2023年07月19日
企業再生とは?企業再生の定義を解説
会社の業績が著しく悪化している場合、企業再生を行って経営を立て直さなければならないかもしれません。よく倒産寸前だった会社が企業再生を果たして業績がV字回復したという事例をメディアで見かけます。今は苦しい状況でも、企業再生に取り組むことでまた業績が上向くチャンスは大いにあるのです。
とはいえ、「企業再生って具体的にどんなことを指すの?」「どのように会社を立て直せばいいの?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
そこで、今回は企業再生の目的や条件、企業を再生する方法、注意点についてわかりやすく解説します。特に業績悪化で悩んでいる、融資の返済が厳しいと感じていらっしゃる、企業再生を検討されている中小企業の経営者の方は必見です。
企業再生と事業再生の違い
企業再生とはその名のとおり経営破綻に陥っている企業を再生させる一連の活動のことを指します。債務の整理や清算を行う、会社そのものや不採算事業を第三者に譲渡する、運転資金を調達する、売上アップやコスト削減によって利益を上げるといった方法で、企業の経営改善が見込めます。
事業再生とは事業を立て直すことを指します。こちらも企業再生と同様に債務の整理や資金調達、収益率の改善などを行います。不採算事業そのものの廃止や第三者への譲渡も再生に含まれます。
企業再生と事業再生の明確な定義はありませんが、一般的には企業再生は会社全体を立て直すこと、事業再生は特定の事業のみを立て直すことを指します。とはいえ、前述のとおり内容にそれほど違いはありません。また、事業再生が必要なレベルで特定の事業の採算が悪化している場合、企業の業績も相当悪化していて企業再生が必要になるケースも多いです。ゴールが違うだけで、ほぼ同じようなものだと捉えても差し支えありません。
企業再生の目的
企業再生の目的は経営危機を脱っして企業を存続させることです。会社には経営者自身はもちろん、社員・従業員、債権者などさまざまな人々が関わっており、企業再生によってその人たちの今後にも大きな影響を与えます。
もちろん、企業再生を果たして会社を存続させれば、会社の関係者が路頭に迷わなくて済むはずです。一方で、企業再生を行うことで不利益を被る可能性もあります。
ここからは企業再生を行うメリット・デメリットを、経営者、債権者、社員・従業員それぞれの立場から考えてみましょう。
各立場から見る企業再生の
メリット・デメリット
経営者のメリット・デメリット
まず経営者のメリットとして上げられるのは会社が存続できることです。会社が倒産すれば当然収入がなくなってしまいます。さらに会社が経営者の個人保証に入っている場合、会社が倒産すれば経営者も破産手続きを行わなければなりません。一方、企業再生を通じて会社の業績がV字回復すれば、大きな利益を得られるチャンスがあります。
デメリットは会社の経営権を失う可能性があることです。特に法的再生を選んだ場合、あるいは会社を第三者に譲渡するケースなどでは経営から退かなければならない場合もあります。また、風評被害が広まってしまうのもデメリットです。特に法的再生を選択すれば手続きをしたことが公になってしまいます。それ以外の手段でも債権者や社員・従業員を通じて業績が悪化して企業再生を行っていることが世間に広まってしまうおそれがあります。
債権者のメリット・デメリット
企業再生によって債権者が得られるメリットとしては貸し倒れのリスクが軽減できる点が挙げられます。債務者が破産してしまえば債権を回収することができません。債権者としては毎月の返済額を軽減したり返済期間を延長したりする、いわゆるリスケや、債権の全部または一部を放棄する債権放棄をするのは痛手ですが、それによって債務者が再生できれば債権を回収できる可能性が高くなります。
一方で企業再生を債務者が行うことで、債権者にとっては債権を全額回収できないリスクも相当高くなる側面があります。リスケや債権の一部放棄をしたとしても、必ずしも再生できるとは限りません。債務者が倒産してしまえば結局貸し倒れということになります。債権者は債務者が本当に再生できるのかどうか?を見極めてリスケや債権放棄に応じる必要があります。
社員・従業員のメリット・デメリット
企業再生による社員・従業員のメリットとしては失業リスクが低くなるという点が挙げられます。会社が倒産してしまえば社員や従業員も職を失ってしまうことになります。企業再生によって会社が存続すれば、そのまま働き続けられる可能性も高くなります。
