2026年02月06日

資金繰りが詰まると支払いの期日が迫り、現場の空気まで重くなる……建設業の経営は、崩れ始めると一気に加速します。しかし、破産は一つの「結果」です。いま起きている問題の正体をほどけば、手を打てる余地が残っていることも少なくありません。大切なのは、精神論で踏ん張ることではなく、数字と構造を見て、打てる手を最短で並べ直すことです。
この記事では、建設業の倒産が増えている背景を確認しつつ、倒産直前の会社が取りうる現実的な再生ルートを考察します。最後まで諦めずに、一緒に戦っていきましょう。
とにかく増えている建設業の倒産
いま、建設業の倒産は決して珍しい出来事ではなくなりました。帝国データバンクの調査によれば、2025年の建設業倒産は2,021件で前年比6.9%増。2000年以降で初めて4年連続の増加となり、過去10年で最多、さらに2013年以来12年ぶりに2,000件を超えています。
仕事量はコンスタントに確保できていても、積み重なるコストアップに請負単価の転嫁が追いつかず、売上があっても手元資金が薄い会社から先に崩れていく……そんな惨劇が業界で起きているのです。

※帝国データバンク
負債5,000万円以下、中小・零細が苦戦
倒産の中心は、負債5,000万円以下の中小・零細です。2025年の建設業倒産では「5,000万円未満」の企業が1,167件で、構成比57.7%を占めました。規模が小さい会社では、材料費・外注費・人件費が少し上振れしただけでも一気に赤字化しやすく、売上が伸びるほど運転資金が要るという建設業特有の罠もあります。
資金調達の選択肢が限られる小規模企業ほど、ちょっとした遅延や追加工事が資金ショートに直結するのが実態なのです。

業態間でも大きな差がある
同じ建設業でも、倒産の出方には業態間の差がはっきり出ます。業種細分類では、工程の一部を担う「職別工事」が965件と件数が多い一方、完成を請け負う「総合工事」は627件と比較的低水準にとどまります。
住宅着工の減速や工期延長の影響を受けやすい分野もあれば、労働集約度が高く人件費上昇が直撃する分野もある。自社がどの業態に近いかで、取るべき打ち手は変わります。

業歴が短い若い経営者の倒産が増加基調
さらに重要なのが、業歴が短い層の増加です。業歴別では「30年以上」が最大です。しかし、増加基調にあるのは「5〜10年未満」で、2025年は460件で構成比22.8%となり、2021年比で8.6ポイント上昇しました。
創業後まもなく新型コロナ禍を経験し、財務体力の蓄積や管理体制の整備が追いつかないまま、物価・人件費の急騰に直撃された建設業者が増えています。一方で、ここは“若い経営者ほど伸びしろがある”という希望にもつながります。

