2026年01月14日

そもそも元請けと下請けの構造とは
建設現場は、発注者(施主や企業、自治体)と直接契約する「元請け」を起点に、専門工事を担う「下請け」へ仕事が流れる構造になっています。
元請けは、工事全体の工程・品質・安全・原価を管理し、必要な工種を協力会社へ発注します。下請けは、契約範囲の工事を施工し、現場での作業に集中する立場です。
さらに下請けが別の業者へ再発注すると「孫請け」となり、階層が深くなるほど、末端の単価や裁量が小さくなりがちです。
なぜ元請けと下請けの構造が生まれるのか
当然、元請であること、下請けであることにそれぞれメリットが存在し、各々の立場の業者間で需給が成り立っています。
元請けは全体をまとめ、下請けは専門性で支えるという役割分担が機能すると、工事は効率よく回ります。問題は、この構造が深くなりすぎたときです。
元請けのメリット
元請けのメリットは、まず人材確保・育成がしやすい点です。発注者との直接契約があると、受注が読めるため雇用を維持しやすく、若手を育てる計画も立てやすくなります。さらに、元請けは「現場を回す側」なので、監督・安全管理・品質管理などの経験が社内に蓄積し、会社としての信用も積み上がります。
施工コストの観点でも有利です。元請けは全体見積を組めるため、内製と外注のバランスを設計できます。得意工種は自社施工で原価を抑え、専門工種は適正単価で発注する、といった最適化が可能です。結果として利益が残り、それを次の投資に回せ、さらに会社を発展させられるのです。
下請けのメリット
下請けのメリットは、営業コストを抑えられる点です。元請けから流れてくる案件を受注すれば、広告費や入札準備、提案活動に大きな時間と費用をかけずに現場を回せます。特に小規模事業者や一人親方にとっては、営業に出るより施工に集中した方が売上を作りやすい局面もあります。
また、施工に集中できるという強みもあります。元請けが工程調整や対外折衝を担うため、下請けは自分の工種を高品質に仕上げることに集中できます。専門性が高い業者ほど、下請けとしての価値は発揮しやすいです。ただし、階層が深くなると単価と裁量が削られ、このメリットが薄れていきます。
下請けを守る構造
弱い立場になりやすいからこそ、業界には下請け業者を守るためのルールや考え方があります。代表的なのが、元請けが丸ごと投げる一括下請け(丸投げ)を問題視する流れ、そして多重階層を増やしすぎないという基本原則です。現場が安全に、適正に回るための“歯止め”として理解しておきましょう。
一括下請け(丸投げ)の禁止
一括下請け、いわゆる丸投げが問題視されるのは、責任の所在が曖昧になりやすいからです。工程の遅れ、品質不良、安全管理の不足が起きても、「どこが管理すべきだったのか」が見えにくくなります。
また、丸投げが常態化すると、元請けは管理機能を手放し、下請け側は過度な負担を背負う構造になります。その結果、現場は無理な工期・無理な人員配置になりやすく、事故やトラブルが増えます。
3次請けまでが基本原則
多重下請け構造を抑えるために、「3次請けまでを基本」とする考え方があります。階層が深くなるほど、情報伝達が歪み、品質・安全・原価の管理が難しくなるからです。特に公共工事では、過度な階層を抑える方向で運用が進むことが多く、元請けの管理責任を明確にする必要があります。
この原則は、末端業者の労務管理や保険加入の確認、適正な賃金・単価の確保にも関わります。
4次請け以降が制限される傾向
4次請け以降が制限される方向にあるのは、業界的には非常に前向きな動向です。前述のとおり階層が深くなると、まず安全管理・品質管理が行き届かなくなります。指示系統が複雑になり、現場ルールの徹底や是正が遅れやすいからです。次に、労災・保険加入の確認が難しくなります。誰がどの立場で働いているのかが曖昧になり、万一の事故対応が混乱します。
さらに収益構造も歪みます。中間マージンが積み重なるほど、末端に残る単価が薄くなり、無理な受注や手抜きの誘因が生まれます。
こうした観点から4次請けの制限が強まっており、実際に公共工事では3次までという規制が導入されるケースもあります。業界の健全化に向け、今後もこの流れは強まるでしょう。
4次請けが認められるケースもある
