2019年07月12日
赤字続きでも倒産の不安なし!とあるIT企業の「資金ショート対策術」とは
東京商工リサーチが2019年2月に発表した「2018年『倒産企業の財務データ分析』調査」において、驚くべき調査結果が報告されています。2018年に倒産した企業のうち、赤字だった企業が52.27%であった一方、黒字にもかかわらず倒産した企業が47.73%も占めていることがわかったのです。倒産した企業の半数近くが「黒字倒産」に追いやられているとは、なんとも信じがたい事実ですね。
黒字にもかかわらず倒産する企業が多い一方で「赤字続きなのに倒産しない企業」も存在することはご存知でしょうか。私たちは、赤字続きでもしっかりと事業継続しているIT企業に単独インタビューを行いました!同社の「資金ショート対策術」は目からウロコが落ちるものばかりです!まずはこちらをご覧ください。
赤字続きでも倒産の不安なし!IT社長の資金ショート対策術
【基本データ】
業態:IT
社員数:30名
財務状況:2018年は通期で赤字を計上。
アプリ制作やシステム開発を行っているA社は、創業以来、右肩上がりで増収・増益を達成してきた。しかし、ここ3年ほどは同業他社が急激に増えている中で、差別化が図りづらくなり売上が低迷するようになってきた。
昨年に至っては、都内への移転や人材採用などが重なった一方、売上が追い付かなかったために、通期で赤字になってしてしまった。
2019年現在も売上は伸び悩んでいるが、社長いわく「倒産の心配はほとんどしていない」という。問い合わせを増やすSEO対策の強化や、新規ビジネスの成果が出つつある一方、「資金繰りの立て直し」の効果も見え始めているからだ。
彼のいう資金繰りの立て直しとは「資金ショートしないキャッシュフロー管理」を行うことを指している。具体的には、以下のようなキャッシュフロー管理を行っているそうだ。
IT社長が徹底しているキャッシュフロー管理
- 毎日、入金・支出のキャッシュフローを徹底管理して、手元資金の状況を常に把握
- クライアントからの入金は当月末締め翌月10日入金でお願いしている
- コーディングなど一部の業務はアウトソーシングしているが、委託業者への支払いは、当月末締め翌々月末10日支払いにしている
- 銀行から受けた融資の返済を「最優先」にして絶対に「不渡り」を出さない
- 支払いの優先順位を明確化している。銀行融資→人件費→外注費→賃料の順序。
いかがでしたでしょうか。売上をUPさせるための計画(問い合わせを増やすSEO対策の強化や、新規ビジネスの計画)を着実に推進している一方、キャッシュフロー管理も徹底することで「手元資金の枯渇」を未然に防いでいるわけです。
そもそも資金ショートを起こす原因とは?
さて、そもそも「資金ショート」とはどういう状態なのかご存知でしょうか。 改めて定義しますと、資金ショートとは「手元資金が枯渇することで、銀行融資の返済や人件費、仕入れ、賃料などの支払いが行えなくなる」状態を指しています。
なぜ資金ショートを起こしてしまうかというと、端的にいえば「入出金のサイクルが悪い」ことが主な原因なのです。
たとえば、オフィスビルの建築・施工を手掛ける建設会社を例にとって考えます。こういった業態の場合、クライアントからの入金は「ビルの建設後」になりがちです。つまりオフィスビルが建つまでの数か月間、「入金ゼロ」の状態が続くわけです。
しかし、日々発生する部材費や人件費の支払いは滞りなく行う必要があるため、手元資金はドンドン枯渇していきます。さらに足りない資金を補おうと銀行から「手形貸付」を受けるものなら、緊張感はさらに増します。6カ月間で2回、不渡りを出すと銀行との取引が停止します。つまり、「事実上の倒産」に追いやられてしまいます。これが、資金ショートを発端にした黒字倒産のよくあるケースです。
大きな売掛金を予定しているからといって、手元資金の管理・把握を怠るのは非常に危険な行為です。経営者の皆さまは、日本における倒産件数のうち約50%が「黒字倒産」であるという事実を十分に理解しておく必要があるでしょう。
資金ショートを起こさないための4つの対策
資金ショートを起こさないためには、売上を増やすための計画の立案・実行と共に、資金繰りの改善を行っていくことが大切です。以下の4つは資金繰りを改善するうえで是非とも取り入れたい代表的な方法です。
「支出の後払い」を交渉する
IT企業の事例にもありましたが「支出の後払い」は資金ショート対策として、真っ先に着手したいことの一つです。たとえば、仕入れ先への支払いは月末締め翌月10日払いにしていたものを、月末締め翌々月10日払いに変更するといったような具合です。ここを見直すだけで、資金繰りが劇的に改善することが少なくありません。支出の後払いは是非とも行いましょう。
ワンポイントアドバイス!オススメの裏ワザ①
「PayPal(ペイパル)による分割支払い」 企業間の取引において、PayPalを導入する企業が増えつつあります。PayPalの分割リボ払いは、最大で月額1万円の支払いを分けることができる支払い方法です。手数料は1回の支払いにつき「2.9%~3.9%+40円」のみ。仮に月額1万円の分割支払いにした場合、1回あたりの手数料は330円程度~というわけです。取引先との交渉に依りますが、有効な手段の一つとして候補に加えてみるのをおすすめします。
