2025年11月13日

会社にお金がない理由
「利益は出ているはずなのに、なぜか現金が残らない」「気づいたらお金がなくて苦しい状況になっている」……そんな悩みを抱えられている中小企業経営者は少なくありません。
実は「会社のお金がない」と感じる理由は、単なる赤字や売上不足だけではなく、経営構造や現金の流れに根本的な問題が潜んでいることが多いのです。この記事ではよく見られる資金不足のパターンを整理し、原因を紐解いていきます。
- 在庫が多すぎる
- 回収できない売掛金がある
- 利益率が低い
- 入金と支払いのサイクルがあっていない
- 継続した売上がない
- 多額の返済がある
在庫が多すぎる
売れる見込みのない商品や材料を過剰に仕入れてしまうと、現金が「棚卸資産」いわゆる在庫に変わり、使えるお金が目減りします。在庫は企業の財産である一方、現金化できなければ単なる“お荷物”です。
需要予測や適正在庫管理が適切にできていないと、無駄な仕入れで資金繰りが悪化し、売上があっても手元に現金が残らない状態に陥ります。
回収できない売掛金がある
商品やサービス提供後も気が抜けません。売掛金が回収できないまま残っていると、帳簿上は売上が立っていても、実際の資金は増えません。
売掛先の与信管理や入金確認が甘いと、貸倒れリスクが高まり、最悪の場合は不良債権となって会社のキャッシュフローを直撃します。「売掛回収」は“売上のゴール”と考え、常にチェックしましょう。
利益率が低い
いくら売上が上がっていても、利益率(売上高に対する利益の割合)が低ければ手元にはお金があまり残りません。価格競争やコスト管理の甘さなどが要因で利益率が下がると、毎月の粗利で経費がまかなえず、資金不足に直結します。
安売りに頼る経営や経費をじゃぶじゃぶ使うような体制のままでは、売上拡大を図っても状況は改善しません。利益率の見直しが経営安定の第一歩です。
入金と支払いのサイクルがあっていない
仕入れや外注費などの支払いが先行し、売上代金の入金が後回しになると、一時的に資金ショートが起きやすくなります。特に大口取引や長期案件が多い業種においては、入出金のタイムラグを把握しておかないと、黒字倒産のリスクも高まります。
資金繰り表を用いた“先読み管理”が不可欠です。
継続した売上がない
売上が毎月大きく変動する、もしくは“ドンと入ってパタリと止まる”ようなビジネスモデルの場合、好調な時期に油断するとすぐに資金不足に陥ります。単発受注に依存せず、ストック型収入やリピーターを増やす努力が資金繰りの安定に直結します。安定した売上の継続は、中小企業経営における生命線です。
多額の返済がある
過去の投資や急場しのぎの借入が重なっている、いわゆる多重債務という状態に陥っていると、利益が出ていても返済に追われて手元資金はどんどん減っていきます。特に、複数の金融機関や知人、ノンバンクから同時に返済が発生している場合は危険信号です。
リスケジュールや一本化を検討し、無理のない返済計画を立てることが資金繰り改善のカギです。
重要なのは「現金」を残すこと
企業経営で最も大切なのは、帳簿上の利益よりも「実際に手元にいくら現金が残るか」です。利益があっても、資金回収ができていない、過剰な在庫や無駄な支出で現金が目減りしているという状況では、会社があっという間に立ち行かなくなります。
「現金=会社の血液」です。どんなに業績が好調でも、現金が不足すれば支払いができず、事業は止まってしまいます。現金残高は毎日確認し、資金繰り表を使って数か月先の支払い予定まで見通しておくことが大切です。資金繰り=経営の最優先課題と位置づけ、現金残高の維持に全力を注ぎましょう。
会社にお金がないのは社長のせい?
「会社のお金が足りないのは、すべて社長の責任だ」と自分を責めてしまう経営者もいますが、必ずしもそうではありません。事業環境の悪化や、取引先からの無理な要求、従業員の突然の退職など、社長の努力だけではどうにもできない外的要因が資金難の引き金になることも多いのです。
一方で、経営者の経営判断や行動パターンが資金不足の根本原因になっているケースも存在します。無理な投資、経費の使い方、見栄のための出費……資金難に陥る社長には一定の共通点が見られます。経営を立て直すためには、自社の現状を冷静に振り返り、必要に応じて経営スタイルそのものを見直す勇気が求められるのです。
心当たりはありますか?会社にお金がない社長の特徴
資金不足に悩む社長には、実は共通する“経営のクセ”や思考パターンがあります。今の経営スタイルがそれに当てはまっていないか、一度冷静に見直してみることも重要です。以下に、ありがちな特徴を挙げますので、ぜひ一度チェックしてみてください。
- 売り上げ拡大のための無理な先行投資
- 経費の無駄遣いの積み重ね
- 法人と個人をはっきり区分できていない
- 人の手をなるべく借りないようにしている
- 新たな事業で成功しようとしている
- 見栄えがいい経営に固執している
売り上げ拡大のための無理な先行投資
事業拡大を目指して、十分な検証や資金計画がないまま新しい設備投資や店舗展開、人材の採用などに資金を投入し過ぎていませんか?売上見込みが外れた場合、投資回収の見通しが立たず、借入返済だけが重くのしかかるリスクがあります。
まずは「本業の筋肉質化」が先決です。先行投資は着実な利益の上積みが見込める場合だけに絞りましょう。
経費の無駄遣いの積み重ね
経費削減は地味で面倒かつ痛みを伴う作業ですが、日々の無駄遣いの積み重ねが会社の現金を確実に減らします。接待交際費や無駄な設備、使われないサブスク契約など、見直せるポイントは必ずあります。賃料が低いエリアに移転する、携帯電話のプランを見直す、電気会社を見直すなど固定費を削減する方法もあります。
