2024年09月26日
銀行から会社への融資を断られることは、経営者や企業にとって大きな痛手になります。しかし企業向けの融資は銀行以外にも、ノンバンク融資利用やファクタリング、あるいは日本政策金融公庫などの公的機関を活用するといった方法もあります。(日本政策金融公庫は、特に中小企業や個人事業主に向けた支援機関で、柔軟な融資条件を提供しています。)
また、経営や事業再生の専門家に相談することで、より良い経営改善の方法を見つけることができるでしょう。
本記事では銀行から融資を断られたときの対処法について、具体的な解決策を詳しく解説します。
銀行が融資を断る会社とは?
どんな会社が銀行から融資を断られるのか?まずは銀行の融資基準、融資に落ちる会社の特徴、融資の審査に落ちた場合にどうなるのかについて見ていきましょう。
審査基準から見る銀行の基本姿勢
銀行などの金融機関が法人融資を審査する際には、企業の財務状況や将来性についてシビアに分析が行われます。主な審査基準として、以下の3点が挙げられます。
資金の使い道の妥当性
融資をした資金が、事業の成長や持続可能な目的に使用されるかを判断する。
返済能力の有無
企業が計画通りに返済できるかどうかを判断する。
企業の体力・持続性
融資期間中に企業が倒産するリスクがないかを見極める。
1.資金の使い道の妥当性
銀行は融資を行う際、その資金の使い道が具体的かつ妥当であることを重視します。たとえば設備投資や事業拡大のための資金調達であれば、経営戦略と資金計画がリンクしているかが重要です。
2.返済能力の有無
返済能力については企業の過去の収益やキャッシュフロー、負債比率を細かく分析し、企業が無理なく返済できるかを確認します。
3.企業の体力・持続性
企業の長期的な存続可能性も重要なポイントです。特に中小企業やスタートアップに対しては、経営者の経験や事業の持続性が問われます。融資期間中に倒産するリスクを回避するため、事業計画の堅実さや市場環境も慎重に判断されます。
融資審査に落ちる会社は財務状況に問題アリ
融資の審査に落ちる企業の多くは財務状況に問題があるようです。たとえば資金繰りが厳しくなり支払いや返済が滞りがちになっているケース、債務超過が続いているケースなどに該当する場合、銀行は融資に対して慎重になります。
また、過去の融資での返済遅延や信用格付けの低下なども審査の通過を妨げる要因といえます。経営者は財務状況を健全に保つため、定期的な収支見直しとキャッシュフロー管理を行う必要があります。
手を尽くしても事業立て直しの解決ができない場合は?
資金繰り改善を試み、再度銀行に融資を申し込んだりして手を尽くしたのにもかかわらず審査に通らない場合は、他の手段を検討する必要があります。また、このような状況に直面した場合は一時的な資金繰りの改善だけでなく、根本的な事業戦略の見直しが必要です。事業再生の専門家への相談も検討してみましょう。
記事後半「銀行からの融資を断られた際のその他の対処法」で銀行からの融資を断られた際の対処法について詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
銀行が融資をしない会社の5つの特徴
銀行が融資をしない、または慎重な姿勢を取る会社に多い特徴として、以下の5つをご紹介します。
- 赤字続きで財務状況が不安定
- 資金繰りが悪い
- 事業計画が明確ではない
- 信用リスクが高く信頼性がない
- 面接が上手くいかなかった
融資がなかなか受けられないとお悩みの経営者の方は該当するポイントがないかチェックしてみても良いかもしれません。
①赤字続きで財務状況が不安定
銀行が融資を行う際、最も重要視するのは「確実に返済できるかどうか」です。そのため、赤字が続いている企業は特に審査が厳しくなる傾向にあります。
企業が赤字でかつ財務状況が不安定な場合は返済能力に疑問を抱かれやすく、融資を断られる可能性が高まります。
銀行は企業の財務状況を詳細にチェックし、収益率や事業の将来性、資金繰りの健全性などを融資可否の判断材料にします。
節税を目的にあえて赤字を計上しているケースもありますが、利益が出ず赤字が続いている場合は将来の利益計画や事業の再建策を明確に提示しない限り、信用を取り戻すことは難しいでしょう。
