2024年10月29日
中小企業から融資を受ける際には「信用保証協会」を利用することがあります。信用保証協会とはその名のとおり債務者を保証する機関のことです。この信用保証協会から保証を断られてしまうと融資が受けられない可能性もあります。
この記事では信用保証協会とはなにかという基礎知識から、融資に通らない理由、断られたときの対処法についてご紹介します。
なお、すでに信用保証協会や金融機関から融資を断られている方には「金融機関に融資を断られ続けてお困りの事業主様へ」で事業を立て直すポイントについてご紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。
保証協会とは?
まずは信用保証協会とはどういった機関なのか、どのような役割があって、我々が利用することでどのようなメリットがあるのかについて見ていきましょう。
中小企業の資金調達を支援する公的期間
冒頭でも少し触れたとおり、信用保証協会とは融資を受ける際に債務を保証してくれる機関です。起業家や中小企業の経営者などの資金調達を支援することを目的とし、信用保証協会法にもとづいて国が設置した公的機関です。
財務省が所管している機関で、47都道府県と横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市に窓口が設けられています。地域の事業者がスムーズに資金調達でき、健全な経営ができるようサポートしています。
保証協会ができること
一般的に金融機関から融資を受ける際には保証人が必要となります。保証人が債務を保証する、つまり借金が返済できなかったときは保証人が代位弁済を約束することで、銀行からお金を借りることができます。
保証協会では保証人のように債務を保証してくれます。公的機関である保証協会に債務を保証してもらうことで、連帯保証人や担保に過度な依存をして借り入れをしなくてもよくなる、長期間の借り入れがしやすくなる、融資枠が拡大できるなどのメリットが得られます。
他の金融機関との違い
銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの金融機関と信用保証協会は根本的に性質が異なります。信用保証協会は債務を保証するのが役割で、実際にお金を借り入れるのは金融機関からということになります。信用保証協会が債務を保証することで、債務者は資金を借り入れることができるのです。
万が一債務者が借金を返済できなくなった場合は信用保証協会が金融機関に対して代位弁済(借金を肩代わりして返済すること)をしてくれます。しかし、これで借金がチャラになるわけではありません。債務者は信用保証協会に対して肩代わりしてくれた分を返済する必要があります。
とはいえ、先ほどもご説明したとおり信用保証協会を利用すれば資金調達がしやすくなり、実に中小企業経営者の3割程度は信用保証協会からの保証を受けて資金調達をしているといわれています。
保証協会への申請の基本知識と手順
まず中小企業の経営者や小規模事業者は信用保証協会に対して保証申込手続きを行います。その後、信用保証協会は保証の可否を審査し、保証が可能であれば金融機関に保証承諾をします。
信用保証書が金融機関に対して交付されれば、金融機関から融資が下りることになり、債務者は保証料を信用保証協会に支払います。その後は毎月債務者が金融機関に対して返済を続けていくという流れです。
万が一債務者が返済できなくなってしまった場合は信用保証協会が金融機関に対して代位弁済を行い、債務者は弁済してもらった分を信用保証協会に返済します。
保証協会からの融資に通らない要因
信用保証協会は中小企業の経営者や小規模事業者にとっては強い味方となります。しかし、誰でも彼でも保証してくれるわけではありません。保証を申し込んでも断られてしまうケースもあります。ここからは保証協会から保証を受けられない原因について考えていきましょう。
保証協会の審査基準
銀行の融資と同様に信用保証協会による保証を受ける際にも審査があります。万が一債務者が融資を返済できなくなった場合は、保証協会が肩代わりしなければならないので、債務不履行のリスクが高い人まで保証することはできないのです。
審査基準は事業計画や調達する資金の使い方、会社のこれまでの業績や返済能力、経営者の信用情報など、多岐にわたります。
また、そもそも信用保証協会は中小企業の資金繰りを円滑にする目的で設けられた機関です。一定の規模以上の事業者、いわゆる中堅企業や大企業に該当するような企業は、そもそも利用資格がありません。
保証協会の審査に通過できない5つの理由
信用保証協会の審査に通過できない理由は主に以下の5つのいずれか、もしくは複数が原因として考えられます。なお、審査に落ちる原因は必ずしも特定できるわけではないので、しっかりと準備した上で審査に臨みましょう。
①会社の財務状況に問題がある
まず考えられるのは会社の業績や財務状況に問題があるケースです。利益が出ていない、債務が多すぎるといった状況に陥っている場合、仮に保証をして融資を受けられたとしても、返済ができないと判断される可能性が高いです。
特に利益がしっかりと出ているか?ある程度会社に現金があるか?今後返済していけるだけのキャッシュフローが確保されているか?といった点が重視されます。
②会社や経営者の信用に傷がある
その会社や経営者が信用に値するかといった点も非常に重要です。過去に債務不履行や延滞といった金融事故を起こしている履歴がある、多重債務に陥っているといった状況だと、保証を受けるのが難しくなってしまいます。
また、経営者の資質や人柄も見られています。事業計画をしっかりと立て、面接の際には誠意と熱意をもって想いを伝えましょう。
③資金計画が曖昧
融資で調達した資金をどのように使うのかも重要な審査項目となります。たとえば設備を導入する場合は見積書や請求書などを提示していくらかかるのかが明らかになっていれば、そしてどのように返済をしていくのかが明らかになっていれば、融資が下りやすくなります。
逆に借入金を何に使うか明確になっていない、あるいは返済計画が甘い場合は、返済能力が低い、計画性がないとみなされて保証を断られてしまう可能性が高いです。
