資金繰りを改善、銀行のリスケを成功させる交渉方法

2019年07月16日

そもそもリスケとは

リスケとは「リスケジュール」の略で、日本語にすると「返済条件変更」となります。銀行融資を受けて返済が難しくなったときに、たとえば毎月10万円の元金返済額を5万円に軽減してもらうというように、返済額や返済方法(利息のみの返済など)の変更や返済猶予をしてもらうことを指します。

「銀行融資では一度契約した条件を変更することはできない」と思われがちですが、実は交渉をすれば銀行がリスケに応じてくれる可能性は結構高いのです。

事業をしていると業績が順調に伸びているときもあれば、資金繰りが悪くなるときもあります。資金繰りが悪化してしまえば返済することもできません。倒産してしまえば返済自体が不可能となり、金融機関側も貸し倒れで不利益を被ることになります。そのため、銀行ではリスケにも柔軟に対応しているのです。

政府も銀行へリスケに応じる要請をしている

金融庁は2009年に「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(中小企業金融円滑化法)」を施行しました。当時を振り返ってみるとリーマンショック直後の大不況。特に中小企業の倒産が相次いだこともあり、金融庁はこの法律を制定して銀行へリスケに応じるよう要請してきました。

中小企業金融円滑化法は2013年度末までの期間が定められた法律でしたが、その後も経済の活性化や雇用促進、中小企業・小規模事業者の保護などを目的として、引き続き銀行に対して「貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めること」「他の金融機関等と連携し、貸付条件の変更等に努めること」として、リスケに柔軟に対応するよう働きかけています。

こうした政府の施策の甲斐もあり、以前よりもリスケの成功率が向上しました。中小企業金融円滑化法が施行される前はリスケの実行率が60%ほどだったのに対し、現在では90%近く。リスケを申し込めばかなりの確率で対応してくれるようになりました。

リスケをするデメリットはどんなこと?

リスケを行うメリットは返済条件を変更してもらうことで資金繰りが改善でき、事業再生を行うチャンスが得られるということですが、デメリットもあります。

リスケをしている間は新しく融資を受けることができません。返済できないという状況に陥った結果リスケをしているので、当然といえば当然のことです。リスケが終われば再度融資を受けられるようになります。

また、リスケをすることで従業員や取引先の信用を失う危険性もあります。リスケをしていることが従業員に知られると、会社の将来性に不安を感じて辞められてしまうかもしれません。取引先に発覚すると、取引を停止される危険性もあります。リスケをする際には極力周囲に知られないようにしましょう。

銀行のリスケのために用意する資料

リスケを申し込むためには「返済条件変更依頼書」「経営改善計画書」「資金繰り表」という3つの書類を用意する必要があります。

返済条件変更依頼書は、いわばリスケの申込書。リスケの意思を書面で表明するものなので、これがないとはじまりません。

金融機関からリスケを認めてもらうためには、「どのように資金繰りを改善し、どのように返済するのか?」「リスケを認めたら返済ができる根拠」を明確にしなければいけません。どう業績を回復させ、返済を行っていくのかということを経営改善計画書で説明し、リスケによって資金繰りがどう改善するのかを資金繰り表を用いて根拠を明らかにします。

原則として以上の3つの書類がリスケの成否を左右しますが、他にも金融機関によって資料の提出を求められることがありますので、まずは融資担当者に確認しましょう。

銀行へリスケ交渉を上手く通す3つのコツ

以前と比較するとリスケの成功率が上がっているのは前述のとおりですが、それでも確実にリスケが認められるとは限りません。リスケを成功させるためには如何に銀行の融資担当者と上手く交渉して信用してもらうかが重要。ここからは、リスケ交渉のコツを3つ解説します。

長期の事業計画書・資金繰り表を作成する

銀行に提出する経営改善計画書と資金繰り表はなるべく長期スパンで作成しましょう。1~2年後の短期的な展望だけでは銀行の担当者もリスケを認めるかどうか判断できないでしょう。短期的に業績が回復しても、その後悪化してしまえば意味がありません。「1年後に売上を2倍にします」というような夢物語のような計画も説得力に欠けます。

