2026年06月16日

建設業では、人手不足倒産が過去最多を更新し、若者離れ・資材高騰・残業規制という「三重苦」が経営を直撃しています。現場は回らず、採用は進まず、2030年問題による大量退職も目前に迫っています。このままでは工期遅延や受注減少が常態化し、黒字でも倒産しかねません。
本コラムでは、建設業界の最新データをもとに、人手不足の実態と2030年問題の本質、そして今から取り組むべき実践策と経営改善のポイントを解説します。
建設業界における人手不足の現状
建設業界では、深刻な人手不足が長期化し、現場の維持すら困難な状況が広がっています。
下記の国土交通省「技能者等の推移」グラフでも、技能者数は減少する一方で人手不足が急速に進行しており、中でも技能者や技術者が不足していることがわかります。建設業就業者は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%と高齢化が進み、この層が一斉に退職期を迎える2030年前後には、深刻な人手不足問題が避けられません。

【人手不足の業界ランキング】建設業が常に上位の理由
建設業は、国内で最も深刻な人手不足業界の一つです。帝国データバンクの調査では、正社員不足率が60%超で全業種トップクラスを記録し、さらに人手不足倒産件数でも最多という二重苦に直面しています。特に施工管理技士や技能者など代替の効かない職種で不足が顕著で、採用難・離職増加・高齢化が同時進行しています。
また、物流・介護・ITなど他業界でも人手不足は深刻化していますが、建設業は「不足率が高い」うえに「価格転嫁が難しい」という構造的な弱点を抱えており、経営への影響がより直接的です。以下のランキング表からも、建設業が常に上位に位置し続ける理由が明確に読み取れます。
| 順位 | 業界 | 人手不足倒産件数(2025年度) | 正社員不足率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 建設業 | 113件 | 60%超 | 2024年問題で工期長期化、技能者不足が構造化 |
| 2位 | 運輸・倉庫業 | 52件 | 67.1% | ドライバー不足が深刻 |
| 3位 | 情報サービス業 | 114件 | 60%超 | スキルミスマッチが常態化 |
| 4位 | 医療・福祉業(介護) | 124件 | 50%超 | 公定価格で賃上げが難しい |
| 5位 | 宿泊・飲食業 | ― | 40%前後 | 省人化で対応進む |
※帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」を参考に当社で作表
データで見る建設業の人手不足倒産
建設業では、人手不足が経営を直撃し、倒産件数が過去最多ペースで増加しています。
帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査」では、2025年度の人手不足倒産は441件(前年度比1.3倍)と過去最多を更新し、そのうち建設業は112件で全体の25.4%を占めるとされています。さらに東京商工リサーチの調査でも、2025年度の人手不足倒産は442件(前年比43.0%増)と過去最多で、建設業は93件(同8.1%増)と依然高水準が続いています。
背景には、技能者の高齢化による退職、若手不足、賃上げ原資の確保が難しい中小企業の構造的課題があります。特に「人件費高騰」や「従業員退職」が急増し、現場が回らず受注維持が困難になる「人手不足倒産」が常態化しています。
建設業は労働集約型で代替が効かないため、今後も倒産リスクは高まると見られます。
資材高騰と残業規制がさらに現場を圧迫
建設業では、人手不足に加えて資材高騰と残業規制(2024年問題)が現場をさらに追い詰めています。
2020年後半のウッドショックでは木材価格が世界的に急騰し、2021年後半には鉄鋼価格が高騰する「アイアンショック」が発生。さらに2026年現在は、石油化学製品の原料であるナフサ価格が上昇し、樹脂系建材の供給遅延と価格高騰が続いています。
一方、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(働き方改革関連法)が適用され、従来のように残業で工期を調整することが不可能に。国土交通省は工期ダンピングの禁止や価格転嫁ルールを強化しましたが、現場では「人がいないのに残業もできない」という二重苦が深刻化しています。
資材高騰と残業規制の同時進行は、工期遅延・採算悪化・倒産リスクを一段と高めています。
建設業に影響を与える主な資材高騰と残業規制に関する法律を、以下の一覧表に整理しました。
| 時期 | 事象名 | 内容・高騰率 | 建設業への影響 |
|---|---|---|---|
| 2020年後半 | ウッドショック | 世界的木材不足で価格が急騰(※日本でも輸入材が大幅上昇) | 木造住宅の工期遅延・コスト増 |
| 2021年後半〜2022年 | アイアンショック | 鉄鋼価格が世界的に高騰 | 鉄骨工事・基礎工事の原価上昇 |
| 2026年現在 | ナフサショック | ナフサ価格上昇で樹脂系建材が高騰・供給遅延 | 断熱材・塗料・配管材の納期遅延 |
| 2024年4月施行 | 残業規制(働き方改革関連法) | 時間外労働の上限規制が建設業にも適用 | 残業での工期調整が不可に、工期遅延リスク増 |
| 2024〜2025年施行 | 改正建設業法(令和6年法律第49号) | 工期ダンピング禁止・価格転嫁義務化 | 適正工期の確保が必須に、元請・下請の調整増加 |
「2030年問題」が建設業の経営を直撃する!
建設業界では、技能者の大量退職が一気に押し寄せる「2030年問題」、いわゆる「2030年の崖」が最大の経営リスクとして迫っています。
国土交通省のデータでも、技能者の中心層は55〜64歳に集中しており、この層が2030年前後に一斉に退職期を迎えます。若手の入職が追いつかないため、技術継承の断絶・工期遅延・受注減少・安全性低下といった深刻な影響が避けられません。