一方で、4次請けが完全に“絶対ダメ”というわけではなく、例外的に認められる方向のケースもあります。たとえば、元請けの直接管理下で、作業範囲・指揮命令系統・安全ルールが明確に統制されている場合です。このとき重要なのは、実態として管理が効いていること。書面上だけ体制が整っているということになっていても意味がありません。
また、労災・雇用保険の観点で、誰が雇用主で、どこが保険加入や安全配慮の責任を負うのかが整理できる場合も、運用上のハードルは下がります。
さらに、特殊技能を要するスポット業務(短期の専門作業、特殊機材の操作など)では、階層を跨いで呼ばれることがあります。しかし、こうした場合ほど、契約・保険・責任分界を“先に”固めておくことが必須です。
【実情は違う】建設現場のリアル
制度や原則が整ってきても、現場の実情は理想通りではありません。下請けの立場で苦しむ会社が多く、丸投げに近い運用や、4次請けどころか5次6次が存在する話も出てきます。ルールはあっても、それが必ずしも守られているわけではない。その現実を直視しないと、4次請け問題は解決しません。
- 下請けはほとんどの業者においてデメリットの方が大きい
- ほぼ一括下請けをする業者は存在する
- 4次請けにとどまらず、5次6次請けも存在する
下請けはほとんどの業者においてデメリットの方が大きい
下請けは、薄利になりやすいのが最大の痛点です。単価は上位から一方的に提示され、材料高騰や追加手間が出ても吸収しづらい。これだけでも厳しいのに、4次請けの立場になると、元請けだけでなく3次業者にも振り回されやすくなります。指示が二転三転する、工程が急に変わる、変更の根拠が共有されない。結果として手戻りが増え、無償対応が積み上がり、利益が消えます。
「現場は回っているのにお金が残らない」という状態は、受注構造そのものが原因であることが少なくありません。
ほぼ一括下請けをする業者は存在する
丸投げが問題視される一方で、実際には“ほぼ一括下請け”のような動きをする業者が存在するという声も聞かれます。現場には名目上の管理者はいるものの、実態として工程調整・品質・安全の多くを下位に委ねてしまうケースが起きがちです。こうなると、責任だけが末端に集まり、単価は薄いままという最悪の状態になりやすいです。
もし自社が「管理も押し付けられている」と感じるなら、契約範囲と責任分界を見直し、記録を残し、交渉の材料を作る必要があります。
4次請けにとどまらず、5次6次請けも存在する
4次請けにとどまらず、5次6次請けが存在するという話もあります。階層が深くなるほど、末端の単価はさらに薄くなり、現場の裁量はほぼ消えます。その結果、「とにかく終わらせる」ために無理が重なり、安全や品質が危うくなる。支払い条件も悪化し、資金繰りが崩れやすい。
そしてもっとも怖いのは、問題が起きたときに責任を押し付け合う構図です。末端ほど声が届きにくく、泣き寝入りが起きやすくなります。だからこそ、4次以下に留まること自体が、経営リスクとして大きいのです。
実際に4次請け以下の状況はどれだけ厳しいのか
4次請け以下の厳しさは、「忙しい」だけではありません。指示の混乱、過剰な作業負担、利益の消失、そして支払いトラブルまで起き得ます。
しかも、現場は止められないので、赤字でも回さざるを得ない状況になりがちです。ここからは、よくある“現場の地獄”を具体的に整理します。
- 現場入りはざらにある
- ほぼすべての工事をやらされた挙句、利益は残らない
- ひどい場合、赤字だと支払いを渋る業者もいる
現場入りはざらにある
4次請け以下では、予定外の現場入りがしばしば起きます。前工程が遅れたのに「今日来てほしい」と急に呼ばれる。資材の段取りが崩れたのに「手ぶらでいいから人だけ」と言われる。こうした突発対応は、待機や移動のコストを増やし、他現場の工程も崩します。
しかし、末端ほど断る交渉力が弱く、「次の仕事が切れるのが怖い」ために請けてしまう。この積み重ねで、稼働は埋まっているのに利益が出ない、という状態に陥ります。まずは、呼び出し履歴や変更指示の記録を残し、条件交渉の材料にすることが重要です。
ほぼすべての工事をやらされた挙句、利益は残らない
4次請け以下では、契約範囲が曖昧なまま作業が膨らむケースが起きやすいです。「ついでにこれも」「前の業者がやってないから頼む」と追加が積み重なり、気付けば“ほぼ全部”やっているのに、請負金額は据え置きというケースも珍しくありません。本来、追加には対価が必要ですが、末端だと主張が通りにくく、揉めると次が切られる不安もある。結果、残るのは疲労だけで、利益は残りません。
