2023年12月13日
貴社の資金繰り、厳しくなっていませんか?このまま放置しておくと大変なことになるかもしれません。この記事では経営の資金繰りが厳しくなり銀行融資の返済ができなくなってしまう要因や対処法について解説します。ぜひ今一度自社の状況を見直してみましょう
銀行融資の返済ができない主な要因
まず認識していただきたいのは資金繰りの問題はどの会社にも起こりうるということです。
経営を継続していく上で、運転資金の確保は必須です。特に中小企業の場合は自己資金のみで運営していくことは難しいため、銀行から融資を受けるのが一般的といえます。そのため、何らかの理由で業績が悪化すれば、たちまち返済ができなくなってしまうリスクも高いのです。
中小企業の経営者にとって、資金繰りの悪化や返済ができなくなる状況に陥ることは決して他人事ではありません。
絶えず急激に変化する世界情勢、市場
日々市場や経済状況、会社の資産状況は変化しています。いくら真面目にビジネスをしていても、いくら良い商品・サービスを顧客に提供していたとしても、外的な要因で業績が悪化してしまうことも大いにありえます。
たとえば1980年代のバブル崩壊、2008年のリーマンショック、最近では2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大の際には、多くの中小企業が倒産あるいは業績が悪化し困窮することになりました。
このように、多くの人が想像すらしていないような危機は突然訪れ、正しく対応しないとすぐに不況の波に巻き込まれてしまうのです。
新たな収益を見込んだ新規事業が失敗
新規事業も大きな分岐点となり得ます。成功すれば莫大な利益が入り、会社の規模を拡大できるようになるかもしれません。しかし、もちろん失敗するリスクもあります。
見通しが甘いと資金繰りが厳しい状態となり、収益は出ない、銀行融資も返済できないという事態に陥ってしまいかねません。最悪の場合、投資したお金はすべて損失になり、借金だけが残るという結末になります。
取引先の倒産
中小企業では取引先も業績に大きな影響を及ぼします。1社しか取引していない場合、仮にその取引先が突然倒産した、あるいは契約を他社に移されたら売上がなくなってしまいます。そうすれば銀行融資の返済はたちまちできなくなってしまうでしょう。
売上を一つの取引先のみに依存するのは非常に危険です。可能な限り新規開拓をして複数社と取引を行い、リスクを分散しましょう。
放漫な財務管理
売上が順調に延びていたとしても銀行融資が返済できなくなってしまう状況に陥るケースがあります。その要因は放漫な財政管理です。お金の流れ(日々の出入金など)を把握しておき、適切な管理が行われていれば、資金繰りが悪化することはありません。どんぶり勘定で経費を使いたいように使っている、お金の流れが把握できていないとなると、いくら売上があっても業績は悪化してしまいます。
その場しのぎで借り入れをしていれば負債が雪だるま式に膨れ上がり、やがて融資の返済が困難になってしまうのです。
事業フェーズごとのポイント
フェーズ | 経営者の状況 | 事業の状況、ポイント | 考えられる資金調達方法 |
---|---|---|---|
創業期 | ・相談先を持たない孤立状態 ・学生起業家 ・新規事業で業界に精通していない ・トップダウン |
・事業を0から1にする時期 ・社員数は10人以下の場合が多い ・1人あたりの仕事量が多い ・事業の安定性や信用もないため、資金調達もしづらい ・多くのコストをかけられないフェーズ ・状況次第では事業内容の見直しが必要 ・4つのフェーズの中で倒産する確率が一番高い時期 |
・知人、友人からの借入 ・日本政策金融公庫からの融資 ・個人投資家からの出資 ・クラウドファンディング |
成長期 | ・トップダウン ・ボトムアップ ・業界に精通していく ・パートナーの獲得 |
・収益や認知度アップによる顧客が増えていく時期 ・成長を促すために投資をして事業を拡大 ・資金調達もしやすくなり、より認知度アップのために マーケティング、人材確保にも資金を使える。 ・確保、認知度アップによる新規顧客やリピーター獲得、実績作りによる信用度アップ、売上規模の拡大を目指す。 |
・金融機関からの融資 ・助成金、補助金 ・投資家(VC)からの投資事業会社からの出資 |
成熟期 | ・業界において信用得る ・業界内に多くの知人を抱える ・二、三代目への経営切り替わり直後 |
・成熟期はM&Aへ乗り出す企業が増える。 ・自社が市場でより高いシェアを獲得するため、新規市場開拓、他社技術の取り込みなど |
・金融機関からの折り返し融資、プロパー融資 |
衰退期 | ・余力がなくなり逼迫した状態へ ・孤立した経営に逆戻り ・二、三代目への経営切り替わり後 |
・衰退期は、大きな社会的変化がない限り、ジワジワと 衰退していく。 ・気づいたら倒産も少なくない。 ・収益が低下している事業に高い投資価値がないと判断 すれば、早々に事業撤退を考える。 ・必要によっては事業譲渡 |
・金融機関からの融資(リスケを含む金融支援) ・銀行以外からの調達 ・事業譲渡 |
銀行の融資が返済できなくなった場合、まずは運転資金を調達しなければなりません。資金調達の方法は事業フェーズごとに異なります。「創業期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのなかで、自社が今どのフェーズにいるかを認識して適切な資金調達法を考えてみましょう。
銀行からの融資が返済できないと何が起こる?
