してしまうのは自明です

俗にいう事業再生(直近の資金繰りの改善)よりも、むしろその後が本当の事業再生のスタートといえます。その点を踏まえて専門家やブレーンを探すことが大切です。

まとめ

本当に事業再生に必要なのは「いかにして黒字に転換するか?」「いかに売上や利益をアップさせるか?」ということです。今一度その観点に立って、事業再生のパートナーを選んでみましょう。

東京事業再生コンサルティングセンターなら、自社の状況分析はもちろん本丸である黒字化を強力にサポート可能です。資金繰りの改善、企業体質の改善、事業再生という3本柱で優良黒字企業へのV字回復実現をお手伝いし、本当の意味での事業再生まで、パートナーとしてともに歩みます。事業再生の妨げになることと、「責任をもってサポートする」という気持ちを表すために、初年度のコンサルティング報酬は一切いただきません

事業再生についてどこに相談していいのかわからない、業績が悪化しているけどどうしたらいいかわからないという中小企業の経営者様は、一人で抱え込まず私たちにご相談ください。

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本コラムの監修者

事業再生コンサルタント
清水 麻衣子

元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。

通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。