②資金繰りが悪い
資金繰りが悪いと日々の運転資金の調達や従業員への給与支払いに困難を生じるため、銀行はその企業を信用しづらくなります。特に月次のキャッシュフローが安定していない企業は、急な支払い遅延や倒産リスクを抱える可能性があるとみなされます。そのため、銀行は融資を行う際に、過去の支払い履歴や取引先との関係性、さらには未払金の状況などを厳しく審査します。
資金繰りを改善するためには、無駄な経費を削減し、売掛金の回収を早めるなど、日々のキャッシュフローを改善することが必要です 。
③事業計画が明確ではない
融資を受ける際に提出する事業計画書は銀行にとって重要な判断材料となります。事業計画が不明確である、実現性が低いと判断された場合、銀行は融資を断ることがあります。
銀行は事業の将来性や収益性だけでなく、その計画が現実的に達成可能かどうかを慎重に判断します。特に収益予測が不確かで具体的な行動計画が示されていないと、返済能力に疑問を持たれることが多いです。
そのため、融資申請時には、事業の進行状況、市場調査、競合分析、具体的な売上目標など、細部にいたるまでしっかりと作り込んだ計画書を作成しましょう。曖昧な計画ではなく明確で現実的なビジョンを示すことで、融資の承認が期待できます。
④信用リスクが高く信頼性がない
企業や経営者自身の信用リスクが高い場合、銀行は融資を断る傾向にあります。たとえば過去の融資で返済が遅延した、税金や社会保険料を滞納したなどの履歴がある場合、信用情報にマイナスの影響を与えます。
また、社会的にネガティブな評判や噂が広がっている企業も、銀行の審査において不利になることがあります。銀行は融資先の信用判断を高めるために、企業の財務諸表だけでなく、業界での評判や取引先の信頼度も確認します。
経営者や企業が公的機関や取引先から高く評価されている場合は融資の可能性が高まる一方、信用リスクがある場合、銀行は融資のリスクを避けるために慎重な判断を下すケースが多いようです。
⑤面接が上手くいかなかった
銀行の融資審査では書類審査だけでなく、経営者との面接も大切な判断材料となります。面接でしっかりと事業のビジョンや返済計画をアピールできなかった場合、融資を断られる可能性があります。
銀行は経営者の言動や態度、事業に対する姿勢や信頼感に注意を払っています。面接時に事業計画が曖昧だったり、返済に対する具体的な説明が不十分だったりすると、銀行側は事業の継続に不安を感じて融資を避ける傾向があります。
反対にしっかりとした説明と自信を持った対応をすることで、経営者に対する信頼感が高まり、融資審査が通りやすくなることもあります。書類やデータ、履歴だけでなく、経営者の姿勢やコミュニケーション能力も、融資審査における重要な要素なのです。
銀行から融資を断られたときの3つのステップ
銀行から融資を断られた場合、まずは冷静に状況を把握し次のステップに進むための準備をしましょう。融資を断られる原因は、先ほどもご紹介したようにさまざまな理由が考えられます。経営者としてそれらを把握した上で改善策を講じ、次の融資申請に備えましょう。
ここからは融資を断られた際に取るべき3つのステップについて解説します。
1.原因把握と改善策の検討
融資が断られるのは財務状況の不安定さや事業計画の不明確さなど、さまざまな要因が考えられます。審査に通らなかった場合、むやみに申請を繰り返すのではなく、まずは提出した書類などを細部まで再確認し、原因をしっかりと探り、明確な改善策を講じることが重要です。具体的な方法として、以下の4つが考えられます。
①現状の借り入れを把握しておく
融資が断られる大きな要因のひとつとして、既存の借り入れが過多になっている、あるいは銀行側から返済能力への疑問がもたれるといったことがあります。そのため、現在の借り入れ状況を正確に把握し、返済能力を証明できる準備を万全にしておくことが重要です。
具体的には、借入金の残高や返済スケジュールを確認する、これ以上の借り入れが可能かどうかを見極めるなどの対策が挙げられます。