④事業計画書の内容が不十分
金融機関に融資を申し込む際にも、信用保証協会に保証を申し込む際にも、事業計画書の提出が求められます。事業計画書とはどのような事業を行うのか?どれだけ初期費用や運転資金が必要なのか?どれくらい売上や経費、利益が見込まれるのか?といった計画をまとめた書類です。
たとえば計画に具体性がない、見込みが現実的でないなど、事業計画が甘いと利益が出ない、つまり返済能力が低いとみなされて保証してもらえない可能性があります。
⑤保証の対象外である
保証の対象外ということで断られてしまうケースも意外と多いです。信用保証協会は中小企業や小規模事業者の資金調達を支援するための公的機関です。業種ごとに資本金や従業員数の基準が定められており、これを上回ってしまう企業は保証を受けることができません。
たとえばサービス業であれば資本金5000万円以下、従業員数100名以下が要件となっており、従業員が100名を超す企業が申し込んでも断られてしまいます。
保証協会から融資を断られた場合の対処法4STEP
万が一信用保証協会に保証を申し込んで断られてしまったらどうすればいいのでしょうか?ここからは4つの対処法を見ていきましょう。
①審査に落ちた原因を分析し改善策を立てる
まずはなぜ審査に落ちてしまったのか?その原因に対して改善策を立てましょう。保証協会は審査に落ちた原因を教えてくれるわけではありませんので、ご自身で分析する必要があります。
たとえば事業計画が甘かったという自覚がある、面談で事業計画について突っ込まれたということであれば、事業計画をもう少しシビアに立てる必要があります。どうしても原因がわからない場合は、専門家に第三者視点で見てもらうのもおすすめです。
②保証資格を持つか必ず確認する
前述のとおり、そもそも自社が信用保証協会を利用する資格がない場合、いくら良い事業計画や資金計画を立てたとしても断られてしまいます。
業種ごとに資本金や従業員数の上限が定められており、これを超える企業は利用できません。また、農業や林業、金融・保険業など一部の業種は対象外となります。
詳しくは全国信用保証協会連合会のホームページでご確認ください。
③必要書類が揃っているか確認する
申込みに必要な書類が期限までに提出されなかった、内容に不備があった場合も審査に落ちてしまうことにつながります。
信用保証協会に保証を申し込む際には主に以下のような書類が必要です。
- 信用保証委託申込書(保証人等明細)
- 申込人(企業)概要
- 信用保証依頼書
- 個人情報の取扱いに関する同意書
- 確定申告書(決算書)
- 商業登記簿謄本
- 印鑑証明書
前述のとおり、経営者の人柄も見られており、それは提出書類にも現れます。次に申し込むときはしっかりと書類が揃っているかどうかを確認し、期限までに提出しましょう。
④事業計画書・返済計画書をしっかり作り込む
信用保証協会の審査あるいは金融機関の融資審査では、特に事業計画書や返済計画書の内容がシビアに見られます。これらの計画が甘いと債務を返済する能力がないとみなされて、断られてしまう可能性が非常に高くなります。
審査に通過したい、よく見せたいという気持ちから、楽観的な計画を作成しがちです。しかし、相手はプロなので、そうしたごまかしはすぐに見抜いてしまいます。具体的かつ現実的な計画を立てるよう心がけましょう。
もしご自身だけで事業計画や返済計画を作成するのが難しいと感じるのであれば、事業再生のプロであるコンサルタントに監修してもらうのも一つの有効な手段です。
金融機関に融資を断られ続けてお困りの事業主様へ
信用保証協会から保証を断られてしまった、金融機関から融資を断られてしまったという方もいらっしゃるかと思います。しかし、まだ手立てはあります。
ここからは業績悪化にお悩みの方、資金調達で困られている方のために、事業再生コンサルタントからのメッセージをお送りします。
融資審査が通らないからと諦めるのはまだ早い!
いちばん重要なのはあきらめないということです。確かに融資審査に落ちてしまうのはかなりの痛手です。しかし、そこであきらめてしまっては大切な従業員やご家族はどうなるでしょうか?彼ら・彼女らを路頭に迷わせないためにも今が踏ん張りどころです。
融資に断られたという倒産寸前の状況から優良黒字企業にV字回復した事例も数多くあります。あきらめなければきっと道はあるはずです。
事業を再生する道は複数ある
信用保証協会から保証を受けて金融機関から融資を受ける以外にも、事業を再生させる方法はいくつもあります。
- リスケを申し込む(すでに融資を受けている場合)
- 売上をあげる・経費を削減して利益を増やす
- 投資家から出資を受ける
- クラウドファンディングで資金を集める
- 会社を分割して不採算事業を切り離す
融資や保証の審査に落ちたからといってふさぎ込む必要はありません。あらゆる方法を試して、事業再生に向かって歩みだしましょう。
事業再生は経験豊富なコンサルタントに相談を
三人寄れば文殊の知恵という言葉があります。特にこうした極限の状態ではなかなか一人で考えていても打開策は浮かびづらいです。そこで、プロのコンサルタントに相談してみるのも手です。
事業再生コンサルタントであれば第三者として会社の現状を分析し、これまでの事例やノウハウから、最適な事業再生案を提案してくれるはずです。また、パートナーとして常に進捗を把握し、再生計画の実行を強力にアシストしてくれます。
融資や資金調達のご相談は東京事業再生コンサルティングセンターにお任せください!
事業再生でお困りなら、融資や資金調達がうまくできずにお悩みなら、東京事業再生コンサルティングセンターにご相談ください。私たちは業界歴30年以上で、これまで50社以上の中小企業の再生に携わってきました。優良黒字企業にV字回復したという事例も多数ございます。自己資金が豊富なため、資金面でのバックアップも可能です。
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悩みを話すだけでもすっきりします。ぜひ一人で抱え込まずに、私たちに相談してみませんか?
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。