こうした状況を打開するには、追加指示を必ず書面・メッセージで残し、追加費用の協議を「作業前」に行う習慣が必須です。それができない相手とは、取引自体を見直す判断も必要になります。
ひどい場合、赤字だと支払いを渋る業者もいる
工事が赤字だという理由で支払いを渋る業者もいると言われます。しかし、放置は絶対ダメです。支払いは必ず行われるべき。現場が終わった後に「利益が出なかったから払えない」は通りませんが、末端ほど泣き寝入りしやすい構図こそが問題です。
まずは、契約書・発注書・請求書・作業日報・現場写真・やり取り履歴を整理し、支払い義務を客観的に示せる形にします。そのうえで、催告(期限を切る)→内容証明→専門家の相談という流れを作ります。「面倒だから」と諦めるほど同じ被害は繰り返されます。守るべきものは、会社の資金と従業員の生活です。
「注意しましょう」では何も変わらない
ここまで4次請けやそれ以下で受注することについて、現場のリアルな実情も含めて解説してきました。「ルール・法令を遵守し適切な体制を構築しましょう」「案件を請ける際はこのポイントに注意しましょう」などと簡単にまとめられている記事が散見されます。しかし、言うのは簡単。それで改善できれば苦労はしないと思われている方も多いことでしょう。
この現状のままでいいことなど絶対にありえません。よほど信頼関係がある下請け構造を作れている場合は別ですが、ほとんどの場合そうではなく、請けたくないような業務を渋々請けている社長さんも多いはずです。
この状況から一刻も早く抜け出すことを優先的に考えましょう。「注意する」ではなく、「構造を変える」。ここがスタートラインです。
4次請け以下から抜け出すために
4次請け以下から抜け出すには、精神論ではなく“戦略”が必要です。取引先を変える、受注導線を作る、粗利とキャッシュを守る、人材と管理体制を整える。これらを同時に進めないと、結局また深い階層に戻されます。
また、抜け出す過程では「一時的に仕事量が減る」局面もあるかもしれません。そこで焦って条件の悪い案件を拾うと、元の木阿弥です。大切なのは、元請け・二次請けに近づくための具体行動を、数字(粗利・入金サイト・固定費)とセットで管理することです。
より具体的なステップは、以下の記事で整理しています。
「今の延長線上では厳しい」と感じたら、今日から動き方を変えましょう。
元請化の実現!実際の事例
4次請け以下から抜け出す道として、もっとも強いのが「元請化」です。元請化は一発逆転ではありません。粗利が残る仕事の型を作り、資金繰りを安定させ、営業導線を整え、管理体制を強化して受注量を伸ばす……このステップで現実が変わります。
実際に、経営改善を通じて受注構造を変え、元請化へ近づけた事例もあります。詳しくは以下の記事でご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
東京事業再生コンサルティングセンターで根本からの経営改善
4次請け以下の苦しさは、現場の努力だけでは解決しません。単価、入金サイト、固定費、人員配置、案件の取り方……経営の構造そのものを変える必要があります。
東京事業再生コンサルティングセンターでは、数字の整理から改善の優先順位付け、資金繰りの立て直し、受注構造の改善まで、根本からの経営改善を支援できます。
「現場は忙しいのにお金が残らない」「条件の悪い案件を断れない」という状態は、放置すると必ず経営が悪化します。一刻も早く、抜け出すための戦略を、私たちといっしょに考えてみませんか?
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本コラムの監修者

事業再生コンサルタント
清水 麻衣子
元銀行マンで、多くの顧客の相手をしてきた実績と数々の中小企業を見てきた知見をもって、東京事業再生コンサルティングのコンサルタントへ。
通常のコンサル会社におけるコンサルタントとは大きく違い、豊富な知識と現場のリアルを把握している、企業を想った本質的なコンサルが魅力。
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