銀行は借入金の負担が大きい企業に対して融資を渋る傾向があるため、自社の財務状況をしっかりと把握し、借入状況が健全であることを証明できるようにしておきましょう。
②事業計画書を見直す
事業計画書は銀行が融資の可否を判断する際に重要な資料です。融資が断られた場合は事業計画書が適切でなかったか、計画が実現可能と判断されなかった可能性があります。
事業計画書には明確な収益予測、実現可能なビジネス戦略、詳細な市場調査などが求められます。見直しの際には、計画の実現性が高いと判断されるように弱点や曖昧な部分を補強しましょう。事業計画をより現実的で具体的なものにすれば、次の融資申請での成功率が高まります 。
③未対応の返済や支払いを完全に済ませる
未払金や遅延した支払いがあると信用情報に悪影響を及ぼし、銀行からの融資が通らない大きな要因となります。
特に税金や社会保険料の滞納がある場合、信用力が大幅に低下します。融資申請を行う前に、すべての未払金や滞納を解消しておきましょう。未対応の支払いを完了することで銀行側に健全な経営状況を示すことができ、融資審査においてもポジティブな印象の付与が期待できます。
また、以降の支払いスケジュールを厳守することで、さらなる信用力向上につながります。
④面接の準備を念入りにする
融資審査においては面接での対応は書類審査と同様に重要な要素です。銀行は面接を通じて経営者のビジョンや事業に対する情熱、そして返済に対する姿勢を確認します。事前に十分な準備を行い、自社の強みや事業の将来性を的確にアピールすることが求められます。
事業計画書をもとにしっかりと説明し、自信を持って返済計画や将来の展望を伝えることで、面接の成功率が高まります。融資面接が初めて、融資面接が苦手という方は無理に自分ひとりで何とかしようとするよりも、専門家による面接対策サポートを受けたほうが改善すべき点が見つけやすくなるでしょう。
2.金融機関への再アプローチをする
一度融資を断られたからといって、すぐに諦める必要はありません。銀行や金融機関に再アプローチを行うことができます。ただ、それにはタイミングが重要です。各金融機関には融資拒否の履歴が一定期間残るので、断られた直後に再申請を行っても結果は変わりにくいです。
再チャレンジまで最低でも3〜6ヶ月は待つことが推奨されます。この間に財務状況の改善や事業計画書の見直し、未払金の処理などの対策を実施し、次の申請に向けた準備を整えましょう。
また、銀行の融資担当者と直接対話し前回の審査でのマイナスポイントや審査に関するアドバイスを受けることで再挑戦時の成功確率が上がることがあります。
3.第三者の専門家に相談するメリット
銀行からの融資を断られた際には事業再生の専門家に相談することをおすすめします。専門家のちからを借りることで、以下のようなメリットが得られます。
客観的な問題の指摘
自社では気づきにくい経営や財務上の問題を、第三者の視点で指摘してもらえます。
再建計画のアドバイス
専門家は事業再生や資金繰りの改善に向けた具体的なアドバイスを提供してくれます。
金融機関との交渉力強化
コンサルタントの支援により金融機関との交渉がスムーズになり、再融資の可能性を高めます。
これらのメリットにより、効率のよい融資対策を講じることができます。
銀行からの融資を断られた際のその他の対処法
銀行からの融資を断られた際、銀行への融資再申し込み以外にも有効な対処法があります。
ここからはノンバンクでの借入、既存融資のリスケ、ファクタリング、事業再生のプロへ相談という4つの方法について詳しく解説します。
銀行からの融資が難しいと感じられている場合は、ぜひ参考にしてください。また、資金繰りが厳しいと感じたときの対策方法については、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
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ノンバンクで借り入れを行う
ノンバンクとは、預金業務を行わずに融資を提供する銀行以外の企業を指します。たとえば法人用の事業用ローン、消費者金融の法人用サービス、信販会社のローン、不動産金融専門会社などがあります。