我々が手を差し伸べたい「業歴が短い若い経営者」
私たちが特に手を差し伸べたいのは、業歴が短い若い経営者の皆様です。経験も人脈も、これから積み上げていく途中で、コロナ禍や急激な物価・人件費上昇に直撃され、思うように体力を蓄えられなかった。そんな状況で「自分の判断が悪かった」と一人で背負い込み、静かに店じまいを選ぶのは、あまりにも惜しいです。
若い経営者ほど、発想や視点が柔軟で意思決定が早く、改善の伸びしろも大きい。数字を見える化し、受注構造を組み替え、資金繰りを立て直せば、会社はまだ戦えます。私たちは倒産を前提にするのではなく、“再生を前提にした伴走者”として、最初の一歩を一緒に踏み出します。
早い段階で相談できれば、手元資金の延命だけでなく、利益が残る受注への切り替えまで十分に間に合います。だからこそ、私たちは“これから伸びる会社”に寄り添いたいのです。
主な倒産の要因
一つの原因ではなく、たいてい複数の要因が連鎖して倒産が発生します。物価や人件費の上昇で原価が膨らむ一方、請負単価の交渉は後回しになりがち。人手不足で工期は伸び、追加対応は増える。そこへ資金繰りの綱が細いと、ひとつの遅延が致命傷になります。
主な要因を整理し、自社の「引き金」を特定することが再生の出発点です。逆にいえば、負の連鎖のどこかを早めに断ち切れれば、倒産は回避できます。まずは自社がどの連鎖にハマっているか、当てはめてみてください。
- 物価高の影響
- 人材不足と労働環境の悪化
- 競争の激化
- 資金繰りの悪化
- 創業間もない時期のコロナ
物価高の影響
物価高は、建設業の損益を直撃します。鋼材・木材・住設機器などの資材価格が上がると、見積もり時点の原価計画が崩れます。さらに燃料費や運送費、外注単価もじわじわ上昇し、粗利が削られる。にもかかわらず、契約条件や慣行で価格転嫁が遅れると「売上はあるのに赤字」という状態になり、資金繰りが急速に悪化します。
人材不足と労働環境の悪化
人材不足は、”現場が回らない“という状況として表面化します。職人確保のために賃金を上げても若手が定着せず、新たに採用しても教育に時間とコストがかかる。結果として、工程が押して工期が延び、待機・段取り替え・手戻りが増えます。残業や休日出勤が続くと疲弊して事故リスクも高まり、採用競争でも不利に。人が足りないことが、品質・安全・利益・評判を同時に削っていきます。
競争の激化
競争の激化は、値引きと条件悪化を招きます。仕事を切らしたくない一心で薄利でも受注し、追加工事や仕様変更は“サービス”として飲み込む。元請からの急な要求や短納期に応じるほど、現場負荷は上がり、ミスやクレームが増えます。特に重層下請構造の末端では交渉力が弱く、単価の是正ができないまま、赤字案件を積み上げてしまうことがあります。
資金繰りの悪化
資金繰り悪化は、建設業でもっとも致命的になりやすい要因です。材料費・外注費・人件費が先に出ていき、入金は後。出来高のズレや検収の遅れ、手形・サイトの長期化があると、帳簿上は利益が出ていても現金が足りなくなります。さらに、借入返済や税・社保の支払いが重なると、資金ショートは一気に現実になります。早期に資金繰り表で“危険日”を特定すべきです。
創業間もない時期のコロナ
創業間もない時期にコロナ禍を経験した会社は、基礎体力形成の時間を奪われました。営業活動が止まり、案件が延期・中止になり、固定費だけが残る。融資によって短期資金でしのいでも、返済が始まる頃には物価・人件費が上がり、収益構造の立て直しが追いつかない。実績や信用の蓄積が浅いほど、追加融資や条件変更の交渉も難しく、“回復する前に息切れ”が起きやすいのです。
倒産をしないで経営を再生させるには
倒産を回避するために必要なのは、「希望」よりも「順番」です。まず原因を特定し、次に当面の資金繰りをつなぎ、並行して改善と受注構造の改革に着手する。どれか一つだけでは足りません。逆に、正しい順で同時並行できれば、時間は味方になります。
ここからは、再生の打ち手を4つに分けて解説します。重要なのは、思いつきで動かず、再生計画として筋の通った打ち手にすること。期限が迫っているほど、外部の力を入れて判断を早めることが有効です。
point
- 原因の追究
- 当面の資金繰りの確保
- 地道な改善努力
- 受注の仕方を変える
原因の追究