銀行の融資が返済できない場合、どのようなことが起こるのでしょうか?ここからは返済が遅れてから滞納し続けてしまった場合に迎える結末までを見ていきましょう。
支払いの督促連絡
返済が遅れてしまった場合、まずは銀行から督促が入ります。書面で督促されることもあれば、担当者から「お支払いをお忘れではありませんか?○日までに返済をお願いします」というように電話がかかってくることもあります。
再請求日が示された書面が届く
上記の督促状や電話で指定された期日までに返済ができないと、金額や再請求日などが記されているハガキや書面が届きます。通知が届くタイミングは銀行によって異なります。
遅延損害金が発生
銀行融資の返済が滞った場合、延滞損害金の支払いが求められます。利息とはまったく別物で、返済が遅れたことによって生じた損害を賠償する意味合いがあります。年利14~20%程度が相場で、本来返済すべき金額とは別に支払わなければなりません。
保証会社からの請求
借入時に保証会社や保証機関と契約している場合、滞納が継続していると債務者の代わりに保証会社や保証機関が銀行に対して返済を行います。これを代位弁済と言います。返済を肩代わりしてくれるからといって安心してはいけません。債権は保証会社や保証機関に移り、一括返済を求められることになりますので、注意が必要です。
連帯保証人に支払い義務が発生
保証人や連帯保証人をつけている場合、債務者が銀行融資の返済を滞納した際には保証人や連帯保証人に督促が入り、返済を肩代わりしなければなりません。たとえば親が保証人になっているのであれば、親が借金を返さなければならないことになってしまうのです。滞納してから2ヶ月ほど経過した頃に保証人に連絡が入るケースが多いようです。
債権を回収する会社からの連絡
銀行融資が返済できないでいると債権回収業者から連絡が入ることがあります。債権回収業者とは銀行から債権を買い取って債務者から取り立てを行う業者です。法務大臣から営業許可を受けており法律に則った厳正な業務が実施されるので強引な取り立てなどはあまり心配する必要はありませんが、融資を返済しなければならないことには変わりありません。
担保を失う
銀行から借り入れをする際に土地や建物などの不動産を担保として差し入れた場合、返済ができなくなった際には担保を失う可能性があります。設定していた抵当権が実行され、不動産を売却したお金で弁済することになるのです。
担保を差し入れなかった場合でも、滞納が続いていると銀行が裁判所に申し立てを行います。裁判所から一括返済するよう命令が下され、それに応じないと預貯金などの資産が差し押さえられてしまうのです。おおよそ滞納してから3ヶ月経過した以降に担保や資産の差し押さえが行われますので、それまでになんとしてでも返済しましょう。
破産手続き
銀行融資の返済ができなくなるとなると、いよいよ破産を余儀なくされます。一般的に「破産=会社がつぶれる」というイメージがあるかと思いますが、実際には破産手続きや特別清算手続きをして、債務を可能な限り履行するというのが流れです。その後、民事再生や会社更生といった手続きを経て会社の存続・再建を目指します。
財産の差し押さえ
保証会社や保証機関、債権回収業者からの一括返済に応じることができない場合、裁判所によって預貯金や家財、有価証券、不動産などの財産の差し押さえがされます。お金に替えることができる財産はほとんど処分されて債権者の弁済に充てられるため、家やこれまでの蓄えを失ってしまうことにもなりかねません。
銀行への融資が返済できないかもしれないと感じた時には
銀行の融資を滞納し続ければやがて取り返しがつかない事態に陥ってしまいます。そうなってしまう前に、返済ができないと感じたら以下でご紹介するポイントを踏まえ、すぐに資金繰りを見直しましょう。
資金繰りの見通しを立て借入状況、返済条件を確認
まずは以下の事柄を確認してください。
- ・借入している銀行・金融機関
- ・借入残高
- ・信用保証協会などの保証や代表者以外の連帯保証人の有無
- ・毎月の元金返済額と利息支払額
借入残高は取引口ごとに把握しましょう。元金返済額と利息支払額は「毎月いくらになるのか?」あるいは「何月からいくらになるのか?」を正確に把握しておくことが重要です。
リスケジュール(返済を猶予してもらうこと)を行う場合は、銀行だけでなく保証機関からの承諾も必要となるため、必ず信用保証協会などからの保証を受けているのかを確認しましょう。信用保証協会の保証枠が残っているかどうかでリファイナンス(借り換え)の可否も変わってきます。
銀行からの融資に返済ができない際の対処法
銀行融資が返済できないと感じた場合でも、まだ手立てはあるので諦めないでください。以下で対処法をご紹介します。
できる限りはやく金融機関に相談する
まずは銀行融資が返済できないと見込んだ時点でなるべく早く銀行に連絡を入れましょう。誠心誠意詳しい事情を説明し、今後どうすべきかを担当者と相談します。主に追加融資、リスケジュールのいずれかで対応することになるかと思います。
相談しづらいという気持ちはわかりますが、そのまま延滞するのは一番の悪手です。
追加融資の相談をする