銀行からの融資が難しい場合、ノンバンクを利用して資金を調達することも一つの手段です。ノンバンクの特徴として、審査が比較的柔軟であるため、中小企業や個人事業主でも利用しやすいとされています。ただし、ノンバンクでの借り入れには注意も必要です。銀行融資に比べて金利が高めに設定されているため、返済負担が増える可能性があります。また、審査基準が緩い分、返済の延滞や未払いが発生した場合、信用情報に大きな影響を与えるリスクもあります。
ノンバンクからの借り入れを検討する際には、資金の使途と返済計画をしっかり立て、慎重に判断しましょう。
実現可能なリスケジュールプランを用いる
追加の融資が難しい場合、現在借り入れている資金の返済スケジュールを見直して変更する、いわゆる「リスケジュール」を行うことも一つの選択肢です。
リスケジュールとは返済期限の延長や返済額の減額を交渉など融資の返済条件を変更する行為全般を指し、資金繰りを改善する方法としてはよくとられます。
この対処法を利用する場合、貸し手である金融機関との信頼関係をしっかりと構築することが非常に重要です。また、リスケジュールの期間は、金融機関にもよりますが最長でも1年程度であることが多いので、経営改善の成果を短期間で出さなければならない点には注意しましょう。
リスケジュールの申請をする前に、経営改善計画書を策定し具体的な返済プランを提示できるよう事前準備を入念に行いましょう。リスケジュールに関しては以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
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ファクタリングを利用する
ファクタリングとは、売掛金を早期に現金化する資金調達の手段であり、銀行からの融資が難しい場合にも活用できる手法です。ファクタリングは融資とは異なり売掛金の譲渡によって資金を調達するため、返済義務が生じません。融資と比較して資金繰りをスピーディーに改善できるメリットがあります。
その一方で、ファクタリングには注意すべき点もあります。
手数料
手数料が比較的高く設定されているため、実際に得られる金額が少なくなることがあります。
業者間のトラブル
信頼できるファクタリング会社を選ばないと、悪質な業者によるトラブルに巻き込まれるリスクも存在します。
ファクタリングを利用する際にはリスクとメリットをよく理解し、慎重に判断することが重要です。ファクタリングは一時的な資金調達としては有効ですが、長期的な経営改善には適さない方法でもあるため、総合的な視点で検討しましょう。
事業再生のプロに資金調達の相談をする
銀行からの融資が断られた場合、事業再生のプロや事業再生系コンサルティングファームに相談することも有効な手段です。事業再生の専門家は資金繰りの改善や新たな資金調達の方法を提案してくれるだけでなく、経営全体の見直しを通じて業績を回復させるためのサポートを行います。
さらに、適切なアドバイスを受けることで黒字化への道が開け、再び金融機関からの信頼を得られ、経営の健全化につながる可能性も高まります。
専門家に相談することで、資金調達だけでなく会社の未来を再構築するチャンスを得ることができると言えるでしょう。
資金調達も難しい場合は事業再生する道も
もし、どの金融機関に申請しても融資が通らず資金調達が困難な状況に陥った場合、事業再生を検討することも一つの選択肢です。事業再生とは経営改善のプロセスを通じて、経営を再構築し、会社を再生させることを目的とした取り組みです。再生計画を作成し、債権者との交渉を行いながら借入金の返済スケジュールの見直しや事業の整理・再編を進めることで、経営の健全化を目指します。
ただし、事業再生には専門的な知識や経験が必要です。自己判断で進めるのはリスクが高いため、事業再生のプロフェッショナルに相談し、適切なアドバイスを受けながら進めましょう。
資金繰りが厳しい中でも、プロのサポートやコンサルティングを受けることで再建の可能性を高めることが期待できます。
事業再生の方法については以下の記事もご覧ください。
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。