建設業の若者離れが「当たり前」と言われる理由
建設業では、若手の入職者数が伸び悩み、早期離職も多いことから「若者離れ」が常態化しています。
国土交通省の建設業の働き方として 目指していくべき方向性 (参考資料) では、若年離職者が辞めた理由として「休みが取りづらい」「労働時間が長い」「作業がきつい」「危険が伴う」などが上位に挙がっています。また、厚生労働省や民間の調査では、若手が建設業を敬遠・離職する背景には、労働環境・待遇・教育体制のミスマッチが大きく影響しています。
建設業・施工管理技士に特化した人材サービス事業社の若手意識調査でも、「研修が不十分」「キャリアイメージが持てない」「給与が低い」「労働時間が長い」といった不満が多く、若手が定着しづらい構造が浮き彫りになっています。
以下に、若者離れの主な理由を整理します。
- 休みが取りづらい・長時間労働
- 給与・待遇が仕事内容に見合わない
- 研修時間・内容が不十分で成長実感が得にくい
- 将来のキャリアイメージが描けない
- 労働環境が3K=きつい・汚い・危険
- 新3K=帰れない・厳しい・給与が安い
経営危機に直結する工期遅延・受注減少
建設業の人手不足は、単なる「採用難」にとどまらず、工期遅延→受注減少→資金繰り悪化という経営危機の連鎖を引き起こします。
現場では、技能者不足により作業工程が予定どおり進まず、追加の外注費や残業規制による作業時間の制約が重なり、工期遵守がますます困難になっています。工期が遅れれば元請からの評価は下がり、次の案件の受注機会を失うだけでなく、違約金や追加コストが発生し、利益率が急低下します。
さらに、受注量が減ることで固定費を賄えず、資金繰りが悪化し、最終的には倒産リスクが高まります。
人手不足は単なる現場の問題ではなく、経営そのものを揺るがす構造的リスクです。

安全性確保の困難と労働災害増加への懸念
人手不足が深刻化する建設現場では、安全性の確保が最も大きな課題となっています。技能者が不足すると、経験の浅い若手や外注スタッフに負荷が集中し、無理な工程調整や長時間作業が発生しやすくなります。
さらに、2024年の残業規制により「限られた時間で作業を終わらせる」プレッシャーが強まり、安全確認の省略・作業手順の簡略化が起きやすい状況です。厚生労働省の統計でも、建設業の労働災害は依然として全産業の約3割を占めており、人手不足が続くほど事故リスクは高まります。安全性の低下は、現場停止・損害賠償・信用失墜につながり、経営への打撃は計り知れません。
以下に、人手不足が安全性に与える影響を整理します。

後継者不足による黒字倒産も急増
建設業では、人手不足に加えて後継者不在による黒字倒産が急増しています。
帝国データバンクの「全国後継者不在率調査(2025年)」では、建設業の後継者不在率は57.3%と全業種の中でも最高水準にあり、特に従業員20名以下の中小企業で深刻です。また、東京商工リサーチ「2025年度(4-3月)の後継者難倒産動向」「2025年後継者不在率調査」の分析でも、黒字にもかかわらず廃業・倒産に至る「後継者難倒産」が年々増加しており、建設業はその主要業種の一つとされています。
背景には、技能者の高齢化、若者離れ、経営者の高齢化(平均年齢60歳超)、そして事業承継の準備不足があります。利益が出ていても、現場を任せられる人材がいない=事業継続が不可能という構造的問題が、黒字倒産を引き起こしています。
以下に、後継者不足が倒産につながる流れを整理します。