デメリットとしてはリストラに遭ったり待遇が悪化したりするリスクが高くなるが挙げられます。企業再生の一環としてリストラという手段を選択した場合、会社は存続しても対象となる社員や従業員は職を失ってしまうことになります。コスト削減の一環として残業の抑制や減給、ボーナスカットなどが行われた場合、待遇が大幅に低下してしまいます。他にもM&Aや事業譲渡を選択した場合、他の会社の傘下に入ることになりますので、慣れない環境での就労を余儀なくされるかもしれません。
3つの面から見る企業再生の条件
以上のように企業再生を行うことで、経営者、債権者、社員・従業員それぞれがメリットを享受することができます。一方でデメリットも少なからずあるため、経営者は企業再生に踏み切るかどうかを慎重に判断しなければなりません。また、いくら経営者に「会社を立て直したい」という気持ちがあったとしても、それが叶わない場合があります。
企業再生をすべきかどうかは「価値判断」「実現可能性」「協力者理解」という3つの面から総合的に判断することが大切です。それぞれ詳しく見ていきましょう。特に「価値判断」は非常に重要となりますので、しっかりと検討してみてください。
価値判断
まずはその会社、その事業に価値があるかどうかを見極めましょう。重要なのは企業再生が叶うような需要が高い事業を持っているかどうかです。時代は常に流れています。特に今は技術の発展が目まぐるしく、すぐにトレンドや価値観も変化している時代です。たとえば需要の低下によって業績が悪化した場合、企業再生を頑張っても業績が回復しない可能性があります。
企業再生を行って業績回復が実現できるかどうかも重要です。需要が高いと見込める事業があっても、それが再生できなければ意味がありません。企業再生においては返済の負担を減らしてキャッシュフローを改善するのがまず基本的な流れです。仮にリスケや債権放棄を行っても利益が得られずキャッシュフローが改善できないとなると、そもそも事業として成り立っていない(儲からない)ということになってしまいます。
実現可能性
企業や事業の価値を判断したら、次は実現可能性を検討しましょう。資金繰りの正常化ができるかどうか、事業再生プランが立てられるかどうかが重要です。前項とも重複しますが、仮に負債をなくしたり軽減したりしてもキャッシュフローが健全化できない場合、そもそもその事業は成り立っていないといえます。どう考えても利益を上げられる方法がない、V字回復できる見込みがないということになるとかなり厳しいです。
経営者の本気度も重要です。どんなに良いプランがあったとしても、それを実行する経営者がやる気にならなければ、絵に描いた餅になってしまいます。企業再生には大きなエネルギーが必要です。ときには債権者や従業員から反感を買うかもしれません。それでもやり抜くという強い意志が大切です。少し精神論的な話になりますが、経営者が本気であるかどうかが再生の成否をいちばん左右する要素であるというのが数々の企業再生に携わってきた私たちが実感しているところです。
協力者理解
企業再生は経営者の本気度がいちばん重要な一方で、周囲の理解も必要不可欠です。返済の負担を軽減して資金繰りを正常化するためには債権者と交渉してリスケや債権放棄などに協力してもらわなければなりません。コストダウンや組織改革を図る過程で、従業員にも何かと負担をかけることになります。普段から関係者と問題なくコミュニケーションがとれているか、理解を得られそうかを検討してみましょう。
また、ご家族からの理解も重要です。企業再生を行うことで、経営者が経営権を失うケースもあります。特に親族が役員や社員として会社で働いている場合はもちろんですが、そうでない場合でもしっかりと理解してもらえているかどうかで大きく違ってきます。
企業再生の方法
ここまで企業再生のメリット・デメリットや条件について考えてきました。それでは実際に企業再生とはどのようなことを行うのでしょうか?ここからは企業再生の方法について見ていきましょう。
大きく分けて「経営陣や企業をそのまま残す再生方法」と「経営権喪失・倒産を伴う再生方法」の2種類があります。自社の状況などに合わせて方法を選ぶことが重要です。
経営陣・企業を残す再生方法
会社を存続させ、経営者がそのまま会社に残れる方法としては民事再生や私的再生が挙げられます。民事再生とは民事再生法にもとづき裁判所が介入して行う事業再生方法です。債権者の多数の同意を得て裁判所が再生計画を認めてくれれば、債務を大幅に圧縮できます。ただし、手続きが公になるため、社会的信用が低下する可能性が高いです。