まずとれる手段としては追加融資を受けるということです。新たに借り入れをすれば当面の運転資金は賄えます。ただし、今までの元金に加え追加融資分の返済も加わるため、毎月の返済額が増えてしまうことには要注意です。また、追加融資を断られた場合は資本金を増資する、補助金を申請する、受取手形を現金化するといった方法で資金を調達することもできます。
リスケジュールの相談をする
リスケジュールとは融資の返済条件を変更してもらうことです。銀行の担当者と交渉して返済期間の延長や毎月の支払額の軽減に応じてもらいます。銀行としても貸し倒れを防ぐために、こうしたリスケジュールに応じてくれる場合があるのです。特に2代目、3代目の会社は歴史が長く実績があるため、リスケジュールに応じてくれる可能性が高い傾向があります。
リスケジュールに応じてもらうためには、経営改善計画を提出し、今後の見通しや返済の確実性を説明し、担当者に「リスケをしたほうが貸し倒れのリスクが低い」と判断してもらう必要があります。
ただし、リスケジュールの期間中はリスケジュールに応じた銀行からの追加融資は期待できません。また、「信用保証協会付き」の借り入れをリスケジュールする場合、借入実行時に「借入金額と返済期間」の割合で算出された信用保証料を追加で支払わなければなりません。保証料は「融資実行時に支払っていた保証料-リスケ後に発生する保証料」という数式で求められます。
こうした注意点も認識した上でリスケジュールを交渉するかどうかを判断しましょう。
借り換えを検討する(リファイナンス)
リスケジュールは信用が低下し、追加融資が受けられなくなってしまうおそれもあるため、最終手段として考えておくのが無難です。可能な限り借入金の組み換えや借り換えを行うリファイナンスを選択されることをおすすめします。リファイナンスであれば自身の信用が傷つくことはありません。
最も重要なのは返済期間をなるべく長くすることです。返済期間が長ければ長いほど、毎月の返済額が抑えられます。その間に資金繰りが改善できれば、事業を立て直せる可能性が高まります。
融資以外で資金調達する
融資以外の方法でも資金調達は可能です。たとえば売掛債権を売却してその対価を得るファクタリングという方法が挙げられます。売掛金が入金されていないことが原因で資金繰りが悪化したケースなどではファクタリングで当面の運転資金を確保して立て直すことも可能です。
インターネット上で一般人に出資を募るクラウドファンディングという手段もあります。時間はかかりますが、負債を増やすことなく運転資金を集めることが可能です。ただし、リターンを用意しなければならない点と商品やサービスに魅力がないとなかなか出資が集まらない点がネックといえます。
他にも投資家やベンチャーキャピタルからの出資を受けるのも手段の1つです。
忘れてはならない!税金、保険料の免除申請
会社の業績が悪化している状況では、経営者やそのご家族の税金や保険料の支払いも相当厳しい状態になっているはずです。生活に困窮している場合、税務署や自治体、社会保険事務所に申請を行って支払いの猶予や免除をしてもらうことも可能です。
ただし、手続きに時間がかかることと、措置を受ける条件があることには注意しましょう。税金や社会保険料を滞納すると個人の信用毀損につながる、将来社会保障が受けられなくなるなど代償も大きいため、早めに検討されることをおすすめします。
税金、保険料の種類 | 内容 |
---|---|
国税 | 原則1年間の納税が猶予 猶予中の延滞税が軽減 (通常年8.7%が年0.9%に) 財産の差し押さえおよび換価の猶予 |
市県民税 | 各自治体により異なる |
国民年金保険料 | 免除:申請が受理された月から2年1カ月前まで 条件:一定以上の所得や収入の減少 |
会社を守り、資金繰りを整え、建て直しをはかる!
銀行への返済ができなくなってしまったとき、あるいは難しいと感じたときは、まずは以上のような対策を行い、会社を倒産させないことを最優先に考えましょう。資金繰りを改善し、「守り」の部分を固めることで、今後の事業の継続や会社の立て直しにつながります。
また、採算が採れない事業は第三者に譲渡してしまうのも手です。赤字の事業でもいい人材や設備が揃っていれば事業を引き受けてくれる経営者が現れる可能性も十分にあります。事業や会社全体の最適化を考慮し、それにマッチした後継者にバトンタッチしましょう。
まとめ
銀行融資の返済ができなくなったとしても、決して諦めないでください。まだ手立ては残されています。破産はすべてやりきった後の最終手段です。
返済が厳しい、倒産するかもしれないと感じられている経営者の方は、東京事業再生コンサルティングセンターへご相談ください。弊社はこれまでも破産寸前の中小企業を優良黒字企業へとV字回復に導いてきた実績がございます。元銀行員のスタッフも在籍し、お金の面でのサポートも得意としています。資金繰りを改善し、立て直し、黒字化までを一貫してお手伝いしますので、もう一度事業再生を目指してみませんか?
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。