職人の高齢化より怖いインフラ老朽化
建設業では職人の高齢化が深刻ですが、実はそれ以上に危険なのが社会インフラの急速な老朽化です。
国土交通省の推計では、2030年には道路橋の約54%、港湾施設の約44%が建設後50年以上となり、2040年には橋梁の約75%が築50年超に達します。高度経済成長期に整備された膨大なインフラが一斉に更新時期を迎える一方、建設業の供給力は人手不足で追いついていません。
一方で、人生100年時代というポジティブな側面もあります。熟練職人が指導者(メンター)として若手育成に専念するキャリアパスや、熟練の技をAI・ロボットに継承する取り組みが進みつつあります。
しかし、現場の担い手が不足すれば、こうした技術継承も維持管理需要にも対応できません。インフラ老朽化は、建設業の人手不足がもたらす「静かなる危機」と言えます。

人手不足を解消するための実践策
深刻な人手不足に直面する建設業では、従来の採用強化だけでは現場を維持できません。必要なのは、働きやすい環境づくり・生産性向上・多様な人材の活用を同時に進める「構造的な改善」です。
特に、待遇や労働環境の見直し、ICT・DXによる省人化、そして外国人材の受け入れと育成は、今後の建設業に不可欠な柱となります。
以下では、これら3つの実践策を、現場で実行しやすい形で具体的に解説します。
労働環境と待遇の見直し
建設業の人手不足を解消するうえで、最も即効性が高いのが労働環境と待遇の改善です。若手の定着率向上、経験者の離職防止、外国人材の受け入れ強化など、すべての基盤となる取り組みです。
国土交通省や厚生労働省の調査でも、離職理由の上位には「長時間労働」「休みが取れない」「給与が仕事内容に見合わない」「教育不足」が並び、これらを改善する企業ほど採用力が高まる傾向があります。また、2024年の残業規制により、「限られた時間で成果を出せる環境づくり」が不可欠になりました。
以下に、現場で実践しやすい改善ポイントをチェックリストとして整理します。
- 労働時間の適正化(週休2日制の導入、残業の事前申請制)
- 給与・手当の見直し(技能手当・現場手当の増額、評価制度の透明化)
- 休暇制度の整備(有給取得率の向上、連続休暇の設定)
- 教育・研修の強化(OJTの体系化、資格取得支援の拡充)
- 現場環境の改善(空調服・ICT機器の導入、休憩スペースの整備)
- メンター制度の導入(若手の早期離職防止)
ICT・DXによる省人化
建設業の人手不足を根本的に解消するには、ICT・DXによる省人化と生産性向上が不可欠です。国土交通省の調査でも、ICT施工やBIM/CIMの導入企業は、工程短縮・品質向上・若手の定着率向上に効果があると報告されています。
特に、ドローン測量・3Dスキャナ・自動化建機・遠隔臨場などは、従来の作業を大幅に効率化し、少人数でも現場を回せる体制づくりに直結します。また、クラウド型の現場管理ツールやAIによる工程最適化は、残業規制下でも工期遵守を可能にする重要な武器です。
以下に、現場で実践しやすいDX施策を整理します。
- ドローン測量の導入(測量時間の大幅短縮・安全性向上)
- 3Dスキャナ/点群データ活用(出来形管理の効率化)
- BIM/CIMの導入(設計〜施工〜維持管理の一元化)
- 遠隔臨場の活用(監督者の移動時間削減・検査効率化)
- 自動化建機・ICT建機の導入(オペレーター不足の補完)
- クラウド現場管理ツール(写真・工程・書類の一元管理)
- AIによる工程最適化(工期短縮・残業削減)
外国人材の活用と育成
建設業の人手不足を補ううえで、外国人材の活用と育成は欠かせない戦略となっています。特定技能・技人国・技能実習(育成就労)など制度が拡充され、即戦力から中長期の戦力化まで幅広い受け入れが可能になりました。
しかし、単に採用するだけでは定着せず、教育体制・生活支援・キャリア形成をセットで整えることが重要です。国土交通省や厚生労働省の調査でも、外国人材が定着する企業ほど「日本語教育」「生活支援」「評価制度の明確化」を実施している傾向が示されています。
建設業は技能の習得に時間がかかるため、「育てながら戦力化する」視点が不可欠です。
以下に、受け入れから定着までの実践ポイントを整理します。
- 制度の選択と適正配置(特定技能・技人国・育成就労の役割を明確化)
- 日本語教育の提供(現場用語・安全指示を中心に体系化)
- 生活支援の整備(住居・銀行・携帯・交通などの初期サポート)
- 技能教育の標準化(OJTマニュアル・動画教材の活用)
- メンター制度の導入(先輩職人が継続的にフォロー)
- 評価制度の透明化(昇給・資格取得の道筋を明確に)
改善しない場合は経営の抜本的改革が必要