再生の第一歩は、原因の追究です。なぜ倒産間近なのか、どの案件・どの工程・どの取引先が利益を削っているのかを“数字で”特定します。売上や粗利だけでなく、原価の内訳、外注比率、現場ごとの手戻り、工期延長による追加コスト、請求・回収のタイミングまで分解し、資金が減るメカニズムを見える化しましょう。
この段階で重要なのは、犯人探しではなく「再現性のある改善点」を掘り当てること。赤字案件の共通点、値引きの癖、契約条件の穴、見積もりの甘さ、発注者・元請との力関係など、構造の歪みを言語化できれば、次の一手(交渉・撤退・標準化)が具体化するはずです。ここで整理した“原因リスト”が、資金調達の説明資料にもなり、金融機関や取引先の理解を得る土台になります。
当面の資金繰りの確保
次に、当面の資金繰りを確保します。銀行や日本政策金融公庫への相談はもちろん、条件変更(リスケ)や追加融資の可能性を早期に探りましょう。必要に応じて、友人知人からの借入も含め、短期の資金調達を組み合わせます。
困窮した経営者が行き着きがちなのがファクタリングですが、使い方を誤ると資金繰りの“延命”に留まり、手数料が利益を吸い尽くします。
ファクタリング以外の手段についても「融資は無理!ファクタリングもダメ!代わりにどうする?」で具体的にご紹介しています。
同時に、支払いの優先順位づけ(税・社保、外注費、材料費など)と、入金の前倒し交渉、請求漏れの是正も行います。資金調達は“借りる”だけではなく、“回収を早める・支払いを整える”まで含めた総力戦です。
地道な改善努力
資金をつないだら、地道な改善努力を積み上げます。一朝一夕で劇的に変わるものではありません。だからこそ、やることを小さく分け、毎月“効く改善”を積み上げます。たとえば、粗利が出ない案件の受注停止、外注単価の見直し、資材の共同購入や発注タイミングの標準化、現場監督の段取り力の底上げ、手戻りの原因分析と再発防止など、できることはたくさんあるはずです。
同時に、人材育成と定着の仕組みづくりも欠かせません。業務を属人化させず、作業手順・安全・品質のチェックリスト化を進めることで、経験の浅い人でも現場が回る状態に近づきます。
改善は“数字の改善”と“現場の再現性”の両輪で進めるのがコツです。毎月粗利・稼働・回収の3指標で改善度を点検し、次月の行動に落とし込みましょう。
受注の仕方を変える
最後に、受注の仕方を変えます。倒産寸前の会社ほど「目の前の仕事を取り続ける」ことで、薄利・赤字の沼に深くはまります。ここを反転させる鍵が、元請化と選別受注です。施工管理・品質保証・安全体制を整え、発注者と直接つながる割合を増やせば、単価交渉力が上がり、資金回収も安定します。
また、公共工事は、書類や体制整備のハードルはありますが、契約・支払いの透明性が高く、計画的な受注につながりやすい領域です。民間案件でも、値引き前提の新規獲得より、既存顧客の紹介・リピートを増やすほうが利益率を確保できます。
受注の質を変えることが、再生の“最後の決め手”になります。とはいえ、受注の形を変えるには時間がかかるため、資金繰りを確保したうえで、段階的に移行するロードマップを引くことが重要です。
東京事業再生コンサルティングセンターならすべてかなえられます。
東京事業再生コンサルティングセンターでは、建設業の倒産回避のために必要な「原因特定」「資金繰り」「改善」「受注改革」を、バラバラではなく一体で支援します。
数字を見て判断し、現場の実情に沿った手順へ落とし込み、金融機関との対話も含めて伴走する。経営者が孤独に抱え込みがちな局面で、意思決定の速度と精度を上げることが、再生の確率を引き上げます。
“倒産の手続き”ではなく、“倒産させない手順”を中心に。現場のオペレーションまで踏み込んで整えます。
なんとか踏ん張りませんか?
倒産は、会社だけでなく、社員や協力会社、家族、地域まで巻き込みます。だからこそ、限界まで我慢してから相談するのではなく、「まだ手が打てる段階」で動いてほしいのです。資金が尽きる前なら、選択肢は残っています。状況が厳しいほど、最初の一手がすべてを変えます。
諦める前に、もう一度だけ踏ん張りませんか。現実から目を背けず、しかし絶望もしない。数字を整え、順番を整え、できる手を全部やる。その戦いを、私たちは一緒に引き受けます。
本コラムの監修者

事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。
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