経費の使い道を「本当に必要か?」「それは適切か?」と一つずつ吟味する習慣が、資金繰り改善の第一歩となります。
法人と個人をはっきり区分できていない
中小企業に多いのが、法人の資金と社長個人の財布を混同してしまうケースです。会社の口座から出金して個人的な買い物をしたり、逆に自分のお金で会社の支払いを立て替えたり……こうした曖昧な管理は、資金の流れがブラックボックス化し、最終的には経営判断を誤る原因にもなります。
そもそも、会社と経営者は別人格であり、会社のお金を経営者が勝手に使うと横領に問われるおそれもあります。法人と個人の会計は明確に分け、透明性を保ちましょう。
人の手をなるべく借りないようにしている
「何でも自分でやらないと気が済まない」という叩き上げの経営者は多いですが、専門外の業務に時間を割いているうちに本業の売上が減ってしまうこともよくあることです。
すべてご自身で抱え込む必要はありません。たとえば経理や法務、ITなど専門的な知識やスキルが求められる分野はプロに外注することで、ミスやロスが減り、パフォーマンスがよい結果が得られ、資金繰りにも良い影響をもたらします。経営者は“自分にしかできない仕事”に集中することが、資金面の健全化につながります。
新たな事業で成功しようとしている
本業の業績が思わしくないと、つい他の事業に手を広げてしまう誘惑に駆られます。不動産投資や異業種参入、店舗ビジネスなど、一見魅力的に見えても、ノウハウやリソース不足からうまくいかず、先行投資ばかりが膨らむ例が多く見受けられます。
安易な多角化は会社のお金を減らすだけ。本業に注力し、地盤を固めることが重要です。
見栄えがいい経営に固執している
立派なオフィスや最新の福利厚生、豪華な社用車、不要なイベント、オリジナル制服など、会社の“外見”にこだわるあまり、実態以上にお金をかけてしまう社長もいらっしゃいます
もちろん、イメージ戦略も大切ですが、資金繰りが苦しいときには不要不急の支出は避け、まずは会社の基盤強化に集中するべきです。見栄より現実を直視しましょう。
信用はお金では買えません
銀行やノンバンク、知人・友人、親族まで、あらゆるところから資金を借りてしのいでいませんか?借金すれば一時的には資金繰りがラクになりますが、信用を失うと本当に困ったときに誰からも助けてもらえなくなります。
資金調達は“最後の手段”です。普段から取引先・金融機関・周囲との信頼関係を築いておくことこそ、会社の長期的な成長と安定につながります。
今すぐどうにかしたい!具体的にはどうしたらいいのか
「とにかく今すぐ資金を確保したい!」という緊急事態では、思い切って手持ちのリソースや取引条件を見直す必要があります。無理な資金調達は後々の経営を圧迫しかねませんので、冷静に優先順位をつけて実行しましょう。
融資を受ける
金融機関からの融資は資金ショート時の王道手段です。ただし、審査があるので、確実に資金が得られるとは限りません。決算書や事業計画などの資料提出、審査時間が必要となるため、準備は早めに進めましょう。返済計画も現実的に立てておくことが重要です。
また、銀行ではなく日本政策金融公庫に相談してみるのも有効です。いずれにせよ、短期的な借入で一時しのぎを繰り返すのではなく、「今後どう返すのか」を具体的に描いておきましょう。
会社、個人の資産を売却する
不要な資産や遊休不動産、機械設備、車両などを売却して現金化することで、資金難を乗り切れる可能性もあります。そのためにも、普段から残高の把握や経費の見直しに加えて、資産の把握もしっかりと行っておきましょう。
社長自身の個人資産も会社に貸し付ける形で資金繰りに活用する事例もありますが、無理のない範囲で慎重に判断しましょう。個人の資産を会社のために充当する場合は、税務処理にも注意する必要があります。
支払時期の調整・延期
取引先や金融機関に支払い猶予を相談し、支払いサイトを調整することで一時的に資金繰りを改善できます。相手方としても、未回収や貸し倒れになるくらいなら、少し猶予を与えてでも再建を待ったほうが得策です。正直に現状と今後の見通しを説明すれば、理解を得られるケースも少なくありません。
また、税金や社会保険料の納付も、状況次第で分割払いや猶予が認められる場合があります。
ファクタリング
売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する方法です。銀行融資よりも審査が早く、即日資金調達も可能です。ただし手数料が発生するため、一時的な資金ショート時の対策として活用しましょう。また、ファクタリングを装った闇金業者も存在するので、注意が必要です。信頼できる業者選びと、資金繰り改善の根本対策を並行して進めましょう。
どうしても困ったら東京事業再生コンサルティングセンターにご相談ください。
会社のお金が足りない原因は、単なる売上不足や一時的な資金繰りだけではありません。日々の経営の中で、どこに現金が流れているのか?どこを改善すべきか?を冷静に見極めて具体的なアクションに移すことが大切です。早め早めの対応が、再生の道を開きます。
ご自身だけで解決策が見つからない場合は、専門家の力を借りるのが一番です。東京事業再生コンサルティングセンターでは、豊富な再生ノウハウを持つ専門家が、会社の現状に合わせた最適な再生プランをご提案し、実行をバックアップします。ぜひお一人で抱え込まず、まずは私たちにご相談ください。
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本コラムの監修者

事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。
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