2019年11月15日
【元銀行員が語る】資金繰りに疲れた経営者の話。対処方法を徹底解説
資金繰りがうまくいかなくなってくると、経営者の方は少しでも状況を改善するために資金繰りに奔走します。そんな経営者が頼るものの1つが、銀行です。
「主要銀行として取引をしているから」「預金をたくさんしているから」「通帳をたくさん持っているから」と融資の相談に行かれますが、前回の記事「元銀行員が語る~資金ショート寸前で融資はできる?銀行融資の真実を告白」でもお伝えした通り、だからといって必ず融資を受けられるとは限りません。資金繰りに奔走して疲れ切っている経営者は、ここで心が折れてしまい、倒産を選んでしまうことも少なくないのです。
元銀行員が語るシリーズ第二弾の今回は、資金繰りがうまくいっていない会社・経営者の特徴や資金繰りで心が疲れ切り、最終的に倒産まで追い込まれたケースを元銀行員の方へへインタビュー。資金繰りに奔走し疲れ切っている方や「倒産」という言葉が頭によぎり始めている方に向けて、銀行目線での倒産を防ぐために経営者がすべきことなどを、赤裸々に語ってもらいました。
本日はよろしくお願いいたします。
聞き手
元銀行員
よろしくお願いいたします。
前回の記事で「銀行も銀行は皆さまの会社と同じ、営利企業で、損をし続けると銀行も潰れてしまうから限られた企業しか救うつもりはないし、救えません」とお話しされていましたね。
聞き手
元銀行員
そうです。金融機関は皆さまからの「預金」を原資として、融資という名の「投資」を行い、利益を得ています。ですから、「この投資は利益が出るのか?」と投資予定企業の世評や確実な実績、企業関係者の親族の属性や資産状況などをいろんな角度から判断し、融資するかどうかを決めているのです。つまり預金取引をたくさんしていたからといって、銀行はそのお客さまを融資の優先先とは簡単に判断しません。
経営者自らが動き始める会社は、資金繰りがうまくいっていない
資金繰りが悪化している会社は、社内だけでなく銀行から見ても分かるようです。
銀行員時代に様々な会社と取引されてきたかと思うのですが、どうして資金繰りがうまくいっていないことがわかるのでしょうか?
聞き手
元銀行員
今までは銀行が会社へお伺いしていたのに、経営者自らが銀行に来るようになるので分かります。 他にも、口座決済率が90%以下になっているり、 家族の口座の動きが頻繁になっていると「資金繰りがうまくいっていないのだな」と思いますね。
資金繰りがうまくいっていない会社内では、どういった変化が起きているのでしょうか?
聞き手
元銀行員
経営者自らが動くことが多くなるので、社内はバタバタとしているでしょうね。金融機関やグループ会社からの電話、郵送物も増えるでしょう。 経営者と役員の会議も多くなり、会議室から「大きな声」が聞こえてくることも……。 従業員もどんどん辞めていくので、経営者自身が現場に出ることも増えていきます。すごく人の目を気にするようにもなりますね。
資金繰りが悪化して疲れ、倒産まで追い込まれる経営者の特徴
様々な経営者と日々接する、銀行員。これまで資金繰りがうまくいかず、ストレスで心が疲れきり、倒産に追い込まれた経営者にはどんな特徴があったのかを聞いてみました。
出会ってから倒産が分かるまで、最短だとどのくらいだったのですか?
聞き手
元銀行員
私が最初の窓口となり本部から倒産通知がくるまで、多くのフィルターを通るのでかなりの時間を要しますが、最初の面談時から3カ月未満が最速だった覚えがあります。
そこまで資金繰りがうまくいかず、銀行へ相談に来られた時の経営者はどんな様子でしたか?
聞き手
元銀行員
「銀行に相談に行ける余力がある」と信じておられるので、希望に満ち溢れた様子で相談に来られます。
希望に満ち溢れているのは意外ですね。そこからどのように変わっていくのですか?