人手不足や工期遅延、採用難が長期化し、労働環境の改善やDX導入、外国人材の活用といった対策を講じても状況が好転しない場合、企業は経営そのものの見直しを迫られます。
特に中小建設企業では、資金繰りの悪化、組織の硬直化、事業構造の陳腐化が重なり、従来の延長線では立て直しが難しくなります。
ここからは、経営を再構築するための3つの柱――資金繰り改善・組織改革と事業再設計・実効性の高い再生計画の策定について、実務的な視点で解説します。
資金繰り改善
経営が不安定化した企業にとって、最初に着手すべきは資金繰りの立て直しです。資金繰りが悪化すると、利益が出ていても支払いができず、黒字倒産に直結します。特に建設業は、工期遅延・材料費高騰・外注費増加などでキャッシュアウトが先行しやすく、資金繰り管理の精度が経営の生命線になります。
改善のポイントは、①資金の流れを可視化し、②入金を早め、③支出を抑え、④金融機関との関係を強化することです。
さらに、補助金・保証制度・リスケジュールなど、公的支援を適切に活用することで、資金繰りの安定性は大きく向上します。
以下に、実務で即使える改善策を整理します。
- 資金繰り表の作成・更新(週次・月次)
- 入金サイト短縮の交渉(前払金・出来高払いの活用)
- 支払サイトの調整(仕入先との交渉・分割払い)
- 固定費の見直し(外注費・倉庫費・保険料など)
- 金融機関との早期相談(追加融資・保証協会の活用)
- リスケジュールの検討(返済条件の変更)
- 補助金・助成金の活用(省エネ・DX・人材育成系)
- 不要資産の売却・在庫圧縮
組織改革・事業再設計
資金繰りを立て直した後に必要なのが、組織そのものの再構築と事業の再設計です。人手不足や採算悪化が続く企業では、組織が硬直化し、非効率な業務や赤字部門が温存されているケースが少なくありません。まずは、現場・管理部門・経営層の役割を再定義し、権限移譲や業務の標準化を進めることで、生産性を底上げできます。同時に、採算性の低い事業の縮小・撤退、強みのある分野への集中、協力会社との連携強化など、事業ポートフォリオの見直しが不可欠です。
組織改革と事業再設計は、単なる改善ではなく、企業の未来を決める“経営の再構築”そのものです。
以下に、実務で取り組むべきポイントを整理します。
- 組織の役割再定義(現場・管理・経営の役割を明確化)
- 権限移譲の推進(現場判断を増やし意思決定を迅速化)
- 業務の標準化・マニュアル化(属人化の解消)
- 採算性の分析(黒字・赤字部門の可視化)
- 不採算事業の縮小・撤退
- 強みのある分野への集中投資
- 協力会社との連携強化・共同受注の検討
- 管理部門のDX化(経理・労務・購買の効率化)
実効性の高い再生計画の策定
再生計画は、単なる改善案ではなく、企業を再び成長軌道に戻すための実行可能なシナリオです。
資金繰り改善や組織改革を行っても根本的な課題が残る場合、収益構造の見直し、事業ポートフォリオの再構築、金融機関との合意形成を含めた“総合的な再生計画”が必要になります。特に建設業は、工期・原価・外注管理など複数の要素が絡むため、計画の精度が低いと再生が頓挫します。
そのため、事業再生のノウハウに精通した専門家(再生コンサル・中小企業診断士・弁護士等)のサポートは不可欠です。第三者の視点を入れることで、実現可能性の高い計画に仕上がります。
以下に、策定時の実務ポイントを整理します。
- 現状分析の徹底(損益構造・資金繰り・案件別採算の可視化)
- 再生シナリオの設定(撤退・集中・投資の方向性を明確化)
- 数値計画の精緻化(売上・粗利・固定費・キャッシュフローの再設計)
- 金融機関との協議・合意形成(返済条件変更・追加支援の調整)
- 実行体制の構築(責任者・KPI・進捗管理の仕組みづくり)
- 専門家の伴走支援を受ける(計画の妥当性・実行可能性を担保)
建設業を熟知した東京事業再生コンサルティングセンターが経営者と伴走します!
建設業は、人手不足・工期遅延・インフラ老朽化・後継者不在など、複数の構造課題が同時進行で進む複合危機に直面しています。これらを乗り越えるには、部分的な改善ではなく、資金繰り・組織・事業構造を一体で立て直す再生の専門知識が欠かせません。
東京事業再生コンサルティングセンターは、35年以上の再生実績・豊富な自己資金・実行支援に強い専門チームを持ち、建設業の現場に深く入り込む“伴走型の再生支援”を提供しています。資金の実行(融資・出資)まで踏み込む姿勢は、他社にはない大きな強みです。
本気で会社を立て直したい経営者のために、京事業再生コンサルティングセンターがどのように再生を実現するのか――その全体像は、以下のLPで詳しくご覧いただけます。
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