私的再生とは裁判所が介入せずに債務者が債権者と交渉をしながら債務を整理して再生を目指す方法です。民事再生のように手続きが公にならないのがメリットです。ただし、債権者と直接交渉してリスケや債権放棄などに応じてもらう必要があり、調整が難航するケースも多いです。
経営権喪失・倒産を伴う再生方法
経営者が退陣しなければならない再生方法としては会社更生が挙げられます。会社更生法にもとづいて株式会社を再建させるための手続きです。裁判所が選任した更生管財人(弁護士など)が会社の経営や財産の管理にあたり、債権者などの利害関係者と調整しながら再生を目指します。そのため、経営者は会社から退かなければなりません。
リスケをしても債務が履行できない場合は、破産も選択肢に入ってきます。裁判所に破産申立を行い、破産管財人が財産の管理と処分を行います。会社は解散となり当然ながら経営者は経営権を失いますが、債務が免除になるのがメリットです。
業界の闇にご注意!企業再生依頼で気をつけること
企業再生を進めるにあたって弁護士や会計士、税理士などの士業やコンサルタントに相談される方も少なくありません。もちろん知識やスキルがある専門家に相談するのは非常に有効です。しかし、相談相手を間違えると事業再生ができなくなってしまう、損をしてしまうといったリスクが高くなります。また、藁をもすがるような思いの経営者の心理につけ込んで不当に利益を得ようとしている悪質業者にも注意しなければなりません。
ここからは企業再生コンサルタントだからこそ知る業界の闇について暴露します。
企業再生依頼で気をつける
2つの注意点
M&A前提の事業再生
M&Aをやたら推してくるコンサルタントは注意が必要です。経営者が経営を立て直したいという気持ちでコンサルタントに相談し、最初は親身に話を聞いて企業再生に関していろいろアドバイスをくれるものの、途中からM&Aを勧めてくるというケースがしばしばあります。実は裏ではそのコンサルタントが買収を狙っている企業と組んでいて、企業再生から徐々にM&Aに話をもっていくのが彼らの手口です。手間をかけて事業再生をコンサルするよりも、お金をもっている企業に買収をさせたほうが利益につながりやすいため、M&Aをさせたがるのです。
ただし、M&Aが悪いということでは決してありません。企業再生を果たすためにはM&Aも十分選択肢になり得ます。問題なのは経営者が再生を望んでいて、かつ再生できる可能性があるのにも関わらず、M&Aを安易にゴリ押しすることです。
特に需要があって採算性が高い事業を持っている会社、再生可能性が高い会社ほど狙われやすいです。
放置したまま何も行わない
基本的に中小企業は事業再生コンサルタントに依頼をしても断られてしまう傾向が高いです。ただ、契約を結んだにもかかわらず放置されてしまうケースもあります。悪意はなくとも、責任感の欠如からクライアントを放置してしまうのです。
再生したい会社の経営者からすれば、放置される期間が長ければ長いほど、どんどん状況が悪化してしまいます。真摯に向き合ってくれるかどうか、責任感があるかどうかをしっかりと見極めましょう。
我々への相談をおすすめできる企業様
企業再生には多種多様な方法があり、いざ実行するとなると経営者自身はもちろん、債権者や社員・従業員、家族にもさまざまな影響が生じますので慎重に検討する必要があります。まずは先ほどご紹介した3つの条件をしっかりと検討してから、企業再生の方向性を考えましょう。専門家の手を借りることも非常に有効ではありますが、相談先が信頼できるかどうかをしっかりと見極めることが大切です。
はじめて企業再生を検討されている中小企業経営者様、M&A未経験の中小企業経営者様は、ぜひ東京事業再生コンサルティングセンターにご相談ください。前述のとおり、中小企業は一般的なコンサルタントから見ると優先順位が低くなってしまいます。しかし、中小企業ほど体力(資本力)の問題が大きいため、対応が遅れることで致命的な事態につながりかねません。
弊社は年商5,000万円以上の零細~中小企業をメインにサービスを提供しておりますので、放置するようなことはあり得ません。実際にこれまでさまざまな企業様を企業再生、そしてV字回復に導いてきました。初回相談は無料なので、ぜひお気軽にご連絡いただければ幸いです。
詳しいサービス内容や弊社の特徴について知りたい方は、「経営者の方へ」をご覧ください。
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。