「入金の先払い」を依頼する
支出の後払いと同様に、すぐにでも着手したいのが「入金の先払いの依頼」です。手元資金を枯渇させないために、一刻も早い「売掛金の入金」を心がけたいからです。たとえば、今まで月末締め翌々月5日入金だったものを、月末締め翌月10日入金に変更してもらうなどといった具合です。
支出の後払いとセットで行うと、資金繰りが劇的に改善するでしょう。なお、建築会社など入金が数か月先の業態の場合は、20%から30%程度の「着手金」をもらうようにしましょう。そうすると、入金予定日まで滞りなく各種支払いが行えるようになるはずです。
ワンポイントアドバイス!オススメの裏ワザ②
そのほか、入金日よりも前に現金調達ができる「ファクタリング」を用いるのも大変おすすめです。ファクタリングは売掛債権の買取によって行う資金調達方法です。現在では手数料が2%~3%程度のファクタリング事業者も存在しています。入金までのフローが長い企業は是非取り入れてみましょう。
ファクタリングについては当社でも受付可能ですので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。
遊休資産や個人資産の整理
会社が保有している「遊休資産」や、社長が保有している「個人資産」の売却も、手元資金を増やす方法として大変おすすめです。遊休資産とは事業目的で取得したけれど、ほとんど稼働していない資産のことを指します。
遊休資産は土地・建物・工場などの施設だけではなく、その施設内にあるマシンや設備などの機器類も含みます。これらの遊休資産は、減価償却費として計上できないばかりか、固定資産税や事業税の支払いが課せられるものです。手をつけずに放置しているだけなのに、二重・三重に損失を計上しつづけるようなものなのです。
遊休資産を即座に売却してしまうのも手ですが、不動産であれば賃貸物件としてリノベーションしたり、使っていない設備を同業他社に貸し出したりするなど、さまざまな活用法が考えられます。いずれにしても、そのまま放置しておくのではなく、今後の取り扱いについて一刻も早く検討すべきでしょう。
将来予測される入金・支払いのキャッシュフローを予測しておく
キャッシュフロー管理というと、月末に収支を計算して手元資産の多寡を把握するといったイメージがありますが、加えて「将来予想される入出金の把握」も行いたいものです。
たとえば、来年に新卒の人材採用計画があるとして、新卒1人を採用するためにかかるすべての経費(求人広告、教育、研修など)をあらかじめ算出しておくといった具合です。また、将来予定されている売上も同様に算出しておきます。そうすると、資金ショートの危険が高まる「時期の予想」ができるようになるのです。
その結果、「新卒を5人採用する予定だったけど、来年は3人に減らそう」といった判断が行えるようになります。キャッシュフロー管理は、過去・現在・未来の視点をもちながら行っていくのが望ましいでしょう。
それでも手元資金が増えない…!どうにもならないときはどうする?
上記に挙げた4つの方法が、資金ショートを回避する上ですぐさま着手したい対策です。しかしそれでも手元資金がほとんど残らない場合は、以下の3つの方法を実行してみてください。
融資元銀行へリスケを交渉する
銀行から融資を受けている場合、返済計画の見直しを交渉しましょう。具体的には「返済期限の延長」や「返済金額の減額」などといった交渉です。ただし、手形や小切手の支払いは期日通りに必ず行ってください。6カ月間で2回の不渡りを起こすと、銀行との取引が停止し、事実上の「倒産」になってしまうからです。
銀行に掛け合う際には「経営改善計画書」と「資金繰り予測表」を準備して交渉に臨みましょう。リスケ交渉を成功させるうえでは、以下のポイントを押さえて「リスケが妥当な判断である」と納得してもらうことが大切です。リスケ交渉の際には、是非取り入れてみてください。
- どのような経緯で、融資の返済が苦しくなったのか、その「原因」を説明する
- 新たに提示したスケジュールであれば返済が可能な「根拠」を説明する
- どのように返済するのか「具体的な返済方法」を説明する
税金・社会保険料の支払い時期を交渉する
税務署や社会保険事務局などに対して、各種支払いの時期を延長してもらうよう、交渉してみましょう。具体的な方法としては、経営改善計画書や資金繰り表などをもとに、どのような計画で、支払いを行っていくのかを伝えるというものです。この交渉は、先ほど挙げた融資元銀行へのリスケ交渉と同様です。
専門家にキャッシュフローの改善について相談する
経理や財務、経営についてあまり知識がなくて不安だという場合は、専門家にキャッシュフローの見直しを依頼するのもアリです。専門家であれば、資金繰りの改善につながる有益な経営アドバイスを行ってくれる可能性が高いです。
融資も下りない、そんなときに相談する相手は誰?