5年、10年でどうやって業績を立て直し、どれくらいのお金が入ってきて、どのように返済をしていくかを理論的に説明しましょう。長期スパンで物事を見て事業計画と資金繰りの計画を考えることで、「来年は売上が伸びないかもしれませんが、新規事業を行うことで10年後にはこれだけ売上が伸びます」というような、融資担当者を説得できる材料も見えてくるかもしれません。

嘘は絶対につかない

何事も嘘は信用を無くします。特にお金が関わる銀行交渉時にはそれが顕著となるので、過去も含めて嘘は絶対につかないようにしましょう。銀行員も人間ですので、心証が悪いと認めてくれるはずのものも認めてくれなくなります。

粉飾した決算書を提出しても、現状の資金繰りとの矛盾を見破られる可能性が高いです。その場でリスケが認められたとしても、返せなければ意味がありません。後から嘘が発覚した場合はリスケが打ち切りになる危険性もあります。

もちろん、経営改善計画書や資金繰り表も嘘の記載は厳禁です。楽観的な展望などを記載する人もいますが、それも考えもの。現状に即してかつ客観的な予測を盛り込むようにしましょう。

また、できないことは「できない」と正直に話すことも大切です。金利のアップや追加担保をリスケの条件にされることもあります。しかし、できもしない約束をしてしまうと結果的に嘘をついたことになります。こちらが不利になる条件を鵜呑みのすることにもつながるので、「できない」とはっきり言うことも重要なのです。

「融資の条件を変更してください」とお願いしているわけですから、誠心誠意話しましょう。嘘をついたら後で自分の首を締めることにもなりかねません。

信用保証協会への協力を仰ぐ

信用保証協会付きの融資をリスケする場合は、信用保証協会にも相談してみましょう。リスケしても信用保証協会の保証を受け続けることは可能です。

また、信用保証協会では資金繰りに関するさまざまなサポートを受けることができます。資金繰りの改善や経営に支障が生じている人向けの保証などをしているので、相談することで何らかの支援を受けられる可能性があります。

たとえば、「条件変更改善型借換保証」を利用すれば、すでにリスケをしている人でも新たに融資を受けたり、複数債務を一本化したりすることが可能です。

信用保証協会とは

信用保証協会(一般社団法人全国信用保証協会連合会)は中小企業や小規模事業者の資金繰りを円滑化することを目的とした公的機関です。一般的に企業規模が小さい、創業して間もない、実績が乏しい会社や事業者は信用力が低いとみなされて融資を利用しづらい傾向があります。

こうした中小企業や小規模事業者の信頼を保証してくれるのが信用保証協会です。具体的には事業者と金融機関の間に入り、代位弁済を行う「信用保証制度」を運営しています。何らかの理由で債務者が銀行に返済できなくなってしまった場合は、信用保証協会が借入金を肩代わりして返済し、その後債務者から回収するという仕組みです。

信用保証協会が入ることで銀行は貸し倒れのリスクがなくなるので、中小企業や小規模事業者にも融資することができます。

経営改善に関するサポート事業や相談窓口業務なども行っているので、一度相談してみると良いでしょう。

日本政策金融公庫でもリスケは可能

公的機関である日本政策金融公庫でも民間の銀行と同様にリスケは可能で、申込みの流れも民間の金融機関と同様です。返済条件変更依頼書、経営改善計画書、資金繰り表を提出して交渉を行った後にリスケの可否が判断されます。

特に日本政策金融公庫が恐れているのは貸し倒れです。貸し倒れのリスクが軽減できると判断された場合はリスケに対応してくれるでしょう。また、公的な団体なのでそれほど無茶なことは言わず、柔軟に対応してくれる傾向があります。