聞き手
元銀行員
口座の決済率を述べた辺りから、視線が合わなくなりますね。長い間、自然とです。
これまで数々の破産者、経営破綻する会社を見てきた中で、やはり目力が弱くなった方は姿をくらます準備を始めます。数カ月後には、 「不渡り手形通知」が届き、その処理をすることも多々ありました。専用の赤い付箋を、不渡り手形の現物にその付箋を付けながら「やっぱりね」とこぼしたことを覚えています。
資金繰りのストレスで心が疲れ切り、倒産まで追い込まれる経営者かどうかを見極めるポイントは「目」なのですね。
聞き手
元銀行員
「目」は、私の中のひとつのポイントです。
そもそも経営者が「疲れ」を見せては、その企業の成長、従業員の協力は得られないと私は考えています。
疲れを見せるなら、「心の楽さ」と求めるなら、もっと早くに経営者というトップの立場から降りるべきでしょう。
資金繰りに疲れた経営者が倒産を防ぐためにすべきこと
相談に行った銀行から色好い返事をもらえず、精神的に疲れ、倒産へと追い込まれていく経営者。この状況に至るまでに何か手立てはなかったのでしょうか?
銀行員時代にここまで挙げたような倒産する経営者を、率直にどう見ていましたか?
聞き手
元銀行員
「この方が本気で取り組めなかった結果」と思う一方、「この方を本気で救える方が誰もいなかったのか」と冷静に見ていました。
目の前に、資金繰りに疲れ切って倒産への道を歩みかけている経営者がいたら、どんなアドバイスをしますか?
聞き手
元銀行員
未然に防ぐ施策を打ちましょう、ですね。
例えば
支払うべきものは、再優先して期日までに支払いましょう。
先延ばししては、そのあとも先延ばしする癖がつきます。
そして、取引先と本気の折衝を重ねましょう。事業計画書作成にあたる本気度も大切となってきます。
倒産を未然に防ぐ施策に、本気で取り組むことが重要なのですね。
聞き手
元銀行員
あとは、経営者という立場を勘違いしないことです。
経営者の家族も勘違いしてはいけません。
「良い時代に、地に足をどれだけしっかりと付けられるのか」が重要であり、分かれ道でもあります。親からもらった事業でも同様です。
資金繰りに疲れた経営者こそ、現状把握が必須
ですが、倒産を未然に防ぐ施策に本気で取り組むべきなのは経営者自身が一番分かっていそうなもの。にもかかわらず、できていない理由を分析してもらいました。
倒産を未然に防ぐ施策に本気で取り組むべきなのは、経営者は既に知っているのではないでしょうか? それでも出来ていない人が多いのはなぜだと思いますか?
聞き手
元銀行員
まずは、甘さです。どこかに甘い考えがあり、会社の課題に眠れぬくらいに向き合い、取り組まなかったからでしょう。夢に出てくるほど考え、その考えをキーマンとなる人物に振り、共に行動できていなかったのではないでしょうか。
あとは、単に実力不足です。
ただ、どんなに上手くいっている事業でも時代や世界・日本経済を取り巻く環境に勝つのは難しいので、一概には言えませんが。
会社だけでなく、時代や経済を取り巻く環境についても考慮しなければならないのが経営者なのですね。
聞き手
元銀行員
そのために、現状をしっかりと知ってもらう必要があります。
私のところへ来られた方には現状をリアルな言葉で伝え、訴え、お互いに「本当の姿」を認識することを大切にしています。
確かに現状を把握しないことには、資金繰りに奔走するばかりで疲れてしまい、対策を考えることもできませんね。
聞き手
元銀行員
本来は「困っている方の力になりたい」などの綺麗事を語る方が良いのかもしれません。
ただ、現実にはきれいごとでは済まないことが溢れています。
ですから、しっかりと現状把握をして見えてくるものから、本当の施策を共に考え、本気で共に立て直していくことを心に、今の仕事に取り組んでいます。
資金繰りに疲れ、銀行からの融資も受けられずに一人で悩んでしまうと「倒産」しか考えられなくなるかもしれません。ですが、それはこれまで本気で取り組んでいないからであって、ピンチな状態であることに気づいた今から本気で取り組めばまだ可能性はあるように思いました。今回も貴重な話をありがとうございました。
聞き手
彼女が出会ってきた経営者のように、今まさに「融資してもらえるのでは?」と銀行へ行き、経営状況が危機に瀕している現実を知って諦めかけている方もおられるでしょう。ですが、本気で倒産を防ぐ施策に尽力してからでも遅くはありません。
赤字企業再生支援センターは、企業経営を知り尽くした精鋭スタッフが在籍。今発生しているお金の問題だけでなく、その先の会社再生まで二人三脚でサポートいたします。
また相談内容によっては最大3,000万円までの出資も行っておりますので、倒産を防ぎたい・資金繰りを改善したいとお考えの方は本気で立て直しの施策を考える赤字企業再生支援センターまで一度ご相談ください。
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。