銀行からの融資も受けられない状況の場合は、経営アドバイスだけではなく実質的な「現金調達」まで任せられる専門家に依頼するのが理想的です。赤字企業再生支援センターでは、経営アドバイスのみならず、最大3000万円までの出資にも対応しています。ピンチに陥った中小企業様の心強い味方になれます!
「黒字倒産」を招く!絶対に避けたい3つの危険行為
資金ショート対策に関するさまざまな方法をご紹介してきましたが、黒字倒産を招きかねない「3つの危険行為」についても理解しておきましょう。
約束手形の不渡りを出す
絶対にやってはいけない危険行為ナンバーワンが「約束手形の不渡りを出す」です。不渡りは性質によって3つの種類があります。
- 0号不渡り:記載間違いや不備などによるもの
- 1号不渡り:当座預金の残高不足によるもの
- 2号不渡り:契約不履行、偽造、詐欺によるもの
このなかで最も多いのが「1号不渡り」です。キャッシュフローの管理ができていないがために起こってしまう不渡りです。「凡ミスだったら許されるんじゃないの?」と思われがちですが、手形交換所からすべての金融機関に対して、不渡りを起こした事実の通告がなされてしまいます。
さらに、6カ月以内に2回目の不渡りを起こすと、2年間もの間、当座預金取引を行ったり融資を受けたりすることができなくなってしまいます。これは「事実上の倒産」を意味します。約束手形の不渡りは絶対に避けましょう。
税金・社会保険料の未払い
基本的に、税金や社会保険料の滞納は認められていません。納付期限後2カ月を経過すると、年間で14.6%もの延滞税が発生します。さらに、滞納を放置し続けると税務署や年金事務所による差し押さえが行われます。
差し押さえは預金や不動産のみならず「売掛金」まで対象になります。これが最も怖いのです。売掛先の企業宛に対して、「○○社の買掛金を教えてください」との通知が届くことがあるため、取引先に資金繰りが苦しい会社なのだと認識されてしまうでしょう。
当然のことながら、信頼関係の破綻を招きますので、税金や社会保険料の未払いは絶対に避けるべきことです。どうしても支払いが苦しそうな場合は、早いタイミングで税務署や社会保険事務局に納付のリスケ相談をしましょう。
闇金・街金に手を出す
いうまでもないですが、闇金や街金に手を出すことも絶対に避けましょう!闇金かどうかの判断ポイントは「利息の上限が15%~20%までにとどまっているか否か」です。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、2006年以前は「グレーゾーン金利」というものが存在していました。「利息制限法」では上限を15%~20%に定めている一方、出資法で刑事罰の対象となる金利上限は29.2%と定められていたのです。
しかし2016年に貸金業法が改正されて上限金利は15%~20%までに統一されました。現在は「グレーゾーン金利」は存在していません。上限金利以上の利息が発生する場合はヤミ金です。絶対に取引しないようにしましょう。
また、街金にも要注意です。街金は、地域密着型で活動する中小規模の消費者金融のことを指します。街金の場合、貸金業法に抵触するようなことはしませんが、最低金利が8~10%程度で、上限金利を18%~20%に設定しているところがほとんどです。金利が高い街金との取引は、経営を苦しめかねませんので、取引しないことをおすすめします。
ピンチのときには「赤字企業再生支援センター」にご連絡ください
いかがでしたでしょうか。資金ショートを起こさないためには、キャッシュフローの改善につながる方法を一つでも多く取り入れていくことが大切です。
それでも手元資金が足りないピンチのときには「赤字企業再生支援センター」にご相談ください。当ファンドには、銀行や証券会社で法人向けの資産運用にたずさわってきた経営アドバイザーほか精鋭のスタッフが、経営改善に導くためのサポートを行っています。また、ご相談内容によっては最大3000万円までの出資も行っております。
資金繰りが苦しくなった際には「経営のプロ」にお任せください。企業様のお力になれる自信があります。いつでもお気軽にご相談ください。
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本コラムの監修者
事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。