日本政策金融公庫とは

2008年に設立された財務省所管の特殊会社で、国内に5つ存在する政府系金融機関(政策金融機関)の1つです。主に中小企業の資金調達支援や信用保証制度の運用を行う「中小企業事業」、一般国民や小規模事業者を支援する「国民生活事業」、農林水産事業者の資金調達支援を行う「農林水産事業」という3つの事業を展開しています。事業用の融資はもちろん、教育ローンなどサービスも幅広いです。

民間の金融機関よりも金利が低く、審査が通りやすい傾向があります。担保や保証人がない状態でも借入が可能なので、民間の金融機関では融資が受けにくい属性の人でも、資金調達がしやすいのがメリットです。

また、日本政策金融公庫は日本経済の成長や地域活性化、セーフティーネット機能の充実を目的として作られた公的機関です。中小企業や小規模事業者を対象とした経営のアドバイスや支援、ビジネスマッチングなどのサービスを受けることもできます。

リスケは延命措置に過ぎない!一番大切なのは事業再生

これまでリスケについて解説してきました。リスケに成功すれば、当面の間は返済による負担を軽減できて、会社を存続させることができるでしょう。

しかし、あくまでリスケは返済条件を変更するというだけの話で、元本が少なくなったり、返済義務がなくなったりするわけではありません。月々の返済金額が軽減されたり、一定の期間返済猶予されたりするのみで、借りたお金はしっかりと返さなければいけないのは変わらないのです。リスケは会社の延命措置であり、資金繰りが改善できなければいずれ倒産という結果になってしまいます。

次に考えるべきことは「いかにして事業を再生させるか」、「資金繰りを安定させるか」ということです。リスケで捻出したお金を運転資金に回して会社を継続させ、売上確保や事業拡大のための投資などを行い、返済までに業績を回復させる必要があります。これができなければ、リスケをしたところで意味がないのです。

リスケはあくまで会社を存続させるための手段の1つにすぎず、その先どうしていくのかということのほうがよっぽど重要であることを頭に入れておいてください。

絶対に削ってはいけない予算は広告費と営業人件費

経営改善計画書、資金繰り表を作成するとき、あるいはリスケが成功して事業再生の計画を具体的に立てる際に考えるべきこととして経費の削減が挙げられます。確かに無駄を省けば会社に残るお金が増え、資金繰りも安定するでしょう。しかし、何でもコストカットすれば良いというものではありません。

たとえば、業績が低迷している企業は広告費や営業人件費を削りがちです。確かにこれらの費用はすぐに利益には直結せず、かつ削りやすい側面があります。しかし、広告を出さなければ、営業活動をしなければ、会社の知名度が低下し、新規顧客や売上を逃してしまいます。その結果、まずます業績が低迷して倒産する企業が少なくないのです。

もちろん、無駄なところを削るという改善はどんどん行うべきですが、広告費や営業人件費をまるごと削ってしまうのは一番危険なパターンです。

このように、コストカットをすべきところとすべきでないところをしっかりと見極めた上で、事業再生を進めてください。

根本的な解決に頭を抱えている経営者様へ

赤字企業再生支援センターは銀行の融資が返済できない、資金ショートしそうと頭を抱えられている経営者様の味方です。

リスケや追加融資でなんとかその場をしのげても、事業再生ができなければ遅かれ早かれ倒産という結果を招きます。肝心なのは資金調達をしたその後なのですが、残念ながら事業再生に失敗して倒産する中小企業も少なくありません。

私たちはファンドだから資金を出資するだけでなく、経営に関するアドバイスやサポートも行い、資金調達から二人三脚で事業再生を目指していきます。これまでも数多くの中小企業様に出資して経営サポートをさせていただき、業績をV字回復に導いた実績があります。

資金調達に困っている、倒産しないためにはどうしたらいいのかわからない。そんなお悩みを一人で抱え込んでいるのなら、ぜひ赤字企業再生支援センターにご相談ください。

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本コラムの監修者

事業再生コンサルタント
清水 麻衣子

元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。

通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。